ファッションは、「お洒落」を目指すな
4月に入ってようやく春らしい気候の日が増えてきましたね。でも前日11度から翌日20度とか、昭和の春ってこんな乱高下でしたっけ?どんどん四季がなくなっていく感。
先日4期生への講義を終えたタイタンの学校(校長・太田光代)でもお話したのですが、タイトルのこれって、ファッションの極地のひとつなのでは?と思い至ったのです。
「いやいや、ファッションはお洒落になるためのものでしょうが!」と黒板五郎ばりにツッコみたくなる向きもあるでしょう。でも、お洒落を目指しても成果が出ない、感じられないケースも多いと感じるんですよね。
じゃあ何を目指せばいいの?という具体的なポイントについて、今回はお話ししてみたいと思います。
ワードだけ先に出してしまうと、目指すべきは「自己表現」です。
お洒落を目指してはダメな理由①
なぜお洒落を目指してはダメなんでしょうか。
そのひとつは「答えがない」からです。
お洒落の定義はないし、トレンドによってお洒落かどうかの判定も変わってくる。ある年は丈が短い方がお洒落である年は長い方がお洒落とか。今はトップスが短い期に入ってますが。それを追い続けるのって大変じゃないですか?
スタイリストがこんなことを言ってはいけないかもしれないけど、仕事でもトレンドの変化を追うのはラクじゃない。これまでの流れを知ってるから何となく見えてくるけど、元々そんなにファッションフォロワーじゃない人がそれを的確に把握しようとしたら凄いパワーと時間が要ると思う。
そもそも誰もお洒落の正解を知らないし定義がないんだから、何を目指すべきかも明確になりにくい。正解は何かと考えたり調べてみても謎は深まるばかり。加えて流れも割と変わる。そんな曖昧なもんなんです、お洒落というのは。
なんとなく「お洒落になりたい」と思っている人は多いと思いますが、ゴールをそこに設定すると「あの人に比べて自分は、、」とか「やっぱセンスないわ!無理!!」となって間違いなく挫折します。
本気でトレンドセッターを目指すならそれもひとつですが、そこまでしたくないという人が大半ですよね。答えがない禅問答を楽しめる人は探求者だけ。あるかどうかも分からない天竺を目指す三蔵一行のような旅路です。ファッションも何らかの成果や結果に繋げたいのであれば、ゴールを「お洒落になること」に設定するのはやめましょう。
お洒落を目指してはダメな理由②
理由の2つ目は、判定するのが自分ではないからです。
お洒落かどうか、それをジャッジするのはオーディエンス。周りの人やSNSなどで間接的に見ている人なんですよね。
いくら自分で「お洒落やろ?」とドヤっても見ている人がそう思わなかったらダメなわけです。こういうとき関西弁にしたくなるのはステレオタイプな偏見だと思いますが、自分だけでは成立しないのがファッションや見せ方の部分です。
多くの人にお洒落と感じてもらうには、最大公約数的なお洒落を目指すことになる。でもそんなものを目指したところで成果に繋がるかは未知数だし、自分が面白くないでしょう。プチプラの新作が出るたびに一刻も早く入手してコーデを紹介しないといけない生活とかやだもん。おっと心の声が。
お洒落を目指すと、必然的に「今世の中でお洒落と言われているスタイルやブランド」を目指すことになります。世の中に合わせに行くことになる。本当にそのスタイルやブランドが好みだったらいいけど、そうじゃない場合はどうでしょうか。
仮にそこまでして合わせに行ってもお洒落判定される確約もない。逆に一般的すぎる、ベタすぎて面白くない、目立たないという可能性もある。
そこに意味があるのかな?と思ってしまうんですよね。評価の基準が自分の中にないものを目指して、思い通りにいかなくてがっかりするという流れに。きっと多くの人が程度の差こそあれ、経験しているのではないかと。
人の感覚をこちらが操作することは出来ません。ならそこにアジャストするように頑張るのは無駄。世の基準に合わせに行くのは冠婚葬祭とか、合わせないとひんしゅくを買うような場面だけで十分だと思います。
目指すべきは「目的に叶った表現」になっているか
ではどこを目指すべきかとなりますが、僕は「イメージ通りの表現」が出来ているかを基準にするのをオススメします。
こういう風に見せたい、こういう人なんですと伝えたい、知ってほしい、というイメージをまず自分の中に作る。
そしてそれを表現できるファッションを揃える、コーディネートしてみる。
自分で客観的に見て、そのイメージを表現できていればOK。できていなかったらNG。そこを基準にするのです。
知的に見せたいと思ったらシンプルな色味や落ち着いた色味をメインにシックなメガネや腕時計を揃えるとか、アクティブな印象にしたければ鮮やかなカラーをポイントにしてタイトなシルエットのものを選んでみたり。
”イメージした自分像を伝える”という目的に対して、合っているか合っていないか。足りているか足りていないか。それをファッションを整える判断基準にしてみましょう。
なぜこれがオススメかというと、反応の誤差はどうあれ「自分が伝えたいイメージを正しく伝える」という目標は必ず達成できるからです。
結局、どうやっても100人中100人から好かれるというのは無理筋だから。逆を言えばだからこそアイドルグループが成立しているわけで。乃木坂だってまいやんが好きだった人もいればまなったんが好きな人も居るからグループとして成り立っている。ちなみに僕は秋元真夏さん派ですガチ勢ではないけども。
それなら「私はこんな人。それでも良かったら応援してね!」と最初から打ち出してしまった方が応援する方もしやすいし、より濃いファンが出来るでしょう。我々も目指すべきはそこです。
僕自身も昔は大衆ウケというか、ファッションやってるんだからインフルエンサー的な全方位的に好かれる存在にならねば!と思っていたんです。完全に誤解でしたけど。そういう個性じゃないから一般的なコーデ解説とかお役立ち記事とか書いてもぜーんぜん反応がない。僕には需要ないんだ、、と思って相当凹みました。ゲンドウに見放されたシンジくんの如く。
で、もう刺さる人に刺さればいいや!エヴァに乗ればいいんでしょ!と振り切って好きな格好して好きなことを発信し始めたらそれはウケるという。ね、正解なんてわからないでしょう?
正直、婚活にしたって100人に薄くモテるより”どうしてもあなたがいい”という1人に出会えるかどうかが大事なんだし、仕事だって単に100いいねが付くより1件でも”あなたにお願いしたい”と直オファーをもらえた方がいいわけですよね。そう考えれば「いかに自分を正しく開示するか」が大事になってくる。
そのためには、見た目から「私はこんな人」「こんなことが出来る」というのが分からないといけない。それを目指した結果、お洒落という評価も付いてくる。これがベストな流れだと思っているのです。
つまり、お洒落というのはおまけ。
自分のイメージをファッション含めた見た目で表現することに注力していたら勝手にお洒落と言われるようになった、程度に考えてもらえたらいいのかなと思う。
で、実際そうなるのですよ。自分をどう表現するか、自分の魅力は何かを考え思考錯誤していたら、勝手にお洒落も身に付いてセンスいいとか言われるようになっていく。自分を知るということが、結局のところ一番の近道なんじゃないかな。
さいごに
ファッションで一番挫折しやすいポイントは、何を目指したらいいか分からないことと思ったような反応が得られないこと。
自分の中に目指すべきイメージ=基準を作れば、これが一挙に解決します。まずはそこを先に固めていく。お洒落はその過程で生まれる副産物だと思えば気も楽になります。
今は万人に愛されなくても濃いサポーターが居れば生きていくことは可能な時代。まずは自分の存在が刺さる人をあぶり出すために分かりやすく見せていきましょう。より一般化すべきか、より濃くすべきかはその先で考えればいいことです。
当然、僕も万人に愛されてるとは思ってなくて。お洒落じゃないと思われてる可能性だってありますが、それでいいのです。趣味趣向なんて人それぞれなんだから。いいと思った人が集まってくれたらいい。僕だってこれはないだろうという同業者もいるしね。たまたまショップで遭遇してもそう思いました。そういうこと言ってるから万人に愛されないんですけども。
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個人の方や企業様より、ファッションスタイリングを含めた見せ方やブランディングのご相談を日々承っています。何かお手伝い出来ることがあるかも知れません。「タイタンの学校(校長・太田光代)」でのファッション講師などスピーカーとしての活動や専門家としてのコメントや執筆なども。まずはフォームからご相談、お問い合わせ頂ければ幸いです。
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オーダーメイドスタイリスト 神崎裕介