米を喰え！＜パックご飯をトレジャーハントする＞ (14)アイリスフーズ 『低温製法米のおいしいごはん・魚沼産こしひかり』
1．アイリスフーズ 『低温製法米のおいしいごはん・魚沼産こしひかり』 のスペック
価格：3パックバンドル399円 ＠133.0円
容量：150ｇ
製造：アイリスオオヤマ株式会社角田工場 宮城県角田市
販売：アイリスフーズ株式会社 宮城県仙台市
商品特長：魚沼産こしひかり・一等米使用、低温管理で保管精米
加熱時間：レンジの場合、1食分500ｗ・600ｗで約1分30秒
冒頭から勉強不足で恐縮だが、実はこの連作を始めるまで、アイリスオオヤマがパックごはんに限らず、白米や餅などの食品事業に参入していたとはちぃーとも知らなかった。
私が元々パックごはんを食べていなかったので棚をマジマジと見ることも無かったし、ホームセンターで販売されている生活グッズや家電というイメージが強かったこともある。
この精米事業への参入については、アイリスグループの大山健太郎会長の談話がサイトに掲載されている。自社が開発した“低温製法”という最新鋭の精米技術とマーケティング力・グローバルネットワークを組み合わせることで、地元東北の主要産業である農業の応援と米食文化を守るという主旨が述べられている。
低温製法による精米とは、仕入れた玄米を低温保管→低温精米→低温包装と、連続した低温の環境下で工程を組んで精米を行う、アイリスオオヤマ独自の方式。
以前、別の稿において米の温度管理についての研究論文を紹介したが、温度が高い状態で貯蔵した場合には新しい米であっても脂肪酸の酸化が進み古米臭が発生する。低温で管理していると劣化が抑えられるわけである。
パッケージをよく見ると、「低温製法米によるおいしいごはん」の”ん”の右下にレジスター記号が記載されている。低温製法を明記した商品名が商標登録されているのだ。
さて、販社のアイリスフーズ株式会社は、2013年11月の設立と9年前のことで後発組である。パックごはん業界への参入は、2017年8月に角田工場で自社生産の開始からで、これも比較的最近の話。
さて、郷土の振興と再生を願う大山会長が繰り出した、魚沼産コシ一等米によるこの一膳は如何に？
２．コシ系では珍しい、蒸気炊飯のマット仕上げと粘度の低さ。
蓋を剥がそうと端をめくると、顔が50㎝ほど離れているのに関わらず、蒸気がズズッと昇ってきた。今までに無かったことだが、香りは良し。
とにかく、魚沼産をはじめ新潟コシ系のパック物は炊き方に関わらず、原料の水分量の多さゆえかテカリが強く、保水膜の形成もあってか結構粘ついた外観があった。しかし本品では、蒸気炊飯ということもあってテカリや粘つきは弱く、とてもスッキリとした印象。
硬め歯応え命のハードコア飯派としては、ただ一点、パック版新潟コシ系の軟らかさがネックだった。しかしながら本品、外観ではそういう軟らかさを感じさせない。ごはん粒の輪郭もキレイで直線的であり、さすが一等米の粒ぞろいとでもいうか、美しい。
3．ごはんだけで飯がイケル。先入観を一掃する物理的食感。
いやあ、結論から言うと、これは美味い。
これまで喰った他社の魚沼コシや新潟コシ系と比較して、超硬度な仕上がり、シャキシャキした歯応えが極めて感度良好だ。軟派ファンには向かないだろうが、”やわ口の新潟コシが多いとお嘆きの貴兄に”ぜひオススメしたい一作である。
定評ある原料でしかも一等米、風味も癖がなく、食べやすい。それは低温製法による管理も寄与しているのだろう。魚沼クラスは他社にとってもフラッグシップ商材であり、管理に関しては同じ気配りがあるとは思う。
しかし本品の真骨頂は、硬さと歯応えだね。物理的官能が揺さぶられる。
これまで色々と試食してみて、後半戦にはなにかとおかずが欲しくなったものだが、本品にはおかずは不要だ。そのまんま1パック、がつがつとイケた。
家内にも食べて貰ったが、「硬くて美味い」と同意見である。私と同様にアイリスオオヤマがごはんなど食品を提供していたことを知らなかったようで、驚いていた。
アイリスオオヤマといえば、ホームセンの生活雑貨や家電品、はたまたうちでは猫を飼っているのでペット用品などの固定概念が強い。食品産業でしかも米の飯となると、正直どうかと私は思ってはいたんである。
しかし、これを喰って、企業イメージが大きく塗り替えられた。
他メーカーの魚沼産コシも原料が原料だけにも遜色ないものとは思うが、個人的に魚沼コシのパックを買うとしたら、物理的食味を基準としてアイリスオオヤマのこれにしたいと思う。商品単価的にも競合と比べて割安だし、お買い得である。
歯応えに仕損じなし・・・ただしこのパック、買い回った量販店16店のうち、たった1店でしか取り扱っていない。
（了）
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