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Stock of The Living Dead 第3話

2002.11.30 司会 猛牛

“あなたの知らない焼酎の世界”

世の中には科学では解明できない、不思議な出来事があります。焼酎の世界も同じ。今日は、日常品から突如切り離された、戦慄と驚愕のディープな焼酎の異次元に、あなたをお招きします。

酒販店の棚や倉庫で埃をかぶりながらも、瓶内熟成で生きながらえていたデッドな焼酎。そんな“生きている死蔵焼酎”とショッキングな遭遇を果たした読者の皆様からの情報をお知らせするコーナー『STOCK OF THE LIVING DEAD』の時間がやってきました。

◇   ◇   ◇

さて、今回は、福岡市にお住まいのビーフさんからのお便りです。古い紙パック入り焼酎のデッド・ストックとの遭遇体験談です。

福岡市に住んでおります、「ビーフ」と言います。

今年の7月ですが、佐賀県は唐津市の酒屋さんを回っていた時のことです。 その店は、唐津市街の外れにありました。自宅と店が一緒になった古い建物で、中ではおじいさんが店番をしているという、典型的な田舎の酒屋さんでした。

なにかあるな・・・と、第六感というのでしょうか。車を止めて店先を眺めていたのです。魔に魅入られたという感じでしょうか?

スーーーーーーーーーーーッと体が吸い込まれるようになって・・・、気が付いたら店の中に立っていました。まさに病気です。店の商品のほとんどは厚い埃をかぶったままで、商売っ気の無さがわかりました。

しかし、そこがまた「いい」んですけどね。 ふと棚を見ると、これまた触るだけで指が埃で真っ黒になるような、古い紙パック焼酎が最上段に浮かんでいます。

いままで見たこともなく、さっそく手にしてカウンターへ。おじいさんは優しい人で、安く売ってくれました。

そこの息子さんがちょうど奧から出ていらして、この品について伺うと、「紙パック焼酎のハシリ、最初の頃の商品だよ」とおっしゃいました。

この品については何も知りません。ぜひ詳しいことを知りたいと思い、鑑定をお願いする次第です。どうぞよろしく。

というわけで、さて、ビーフさんが佐賀県唐津市の古い酒屋でデッドの淵から蘇らせた紙パック焼酎、さっそく問題の酎霊写真をご覧いただきましょう・・・。

(客席:ん・・・・・(@_@;))

紙パックですので、風化度という点では、スタジオ内も驚きの声は少ないですが、面白いですね、帽子を被った紙パックとは。私も初めてですね、こういう酎霊は。

ここでおなじみの酎霊写真研究家、スピリチュアリストの牛田非道先生に写真の鑑定をお願いいたします。・・・先生、いかがですか、この写真?

牛田:ああ・・・、うむ・・・見えてきました。

多くの酎霊研究家の先生方は、紙パックのものはどちらかというと低位の店縛霊として判断されるのですが、私が見ますにこの酎霊、全身から黄金色の光を放っており、たいへん位階の高い酎霊と判断します。

生前はとても注目度が高く尊ばれていた方と思います。

この酎霊が・・・私に語っています・・・・。

「余は樫樽貯蔵で深い味わいを身に付けたぞよ。樫材の溶出成分による琥珀色の輝き、豊かな陰影のある芳醇な香り、バランスのよいまろやかな味であるぞよ。熟成された美味しさは樫樽貯蔵ならではのものであるぞよ。

余は九州山地の奥、高い山々と深い渓谷、清らかな空気の高千穂は自然がつくった樫樽貯蔵の最高の環境で生まれたぞよ。余はその中でさらにじっくりと育まれたのであるぞよ」

うう・・・・・・うむ。

「皆が子供の頃はじめて描いたであろうチューリップの絵。そのイメージはいつも余の心の中にも響いておる。その思い出をばクラシック調の優美な花園としてネーミングにし、デザイン化したのがこのパッケージであるぞよ」

ふっ。大変高貴な酎霊です。

この『チューリップの詩』は、宮崎県高千穂にある神楽酒造さんがかつて製造されていた酎霊です。酎霊界では初めてのアルミパックを使ったものであり、まさに紙パック焼酎の祖霊の中の祖霊、大祖霊と申し上げて過言ではない貴重なものです。

被っていた帽子ですが、酎霊の自ら語る因縁では、ホコリや温度差から旨さを守るために、このお洒落な帽子を付けたと言っています。帽子を被せることでギフトにも使わせようという意図があったようで、この帽子の部分に極めて強い霊波、つまり現世市場への執着心をひしひしと感じます。

さて、この酎霊のLIVING-DEAD年を霊視してみましたが、1989年6月17日という事がわかりました。13年物。この酎霊の初発売が89年6月ですので、これは出荷最初期の大祖霊です。ちなみに終売は2000年9月31日です。

この商品については・・・

先生、供養の必要はないと・・・?

牛田:違います! 大いに供養の必要があります!!

というのは、保存状態にもよりますが、紙パックの場合、中身の酎霊に紙臭がつき、嗅いだ時に異臭を伴う恐れがある。この酎霊が、瓶や甕で供養されていたのでしたら、紙臭の祟りの心配はなかったのですが・・・。

紙パックのままだと酎霊質もどのように変化しているのか分かりません。古い日付の紙パック酎霊は、試飲しない方が無難です。

先生ありがとうございました。大変貴重で高貴な酎霊だったことがわかりましたが、そこで気になるのは、この酎霊と遭遇したビーフさんがそれを飲んだかどうか?、ですね。

(客席:うむ・・・・(・・;)

・・・ええ。いま福岡市のビーフさんと電話が繋がっています。ビーフさん、こんにちは。実際に『チューリップの詩』を飲まれたんですか?

ビーフ:ども。ビーフですばい。はじめまして。

いやぁ~、貧乏性なもんで、つい開けて飲んでもうたんですわあ~、やっぱ飲まんともったいなかばい、なんてですにゃ。

まぁ、アルミパックやったもんで、中になんか溶けてたりとか、紙臭はせんやったです。味もイケたほうでして・・・。

体調ですか? はい、大丈夫ですばい。何食っても飲んでも、腹は強いとですけんねぇ。貧乏育ちで鍛えられちょりますけん。ぶっはっは・・・。

モニターの前の良い子のみなさんは、決してマネしないで下さいね。というわけで、来週の『STOCK OF THE LIVING DEAD』をお楽しみにm(_ _)m


(※神楽酒造株式会社さんより同品の情報をご教示いただきました。ありがとうございました)

(了)


■2022年追記:神楽酒造さんが33年前に発売開始した紙パック物ですね。商品の由来がさっぱり不明なので、同社に問い合わせを行い商品説明をいただいて書いたもの。

神楽さんは今更ですが、麦焼酎『ひむかのくろうま』で有名です。

原稿が見当たらないのですが、たしか『焼酎楽園』さんの取材で唐津市に赴き、地元の酒販卸さんからお話を伺ったことがありました。その卸さんは神楽さんと『ひむかのくろうま』の開発に関わったそうで、粕取や甲類からのスイッチを促すポジションの商品を目指した、との内容だったと記憶しています。

2002年前後に始まった焼酎ブーム以前は、『ひむかのくろうま』はキープ瓶として、『いいちこ』『二階堂』と並んで多かったもんです。また福岡市・北九州市などの都市部はもちろんでしたが、郡部に行っても、料飲店が掲げた「くろうま」電照看板をいろんな場所で見かけました。それくらい多かった。

焼酎ブームで芋焼酎が一気に浸透する以前の庶民の風景でした。

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