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米を喰え!<パックご飯をトレジャーハントする> (5)テーブルマーク 新潟産こしひかり

1.テーブルマーク『新潟県産こしひかり』のスペック

価格:2in1 199円(某大手スーパー) 150g当り@99.5円
容量:150g×2
製造:テーブルマーク株式会社新潟魚沼工場 新潟県南魚沼市
販売:テーブルマーク株式会社 東京都中央区築地
商品特長:新潟県産こしひかり使用、二段階加熱製法、魚沼の水
加熱時間:レンジの場合、1食分500w・600wで約1分30秒

スーパーマーケットにディスカウンター、薬局、電器店など14店の店頭をウォークスルーしてみて、テーブルマーク株式会社(以下テブマ社と略記)の自社ブランドやOEM商材がいかに棚を占拠しているか、目の当たりにした。

特にパック8個以上の大容量バンドル商材は多くの店で棚の最下段に鎮座していた。OEMも含めて、結構な量がマーケットを押さえているようである。

さてテブマ社は、前述したとおり、冷食と冷凍うどんで有名だった加ト吉と日本たばこ産業との合体で生まれた企業だが、現在は「サトウ食品」や「神明&ウーケ」と渡り合う”パックごはん3大勢力”のひとつとしてシマを争っている。

さて、そのお味はどんなものか。

2.テブマ社は蒸気炊飯。二段階加熱製法を識る。

テブマ社のパックごはんパッケージに記載される「二段階加熱製法」なるフレーズだが、その製法とはいかに?

同社公式サイトに拠れば、製法の特徴として2つのポイントを挙げている。

1)トレーで一食ずつ炊き上げる
原料米の充填から炊飯、蒸らしまでをすべてトレー内で行う。トレーをお釜の代わりとするため米粒が潰れず、つややかに仕上がる、とある。蒸気炊飯らしい工程。

2)独自の二段階加熱製法
第一段階:炊飯前に、瞬間的に加圧した高温蒸気で加熱する「加圧加熱」によって、短時間でお米の芯までしっかり熱を通し、同時に殺菌も行う。
第二段階:その後、魚沼のおいしい水をトレーに入れ、高温の蒸気で一気に炊き上げる。

テブマ社の公式サイトから拝借した二段階加熱製法のイメージ図

加圧加熱と蒸気炊飯、2度の加熱によりβデンプンのαデンプン化が素速く進むことで、”外はふっくら、中はもっちり、おいしいごはんに仕上がる”としている。

実際にレンチンした後のごはんの状態を見てみよう。

1回目の試食時。蒸気炊飯ながら、輝きというか艶やかなごはん粒の表面
2回目試食時。朝6時自然光。

1回目・2回目も、シャリ切り前の状態は、ごはん粒の輝きと保湿感がある印象を受ける。

1回目試食時のシャリ切り後。潤いのあるごはん粒の表面
2回目試食時。朝6時自然光。
2回目試食時。朝6時、ダイニングのLED光。

シャリ切り後も同様で、ごはん粒の表面にキラキラ感があって潤いを感じさせ、まるで通常の炊飯器で炊いたような輪郭の緩さもある。これまで食べてみた蒸気炊飯といえばごはん粒の表面がマット仕上げな印象で、直線的でスッキリしたフォルムだったが、これは違うなと思った。

自社独自と謳う二段階加熱製法による、第1段階目の加圧高温蒸気と第2段階目の蒸気炊飯のシナジーによって、艶かさと旨味の元と言われる「保水膜」が適度に生じたのだろうか。

さて、その「保水膜」とは一体何か?

3.ごはんの艶やかな潤いのあるお肌の秘訣→「保水膜」

ごはん粒を取り巻くネバネバの本体であり、これを水洗いなどで除くと美味しさが激減するという「保水膜」についてネットで調べてみた。以下が見つかった主な記述である。

保水膜とは、炊飯した米粒の表面を覆っている粘液状の膜のことで、ごはんの甘みと香り、ツヤ、口あたりの素とされるもの。つまり、この保水膜の状態が、おいしいごはんの指標のひとつとなります。

三菱電機「米飯対決」
https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/suihanki/okomejuku/rice/kamado_special/

お米には、香り、粘り、弾力、甘さ、うまみなど、さまざまな要素があります。このさまざまな要素の中でも、「光沢」と「粘り」こそがお米のおいしさを決める最大の要因であると30年以上前に発表したのが、東京農業大学客員教授であり、現在の「東洋ライス」代表取締役兼技術部長である雜賀慶二(さいか・けいじ)さんでした。

雜賀さんは、この粘りを生成する要因を解明し、「おねばの濃縮膜」、「保水膜」と名付けました。

お米を炊飯し始めると、米粒の表面からお米のでんぷんの溶解物「おねば」が出てきます。そして、釜(鍋)の中の水分が減ってくると、おねばは濃縮されて米粒の表面に再付着します。それが、おねばの濃縮膜、つまり、粘りです。炊飯後に外気に当たると、飯粒の表面を覆うおねばの濃縮膜の余剰水分が発散することで、飯粒の表面に張りができ、ツヤツヤと光る保水膜が完成するというわけです。

(中略)

「やみくもにネチャネチャに粘っているというのではなく、一粒一粒がそれぞれ独立した状態。そして、粒の表面には粘りの膜がつややかに張られ、内部はそれよりも水分の少ない均一な弾性力を持っている状態です」

見た目はつやつやピカピカ。箸で持ち上げることができる粘り。口に入れると一粒一粒を感じられる。舌触りがなめらか。噛みこんでも粉っぽさやざらつきや水っぽさがない。

マイナビ農業「『おいしいお米』って何? 『味度メーター』に迫る」
https://agri.mynavi.jp/2019_07_09_78495/

「保水膜」とは?
炊飯中に、米粒表面からの溶出物が煮詰められ、濃縮されたものが、ご飯粒表面を覆ったものです。従って「保水膜」とは、ご飯粒内部よりかなり水分が高く、米粒表面からの溶出物と水が適度の比率で混じったものから出来ています。「保水膜」が除かれた裸のご飯粒表面は、ちょうどお茶漬けのご飯のようにザラザラ・デコボコです。裸のご飯粒の表面を滑らかに仕上げるのが「保水膜」です。
又、「保水膜」の材料の米表面からの溶出物の生じ方により、「保水膜」の質やご飯粒内部の状態も変化させます。つまり「保水膜」の量がご飯のおいしさを決めます。

東洋精米機製作所「MA-30システム カタログ」https://www.kojimaseiki.co.jp/wp-content/uploads/2016/07/MA-30A30AM%EF%BD%B6%EF%BE%80%EF%BE%9B%EF%BD%B8%EF%BE%9E.pdf

ごはんのネバネバ=保水膜って、今まで単なる粘着物としか思っていなかったが、こんなに重要なものだったのだ。ちいとも知らなかった。保水膜は、ごはん粒の荒れたお肌に輝きのある潤いと美味しさを与えてくれるモイスチャー成分というわけである。

特にガス直火釜炊き商品に見られるご飯粒のやや緩い輪郭の正体がこれだったのかと思う。

4.適度な粘度とコシのある物理的食感。言うこと無し。

というわけで、半パックづつ2回試食した。美味しいと思う。

炊き具合は自分の嗜好からすると少々柔らかめだが、まぁ、そこは最大公約数の顧客満足を得るポイントなんでしょうな。

保水膜由来と覚しい粘りに加えて適度の歯応えもあって、物理的食味からいくと十分イケル。ごはんの食味を決める保水膜の形成という点で、二段階加熱製法の霊験あらたか、と見たがどうだろうか。

本品の場合、ごはん粒を口に含んでも気になる香気は感じず、素直に腹に落ちる。ごはんのみでもmogumoguが苦にならない。

テブマ社が量販店の棚を占拠している理由が分かるような気がした。


(了)

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