コロナ禍は自民党政権に追い風となる

株式市場がなかなか底堅い。今日も上昇、昨年3月の16,000円台からいまや28,000円台後半、3万円をうかがうという見方すら聞かれる。

コロナ渦、医療関係者、飲食店関係者のみならず、多くに国民が涙を流しながら歯を食いしばって働いているなか、株式市場の活況に自然と笑みがこぼれる、違う世界に棲む人々が実際にいるということだ。

安倍前総理は、長年の経済停滞を打開したいと「三本の矢」という名の下で政策を展開した。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を促す成長戦略」から成る「三本の矢」は、2013年の流行語大賞のトップテン入りを果たしている。

「大胆な金融政策」では、量的緩和、ゼロ金利・マイナス金利という極端な緩和が行われたが、低金利の資金が民間企業に流れていれば、新規の設備投資から好循環が生まれ、個人消費も増えただろう。

しかし、マネーは実物投資には向かわず、投機的市場である株式市場に流れた。株式市場に投資しているのは法人であれば機関投資家であり、個人であればリタイアした高齢の富裕者だ。

個人投資家は配当狙いというより、日々の売り買いによってキャピタルゲインを得ようとする傾向が強い。業績に関係なく、日々、動く銘柄は特に人気があり、身の丈に合わない株価が形成されている企業も散見される。日銀が上場投資信託(EFT)を自ら購入、その規模は7兆円に及んでいる。それが株価を下支えしていることもあり、日本の株式市場は安全な投機的市場となっているのだ。

アベノミクスの政策の有力な手段であった金融緩和は、デフレ脱却も民間投資の拡大も実現できなかったが、長期的な持続可能性が危ぶまれている年金基金の資産増強を実現し年金支給を安定化させるばかりか、高齢の富裕層の資産を増やし、自民党政権支持を盤石にしたといえよう。

そのなかで起きた新型コロナウイルス感染拡大である。高齢者に支持されてきた自民党政権としては、重症化のおそれの高い高齢者を放っておくことはできない。総選挙が近く、政権基盤を安定化させるには、株式市場の活況を維持しながら、高齢者の感染対策を現役世代の負担によりやり抜こうと腹を固めたと見て良かろう。

景気が戦後最悪の状況にあっても、この程度の感染状況でいけば、総選挙を十分戦えるという判断なのだろう。足もとの景気が悪化しても、高齢者には痛くもかゆくもない。世論調査とは全く次元が異なるのが国政選挙というものでもある。

コロナ渦、いつの間にか、経済停滞の打開という自民党政権の看板政策、要といえる大胆な金融緩和が、政権基盤の維持という目的にすり替わっていく過程は、まるで手品のようである。離合集散を繰り返し、政策ビジョンのない野党に勝ち目はない。

国会の答弁を見ている限り、顔色のとても悪い菅総理。自民党が総裁をすげ替えて総選挙う可能性はゼロではないが、誰が総裁になっても自民党が大敗したり、政権の座から滑り落たりすることはないだろう。

新型コロナウイルス感染拡大は、自民党にとってむしろ追い風なのである。