米を喰え!<パックご飯をトレジャーハントする> (8)JA全農『農協ごはん』
1.JA全農『農協ごはん』のスペック
JA全農が2021年7月29日にパックごはん市場に投入した一作。製造と販売はJA全農ラドファ株式会社(本社:宮城県加美郡加美町)である。
全農のナショナルブランドとしては、これまで「農協牛乳」「農協珈琲」「農協ヨーグルト」「農協たまご」と展開されてきたが、それらに続いてローンチしたもの。パッケージのカラーリングも先行商品に類するようだ。
『農協ごはん』の商品特長といえば、ガス直火炊きに「シャリ切り製法」ということになる。これまで見たところ、ガス直火炊きはサトウ食品とJA全農ラドファだけである。
またシャリ切りとは、公式サイトのリリースを借りれば「国産の美味しいお米を強火で大釜で炊き上げ、炊き上がったあとにシャリ切りし、余分な水分をとばし、ふっくらつややかなごはんに仕上げています」となる。いわゆる私らが炊飯釜で炊き上がった際にごはんを混ぜることと同様の工程だ。これは業界で類例は無い。
さて問題は、発売エリアが当初「JAタウン、東北・関東エリアを中心とした一部の小売店舗ほか」となっていて、当方の周囲で扱っている店が無いこと。仕方ないのでネット経由で入手した。
2.ガス炊飯でツヤと潤いを感じる仕上がり。
都合3回ほど試食した。
規定のレンチンを経ての出来上がりは、ツヤや潤いでも気になる点はなく、ガス直火による炊飯らしく保水膜と粘りの加減が見て取れるように思う。しかし、その度合いはあまり強くは見えず、その点は原料米の個性に依るのかもしれないと思った。
シャリ切りした画像をしげしげと眺めると、粒と粒とのくっつき具合はけっこうあっさりしている感じ。ベチャ付いてはいない。
原料米については特記されていないが、”ブレンド”という表記も無いので、単一銘柄による製品のようだ。全農ラドファからは”「種もみからご飯」まで地域の米と水にこだわってきた”というステートメントもあって、そういうことでしょうね。
3.シャリ切り効果で、しっかりとした歯応え。
で喰ったわけだが、以下は私の個人的な感想。
蓋をむしり取っての香気も問題なし。シャリ切り効果もあってなのか、歯触りは少々硬派な炊き上がりで、個人的な物理的食味評価として上々。コシ系だと柔めの仕上がりが多いので、その点、この硬さは好みである。
瑕疵の無い品質と内容ながら、しかし価格との見合いもあってトータル評価としては”アベレージ”ということになる。「この品でなければ!」という決定要因が、価格の圧力もあって弱まる印象を抱くのだ。
たとえば、サトウ食品の『魚沼産こしひかり』バンドルが150gで@166円、テーブルマーク社の同銘柄品バンドルが150g@149円という設定である。
私が集めた33銘柄の上層から中層からにかけて見渡してみても、本品のポジション(ヨドバシ価格で@170)は、けっこう身の置き所が難しいと見た。
大手流通に回った時の価格がどれくらいの設定に落ち着くのだろうか。
逆に「全農」ブランドに対して抱く農における専門性や信頼性からいくと、ランク上のブランド米製品を喰ってみたいと思ったりするのだが。
◇ ◇ ◇
今年5月の記事にあったように、全農ラドファは2021年度実績で、売上高が前年比4000万円増の5億1000万円、無菌パックご飯の販売実績は前年比19万食増の480万食という大きな伸びを示しており、好調に売れているようでだ。
さらに、今年11月から年間1600万食の製造能力を持つ新工場が操業に加わるそうで、合計で2000万食の製造能力を誇ることになる。
販売の好調、生産体制の拡充とともに、今後の商品化についても期待できそうである。
(了)