セシルマクビーの撤退から、個人が考えるべきこと
あっという間に7月も後半に。7月に入ってから急激に色々と動き出し、久々の更新になってしまいました。もうマスクが暑くてベリーダンサーみたいなベールで勘弁してほしいと思う日々です。いやちゃんとマスクしてますけどね。
色々と衝撃的な出来事ばかりのこの頃ですが、アパレル業界的に衝撃が走ったのはこのニュースでした。
セシル、といえば2000年代にギャルの制服のごとく大ヒットしたのが記憶に新しいですよね。ピークは07年の242億円でしたが、緩やかに売上は下降していき、直近の20年は121億円と約半減。6期連続の赤字だったということです。
昨日速報をFBに載せたら「まだあったんですね!」なんて声も頂きましたが、実は17年と19年にリブランディングを行なっているんです。これは昨年のとき。
なんとか再浮上しようとアイデアを絞り出している様子は伺えます。残念ながらユーザーに刺さらなかったのと今回のコロナ禍の影響も、もちろんあったでしょう。
ただ、これは名誉の撤退という側面もあって。
実際に運営会社社長、木村氏にインタビューをされたファッションビジネスジャーナリストの松下久美さんの記事が非常に詳しいですが、守るための「選択と集中」の一環であったことが社長の発言からも見て取れます。
真っ先に言っておきたいのは、会社を整理したり、清算したり、ましてや倒産したりすることではないということ。一方で、このままいくとそういうリスクも見えてきたというのも事実だ。そうならないうちにこういう形で再編を図った。
ーhttps://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20200720-00189125/より引用
雇用についても500人減とはなるけれど、再雇用支援や賃金についても最後までしっかり行うと明言しているし、セシルと共に会社も終わる、というよりは良い決断だと個人的には思います。セシルの名前もライセンスとして残すとのことなので、今後別の誰かが再興させる可能性もある。これまで会社を支えてくれた「セシルマクビー」という名前に対するせめてもの感謝、という印象を受けました。
元々ある特定の層に爆発的に売れていたブランドなので、どうしても年齢的・嗜好的な「卒業」というフェーズは避けられません。その受け皿となるようなブランドも立ち上げ、リブランディングも行ってはいたけど移行が思うようにいかず、どうしても「ギャル」「細すぎ」といったイメージが強く残り過ぎた。売れ過ぎたブランドのブーム後というのは、どうしても難しくなるだろうと思います。
今回の撤退について、今後のポイントになるなと思ったのが前出の社長のこんな発言でした。
「ユニクロ」「GU」には逆立ちしても勝てない。マスを相手にしたものや、規模が大きいことが偉いでしょといったブランドは、これからは残らないし残れないと思う。うちの会社も今から「ユニクロ」や「GU」になれるわけでもない。だから、僕は今回、こういう選択しかないと思った。
ーhttps://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20200720-00189125/より引用
実際、そうなんですよ。
ユニクロとGUで、ファッションの「ベーシック」と「トレンド」の大部分をカバー出来てしまう。それにZARAやH&M、COSが加わってモードな部分もフォロー出来ちゃう。デザイン力や品質も上がっているので、それらを組み合わせれば”それなり”のスタイリングは簡単に完成してしまうんです。
セシルがユニクロやGUと同じ路線とは思いませんが、規模からいって小商いではないので、目指すとすればマスを相手にすることになる。だから先が見えないという結論になったのでしょう。
ではどうすれば生き残れるかというと、その逆。
「特定のユーザーに刺さり」「無理のない規模感で」売っていくブランドということになります。
夢のない話だな、と思われるかも知れませんが、それが現実。
結局、マスを相手にすると八方美人的なマーケティングになる。それなら規模を持っているところが勝つわけですよね。なので集中的にターゲットに向けて濃いものを提供して、その枠内で経済が成立するようにコントロールしていくというのがベストということになります。
これには、多くの人が「似たようなモノ」に囲まれ過ぎて飽きているからという側面もあります。大手を見ても、どこも同じようなアイテムを数百円、もしくは数十円の違いで売っている。正直どれを買っても違いはない。これじゃショッピングの楽しみもなにもあったもんじゃありません。
だからこそ、そのサイクルから離れて本当に作りたいもの、着てほしいものを、着たい人だけに提供するというスタイルに求心力がある。あのツモリチサトもそういった体制に移行しています。
規模感や値段より、作る人、着る人の満足感や幸福感、製作に関わる人のワークライフバランスを重視したブランドが、今後は注目されていくでしょう。
スタイリストとして考えることは、そういった流れによって個人の、特にビジネスファッションも基準が変わっていくだろうということ。
これまでは「全方位的に」「無難なテイスト」が良しとされてきましたが、今後は自分の関わる人や社会に対して深くフォーカスしたスタイリングが大事になります。
コロナの影響があり、リアルな集団の規模が小さくなった。無駄を削ぎ落とした規模でもやっていける、やっていかざるを得ない状況でもあるでしょう。そうなるとターゲットはより明確になるので、そこに刺さるようなスタイリングをすればいい。
世の中がそういう方向に行くので、逆に全方位的なスタイリングは印象に残りにくくなります。みんなが身の回りの「これってどうしても必要か?」について考えはじめたから、平均的、無難なスタイルでは最終選考に残れません。
自粛期間に多くの人がYouTubeやライブ配信を始めたけど、それっぽく無難にやってみました〜程度では注目されませんよね。それと同じことです。そもそも内容がつまんないし。ウォッチしたいだけなのでライブ配信で誰々が参加しましたみたいな機能やめてほしい。話が逸れました。
これまでは成功している誰かを模していくのが王道だったかも知れない。でも今後はそういうトレースではなく、競わない、類似しないスタイルを作っていくことが大事になります。規模は小さくてもオリジナルになること。これを考えていくべきです。
そのためには、自分の良さやターゲットにどんなスタイルが刺さるか、ということを知っている必要がある。日本人は自分のダメなところは粗探しするくせに良さについては認めるのが苦手な傾向がありますが、よりグローバルな感覚が求められていくだろうと感じているところです。
セシルマクビーからの連想ゲームで、ついアルバローザやエスペランサについても調べてしまいました。なんとアルバローザは店舗展開がなくなっていた。一時代の終わりを感じますね。そりゃ自分も歳をとったわけだ。
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