今改めて、カールラガーフェルドについて知ってほしい
ようやく自粛生活も終わりが近づいてきた感じがありますね。まだまだ気は抜けませんけど。来週久々に仕事で品川に行くのですが、最近こもってばっかりだったので出掛けることが急に不安になってきました。引きこもり体質の本領発揮か。
今オンラインイベントの資料作りでカール・ラガーフェルドの足跡を改めて追っているのですが、皆さんはそもそもカールについてご存知でしょうか?
Karl Lagerfeld、そう、この人です。
印象的すぎるフォルムなので一度は見かけたことがあるのではないでしょうか?ファッション業界に入ったときから、この個性的なスタイルとマインドに魅了されてしまったのです。
惜しくも昨年、85歳にして亡くなってしまったのですが、まさにファッション界の御大デザイナーのひとりでした。もうひとりの御大はジョルジオ・アルマーニです。こっちも濃いな。
僕はカールが大好きだったので、小物はみんなカールラガーフェルドのアイテムにしています。こんなバックパックとか。
PCにも。noteシールも貼ってますよ!
本当は没後1年でトリビュートを書こうと思っていたのだけど、この世の中の情勢で後回しになってしまっていたので、今改めて書いてみようと思います。
1、実は○○人
カールというとシャネルでの活躍が華々しいのでフランス代表のようなイメージがありますが、実はドイツ人なのです。
1950年代のカール。これだとドイツ人ぽい感じがある気がする。
フランスといえば当時からファッションの総本山。ドイツ人であったカールはかなり苦労したようです。例えるならサッカーの中田がイタリアに挑戦したとき、いやカズがジェノアに移籍したときという感じでしょうか。
カールは当時、ようやく増えてきた海外旅行でパリにやってくるアメリカ人たちのモダンなセンスを参考にしていたと言います。偏見に耐え、独自の視点でモードの帝王として名を残したカールは、やはり才能が傑出していたのだと言わざるを得ないでしょう。
そして映画などでも語られているのが、同時代に活躍したイヴ・サンローランとの関係性。
好敵手として切磋琢磨した仲でしたが、サンローランと恋人(男性)を奪いあったことで関係が悪化したとも言われています。やはり色恋で人間関係は崩れていくのか。でも改めてこの時代に活躍していた人物が昨年までトップであり続けた事実を考えると、まさにモード界の生き字引だったのだなと思い知らされます。
そしてドイツ人デザイナーの第一人者として残した足跡もまた、賞賛されるべきではないかと思います。
2、ブランドとの長い付き合い
カールを語る上で欠かせないのは、担当したブランドとの付き合いが長いことです。
シャネルでは36年、フェンディに至っては54年も関わっているのです。生まれた子が定年間近になるまで担当するって凄いことですよ。
デザイナー界全体で見てもここまで長期に渡るのは異例です。特に近年はちょっと結果が出なかったり方向性の違いが生まれるとすぐに代えてしまうから、1年とか2年なんていうのもザラ。54年という数字がいかに”おかしい”かが分かりますよね。
彼のハイライトは、やはりシャネルのデザイナーに就任したことでしょう。
ココ・シャネルの存在でトップメゾンとなったシャネルですが、彼女が亡くなった1971年以降は大変苦戦していました。そこへクロエやフェンディで名を上げたカールがやってきたのは1983年。
ココが残したシャネルを斬新なアイデアや時代性も加え、定番のバッグも人気アイテムとなり、シャネルの復興と共にカール自身の名声もさらに高まっていきます。
ちなみに僕的にカールの一番の素晴らしさは、頭の柔らかいところだと思っていて。
シャネルジャケットも、後生大事に頑なにデザインを守っていく方法だってあったはず。あのシャネルが残したものなんだから、そういう発想にもなってもおかしくない。
でもカールはそれをどんどんリモデルして、ココのマインドはそのままに新作を生み出していきます。
原型から考えたらかなり飛躍してますが、決して品は失わない。でも発想は常に時代の最先端。これを80を超えたデザイナーがやっていたと考えたら、ちょっとあり得ないですよね。
デザインに関しては頑固にならず時代の流れを取り入れる。本当に頭の柔らかい人なんだなと感心します。
そしてもうひとつ。
今では様々な大物とファストファッションのコラボが行われていますが、その先陣を切ったのはカールその人なのです。
しかもファストファッションの代表格であったH&Mとのコラボは、当時大きすぎる話題を呼びました。
なんでファストファッションなんかと!という批判の声も集まる中、カールは平然と「若い世代に自分のファッションを届けることに興味がある」とどこ吹く風。ハイブランドは特別な人のもの、という概念をまさにぶっ壊したわけです。
近年は西武そごうのリミテッドエディションとのコラボも人気でしたね。
思うに、カールはファッションの民主化ということをとても考えていた人だったのではないかなと。
ファッションは着てナンボ、誰にでも楽しむ権利があるし、若い世代に本物を伝えていかなければならない。それをトップデザイナーが率先してやったことに意義があります。
ファッション業界ってどうもムラ社会的なところがあって、時代の先端にいるオレ達スゲー、お洒落にあらずんば人にあらず、ハイブランド着てないと仲間はずれ、みたいな感覚の人が多いんですよ。あえて言いますけど。
僕はそういうのが成敗したいくらい嫌いで。暴れん坊将軍の気持ちがよく分かります。簡単に言うとバカバカしい。内輪でコレクションの情報で盛り上がっているより広くファッションの価値や素晴らしさを伝える方が意味あるんじゃない?と。
きっとカールもそんな思いがあったんじゃないかなぁ。
内々だけで盛り上がって賞賛されても意味がない。もっと間口を広げなければ、的な。僕が勝手にカールにシンパシーを感じる部分のひとつでもあります。
そして、そんな活動を許したシャネルやフェンディとも、本当の信頼関係で結ばれていたのでしょうね。
3、極端なこだわりの強さ
カールのエピソードとして語られる中に、こだわりの強さが感じられるものが多いのも特徴のひとつ。
一時期カールはかなりふくよかな体型だったのですが、エディ・スリマンというデザイナーが作ったディオールのジャケットがどうしても着たい!と一念発起。
エディのデザインしたジャケットはもう相当に細いのです。とても当時の彼が着れるようなものではなかった。そこでダイエットに励むのですが、その当時のカール。
いや山城新伍か。そして太るとマフラーでごまかそうとするのは万国共通か。
ここから42キロの減量に成功し、冒頭の姿になったわけです。これをある程度の年齢になってから、着たい洋服のためだけに達成したというところにこだわりの強さを感じますよね。僕と同年代の方々はその大変さがよくお分かりになるのではないでしょうか。ダイエットって大変だもの。みつを。
また、カールは他人に自分のことを語られるのを極端に嫌い、今でも人気モデルであるイネス・ド・フレサンジュがカールと仕事をしていたとき、取材を受けてついうっかり「チーズとフルーツをよく食べている。ストレスが多いからかしら」と言ってしまったことに激怒して即解雇した、なんていうエピソードも。こだわりから来る気難しい一面もあったようです。
そしてカールはその哲学にも、その強いこだわりが現れています。
僕の好きな一節なのですが
ファッションには現在や未来が含まれていることが必要。
ドレスは生きている女性が着る物で、美術館に展示されるものではない。
ファッションは商いであって芸術でないのだ。
と語っていて。
ブランド、特にハイブランドのデザイナーって芸術性を追求してるような人が多かったんですよ。ジャンルを問わず、変にアーティストぶったりアート感覚でやってる人、いるでしょう?
そういう人たちに、強烈なアンチテーゼを放った。
実用的でなければ、誰かの役に立たなければ意味がないよと。
商売である以上、常に進化していけなければならないし、売れなければいけないよと。
ファッションて、どこか芸術的な分野と思われているというか、高尚な趣味みたいな感覚で見ている人も多いような気がします。
でもそうじゃないんです。
毎日着るものなんだから、生活に密着したものなんです。毎日着るんだから、テンションの上がるものを着るべきなんです。
カールはそう言葉にはしなかったけど、行動でそれを示してくれました。
コレクション会場にスーパーマーケットを出現させたり演出でみんなを楽しませ、ハイブランドでもファストファッションでも、ファッションの可能性を追求し続けていた。僕はもう少し、もうほんの少しだけでも、この先を見ていたかった。
よく言っていたのですが、いつかパリの街角ですれ違うのが夢だったんです。通い続けたら叶う日も来るのかななんて思っていたけど、もうそれは叶わぬ夢になってしまいました。
だから、時々カールの素晴らしさや面白さについて話して伝えていこうと。僕なんかが話してもたかが知れてるけど、少しでも多くの人に知ってほしいし、こんな人が居たんだということを記憶しておいてほしいなと思っています。
そして今後の世の中ではより強いマインドと柔軟な考え方、両方が必要になっていく。彼に学ぶことは多いのではないでしょうか。
カールが、とずいぶん書いたなと思って数えてみたら23回も言っていました。これからも回数を更新して語っていきます。
最後に、そんなカールの話(24回目)もしようと思っているzoomのオンラインのトークイベントを、5月17日と22日に開催します。
僕はパリとファッションについてお話し、北欧に精通したインテリアプロデューサーの方が北欧とインテリアについて語ってくださいます。
今回はブランドストーリーに着目し、ブランドを深掘りすることで個人やビジネスにも活かせるストーリーの作り方を学ぼうという趣向です。
前回のイベントは大変ご好評を頂きました。今回も生き方やビジネスのヒントが拾えるような内容にしたいと思っていますので、ぜひご参加頂けたら嬉しいです。
17日は10時〜11時15分、22日は22時〜23時15分というスケジュールになっています。顔出しなしのウェビナー形式も可能ですので、ぜひリラックスしてご参加ください。
詳細やお申し込みはリンクから。当日お会いできれば嬉しく思います!
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