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鹿児島蔵元アーカイブズ 2002〜03(3) 白金酒造
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2002.04.21 by 猛牛晴彦
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■道路を挟んだマスとミニの両輪。“ご時世”先取りの製造体制。
錦江湾沿岸部をぐるっと回りながら東に向かう。目指すは『白金酒造』さん、わてが大好きな『白金乃露』の蔵元である。おっと!危うく通り過ぎそうになった。ぬぅあんと蔵は道路を挟んできびすを接していて、まるで蔵の中を一本の道が走っているという感じだ。
バス停で待つおばあちゃんの後ろ、石造りの壁に大きく銘柄名が入っていて、その巨大な文字がなんともいい気分。いかにも蔵らしい風情が漂っている。
しかし、白金酒造さんは道を挟んで、まったく正反対の二つの顔を持っていたのだった。
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というわけで、道の片側ではマスプロダクトである『白金乃露』のラインが動き、道の反対では『石蔵』などの少量生産手作り商品が誕生するのである。
蔵の方にお話を伺うと、木樽での蒸留は7年ほど前から再開されたという。取り組みとしては、鹿児島県内でも早いほうではないかとおっしゃっていた。今では7蔵ほどに増えているということだ。
現今の様なブームが到来する以前にこのような新旧2ラインを持っていたとは、しっかりと時代を先取りしていたんだなぁ~と感心した。
■伝統は楽じゃない。職人不足で補修も大変だ、と樽が言ふのよ。
さて、高付加価値ブランドであるが故に、わては一度しか飲んだことのない『石蔵』(苦笑)。が、その名前通り、まさに重要文化財クラスの石蔵からそれは生まれていたのだった。内部に入るとひんやりとした空気が漂う。ん~~~ん、ええ感じ。
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重厚さちゅーか、どっしりとした手応えちゅーか、重みを感じますわな~。うん。この建物の内部に樽+桶の伝統的蒸留装置が置かれているとですが、とにかくデカイですわ。隊長も目の当たりにして感激していた。樽についての詳しい説明が聞けたのであります。
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とにかく樽や桶の職人さんが少ないため、特に作り方が難しい樽については京都から職人さんに来ていただいて、製作と補修を御願いしているそうだ。
樽と桶の配置などは蔵それぞれの事情によって異なるため、この現場で製作と調整を行わざるを得ないという。上写真の樽の穴などもここで穿たれたとのこと。
まぁ、飲む方は気楽でいいけど、製造サイドは大変ですにゃ。
上に掲げたグルグルととぐろを巻いているのは、「蛇管」。この中を蒸気が通っていくが、管の材質は錫というお話。錫だと味が丸くなり、アルミとかだと味が堅くなるという。材質ひとつにしても、微妙なんですね。
こういう器具ひとつにしても、職人さん不足のため、維持管理が大変という。「伝統」を消費する方は呑気なもんだが、守る方々は楽じゃありません。単品の価格にそれが跳ね返るのは当然でしょう。現場で見ると、それがよー解りました。
■TV取材もあったという蔵2階。お!涎グッズの行列が?!
蔵の方が、じゃぁ2階の方へどうぞ、とおっしゃる。なんでもテレビ局も取材に来たらしいのだ。一体そこに何があるのだろうか?とお邪魔してみる。
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ああ、こりゃぁ良かばい!。タマラン!。わてにとってはまさに垂涎daradaraの白金グッズの山である!。
いいなぁ、この通い徳利の古色。欲しいぃ!欲しいぃ!
聞けば明治時代のものらしい。見ると米焼酎の文字が見える。当時は芋は作っていなかったそうな。芋製造は第二次世界大戦後のことだと言う。
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ふと横を見れば、またぬぅあんとも優美な器があるではないか・・・。ごくっ。カラカラでもなさそうだし、とにかくこのフォルムの美しさに惚れてしまった。欲しいなあ、これ(T_T)。というわけで、焼酎グッズフェチにとってはぬぅあんとも刺激的、扇情的な空間であったことは間違いない。
「ねぇ、おまいさん、ちょいと千代香を取っておくれでぬぅあいかい?」「あら、いやだよぉ、そんなに注いじゃ。すぐ酔っちゃうじゃないか」・・ツンツン・・・ウニウニ・・・
畳の上の火鉢を見ていたらそんな情景が浮かんできてしまった、昼下がりであった。
■ディスで目の当たりにする現実。それが“生活”なのだ。
さて、いよいよ薩摩潜入『探検隊オヤヂニアンリグ』も大団円。最後に焼酎のお土産をと、薩摩地場のディスカウンター・チェーン店へと向かう。濱田酒造さんの直営店とのこと。名前は『KINKO』。
店内に足を踏み入れて、すぐ正面に某洋酒メーカーの『そ○から』が大陳されていた。価格は900円台。安い。
猛牛「隊長! 薩摩にお邪魔した土産に、わざと『そ○から』買いますか?w」
隊長「探検隊らしくてそれもいいねぇ~。ぶっはっは!」
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他愛もない冗談ではあったが、もうひとつ大陳されている商品を見て、軽口もぶっ飛んでしまった。地元某酒造会社の超低価格芋焼酎である。一升で996円だ! 文字どおりバカ安! 5リットルペットはなんと2500円台。
初日に大口酒造さんから伺った話が納得できる。白波、伊佐錦、島美人、桜島などが一升で1370円(筑前だと1470円くらい)で横並びの中、どーーん!とそそり立つように996円の価格設定。この違いは極度にデカイ。話だと麦麹でコストを落としているそうだ。
飲んだことがないので味については語れないが、実感とすれば・・・そりゃ、そげんこだわることがなけりゃ~、買いますわ、これを。
大容量ペットなら、なおのこと値頃感があるもんなぁ。地元では量を飲むので安くて大容量を、逆に都市部のユーザーは量は飲まずこだわり銘柄を好むという。同じ話を昨年暮れの人吉・球磨でも聞いた。
わてもきれい事は言えない。財布が淋しいなら、安いほうがよかですけんねぇ。それが趣味とは違う、生活ってもんですばい。誰がそれを責められるのかと、思います。
伝統・民俗としてことさら神格化したがる都市部での受容の裏で、実際に地元で進行しているのは、このような状況なのだ。
◇ ◇ ◇
さて最後に、当探検隊が取材に協力し、今年2月27日の朝日新聞西部本社版夕刊で記事となった特集の中から、雑誌『焼酎楽園』小林編集長のコメントで〆と参らせていただきます。たぶん全文を読まれた方は少ないでしょうけんね。
(小林編集長、H記者、大目に見てやってつーかーさい)
プレミア焼酎が出始めたのは3年前ぐらいから。「森伊蔵」「魔王」「村尾」「百年の孤独」などが異常な価格で売られる一方で、低価格の大容量パックもシェアを伸ばして二極化しています。はざまで厳しいのが、九州に根付き日常飲まれてきたレギュラー酒。
一番の解決法は飲み手が「育つ」しかないと思いますね。1600~1800円くらいでおいしい焼酎はたくさんあるのだから、自分なりの一本を見つけてほしい。時にはプレミア焼酎を飲んでもいい。他人がまずいと言っても自分がおいしいものをみつけるのが飲べえの楽しみのはずです。
蔵元も酒販店も料飲店もマスコミも、「安くてこんなにいい酒がある」と選択の幅を啓蒙するべきでしょう。
(了)
■2022年追記:最後に引用された結論、いまでもそう思います。