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これからのサービスデザイン - Biz Forward 2020セッションメモ

このnoteはなにか

2020年1月16日に株式会社マネーフォワードさんが主催されたBiz Forward 2020でのセッション「これからのサービスデザイン」に参加した際のメモです。

なるべく情報量を落としたり内容を変えないように注意はしましたが、書き起こしではなくメモであることをご承知おきください🙏
もし誤った表現や記載があればこのnoteを書いた筆者までDMなどでご指摘いただけると幸いです。

登壇者

深津 貴之さん @fladdict - THE GUILD代表 UI/UXデザイナー
安藤 剛さん @goando - THE GUILD 共同創業者, YAMAP CXO
坪田 朋さん @tsubotax - dely株式会社 CXO, 株式会社Basecamp 代表取締役 CEO
(モデレーター)伊藤 セルジオ 大輔さん - AN INC 代表 UIデザイナー

メモ本編

Q.「みなさんが案件に入ってまずやることは何ですか」

深津さん
目的レイヤーと撤退ラインを最初に明らかにします。
目的レイヤーは、赤字でもいいから成し遂げたい世界を作るのか、事業を会社の収益の新しい柱にしたいのか、株価を上げるための施策を行いたいのか、といったミッションの明確化を最初にやってしまう。

安藤さん
私も深津さんが言ったこともやります。
それに加えて、ビジネスモデルの構造を図にするなど、ビジュアライズすることに力をいれています。
あとはミッションの確認を最初にするんですが、結構ふわっとしていることが多いです。「実現すると世の中どうなるのか」というの部分を一緒に厚くしていくこともあります。

(筆者注:安藤さんがYAMAP CXO就任の際にやられたこと、ビジュアライズの例などは下記noteに詳しい記載があります)

坪田さん
経営サイドに覚悟があるのか、PMFのフェーズはどうなのかを聞きます。
また、例えばdelyは食ドメインなんですがこういった事業ドメインの横展開として考えられることなどを聞いていきます。
私もミッションを決めることは決めるんですが、もう一段階掘り下げるようにしています。OKRのように掘り下げていきます。
後は「なぜこれを実装しないのか」という話をすることも大事だと思っています。
例えばnoteさんがランキングを作らないという話には、背景があるじゃないですか。その背景を伝えるというのは良い取り組みだな、と思いました。

(筆者注:深津さんのランキング設計についての考え方は下記noteに詳しい記載があります)


Q.「今日の会場には経営者の方も多くいらっしゃると思いますが、経営者が持つべき姿勢についてはどうお考えですか」

深津さん
目的レイヤーと撤退条件と時間軸に沿った話が出来ることが大事だと考えています。
例えば「3月末までにサービスが出ればOK!後は決まっていないです!」という仕事は基本やりたくないです。
目的レイヤーを正しく理解し、5年後のために今年中にはどこに石を置くのか、2年目はどこに石を置くのかという話をしたい。
「タワーマンションを作る!」というテンションのサービスが多いが、実際のサービス開発や運営というのは横浜駅の地下のように、ずっと改築し続けます、というものがほとんどですよね。
いかに作り続ける前提でサービスを作るか。作って終わりマインドは持たないほうがいいです。

安藤さん
経営者の覚悟を確かめることが確かに大事だと思います。
CXOという役職はちょっと特殊なんですよね。CTO, CMO, COOのような伝統的なChief〜ポジションとは異なっていると思います。
CXOを立てるということは即ち「うちはユーザー体験を重要指標にします」という宣言でもある。なのでCXOをたてるということは社内においてもユーザー体験を重要指標にする必要がある。そこがちゃんと出来るか否か。

坪田さん
CXOの役割という話で言うと、delyで言うとCEOである堀江さん(@santamariaHORI)は想いが強いんですよね。ただ彼が普通に現場に説明しても、人によって解釈が異なってしまう場合があったりする。
そこで私が堀江さん一緒に散歩しながらアジェンダなしで会話をして、その中からインサイトを抽出して正しく言語化して、現場に伝えるということをしています。
会社のミッションも言語化して分かりやすく伝える、これもCXOの領域何じゃないかと思います。


Q.「CXOの領域という話もありましたが、CXOとは一体どういう職種なんでしょうか」

深津さん
一言にCXOといっても正直、会社によって定義が全然違うと思います。
ただ私が思う実務としてのCXOは、ジェネラリストとしてマーケも企画にも開発にもCSにも顔を出す人だと思います。
業務をインテグレートするというんでしょうか、縦割りではなく横串一気通貫によりシナジーを生み出す人。
そのためのスペシャリティがユーザー視点でいい感じにする、という力。


Q.「ちなみに社内からCXOというのは育つんでしょうか」

坪田さん
育つとは思うんですが…1社の経験では難しいと思っています。
私の経歴として、事業会社にもコンサルにもいてという感じですが、その経験が現状強みになっていると思う。
一社でも色んなポジションをぐるぐる回していければいいと思うが、そういうことが出来るのかということは正直課題だと思いますね。

深津さん
一企業内において部署を跨って一気通貫で何かを作るとか、そういう経験は一社にいるだけだと、一回くらいしかないかもしれない。打席の数として。
例えば創業者のような人の方であれば正にそういった経験が出来るし、外部から関わるアプローチの方がそういう仕事の経験は正直積みやすいかも。


Q.「ユーザー理解のために気をつけていることは何かありますか」

深津さん
自分がユーザーになる、ユーザーと友だちになるということですね。
実際に過去、カメラアプリを作ったときは1000万円くらいカメラ機材等に突っ込んで、実際に海外に撮影にも行ったりしていました。
他にも金融サービスをやるときは全財産つっこんだし、ネタとしてレバレッジ25倍を試してみたり、ものづくりだったらハンマーで金属叩いたりしています。
自分がユーザーになりきれないサービスはCXOは受けない可能性が高いです。ユーザーになりきれないサービスでグロース施策だけやるということであれば過去の体験から普遍的な施策をやると思いますね。
とはいえその場合でもユーザーを友だちにするアプローチはとると思う。

安藤さん
CXOというのはユーザーの一番の代弁者だと思っていて。
開発者が強い会社は作り手の都合による機能やリリースタイミングということが出来たり起こったりしてしまう。でもCXOはユーザーに一番近い人間じゃないといけない。極論、会社とユーザーが喧嘩したらユーザー側に立てるような人。
なので、深津さんも言っていますが基本的には一番のユーザーになる必要がある。
私がCXOをやっているYAMAPとかはまさにそうですね。CXOになってから更に山に登るようになりました。他の登山客にその場でインタビューしたりしています。

坪田さん
delyに入ってCXOになろう、と決めたのは食というドメインに興味があったからですね。「一日中そのドメイン(食)について考えていられるな」という感覚があったんです。
BCGのときに中国×育児のドメインのことやっていましたが、そのとき本当にユーザー目線か?と言われると正直微妙だったと思う。
また中国ということで、情報のタイムラグが1週間〜2週間くらいは合ったと思う。現在のサービスにおいて1週間も意思決定が遅れてしまうというのは良くないですよね。100点の意思決定が出来ていたかというと難しかったです。
それらの経験から、CXOはユーザーからの情報を取りやすい環境で意思決定をしていくのが必須条件になるんじゃないかと思います。


Q.「サービスデザインにおけるペルソナやカスタマージャーニーマップはどうしていますか?あまり皆さんやっていなさそうな印象がありますが」

深津さん
あまりカチッとしたものは作らないですね、作るとしても4コマ漫画をざっくり作るくらいです。

坪田さん
作らないようにしています。
ステークホルダーが多い案件などでは求められて作ったりはしますが、特にそこに重要な意味はないです。
ストックでそういったドキュメントを作るよりは、定期的にSlackなどフローで現場にインプットし続けることのほうが大切。
正直、カスタマージャーニーマップ1枚を見て全て理解出来るわけがない。ストックのドキュメントは1週間くらいで賞味期限切れるので。

安藤さん
必ずしもカスタマージャーニーマップとかである必要はなくてもいいんですが、情報共有や意思決定のためにビジュアライズされたもの、図式化されたものをツールとして用意するべきだとは思っています。
OKRであろうがKPIであろうが、そういうビジュアライズされたものは準備することがあります。

深津さん
手法主義になっているケースもありますね。
あくまでもペルソナやカスタマージャーニーマップというのは、ツールレイヤーの話でしか無いのに、それらを作ったら満足しちゃうというケースをよく見ます。


Q. 「安藤さんの話にも出ましたが、図式化について何か意識されていることはありますか」

深津さん
循環が出来ているのか、というのを図式化して、確認する事が多いですね。
循環が出来ていないと言うことは、広告予算が尽きたら死ぬ、ユーザー獲得が上限までいってしまったら死ぬ、という話なので必ず先に確認します。
図式化については、コツや慣れというのはありますが、色んな会社のビジネスモデルについては半分くらいは外からでも描くことができます。
残り半分は実際に裏話などを聞いては描いて確認してもらって修正して、の繰り返しですね。

安藤さん
今日の登壇者3人はプラットフォーム系のサービスを担当しています。
プラットフォームであるのならば、どういったことを行なうととネットワーク効果が生まれるか、ということを考えなくてはいけないので、そういったものを図式化して描いていきます。


Q.「ステークホルダーが多いところでお仕事されていたりすると思うんですが、ステークホルダーが多いときの合意形成のコツみたいなものってありますか」

坪田さん
ステークホルダーが多いと言っても、インハウスなのかSIerなのかという軸とか色々な軸があって、組織毎にやるべきことは変わると思っています。
今いるようなインハウスな組織であれば、社長と話して、UIを作って関係者に相談をしに行くというのが多いでしょうか。
UIがあると議論やキャッチアップが容易になるので。


Q.「デザイン組織運営のポイントって何かありますか」

深津さん
細かいことと難しいことからやるのはきっぱり諦めること。
大雑把で専門用語なしで伝わることを最初に伝えるべきだと思うんですね。専門用語が必要なことは部署跨ぐと伝わりづらくなるので。
例えばnoteのケースで言うなら「読んで楽しく、書いて楽しく」というようなタマをまず置いて、共通認識をつくる。
この共通認識を作った上で、ビジネスの言葉にするとこういうことですね、テックの言葉にすると、デザインの言葉にすると、というフローで進めていきます。
細かいマニュアルを作ってそれを他部署に理解してもらう、というようなフローとは逆のアプローチでやることです。
まずは光っている方向を指差して、光る方向に進めばたどり着けるから!という感覚。

坪田さん
組織のステージとCXOポジションをいつ導入ということはポイントになりそうですね。
組織が大きくなってからだと横軸で一気通貫にやろうとしても政治で数年浪費することになるケースも多い。そういうケースではまずは縦軸でまとめて、役員になってから横軸をやる、という方が良かったりもします。
500人以下の組織なら最初から横軸をやるというのもいいですが、それ以上の規模になってしまうと「外敵が来た」という印象になってしまう場合もあるので。大企業に社長に頼まれてどーんと入っても、何も動けずに数年で辞めることになるのはそういうケースだと思います。
規模が大きくなると当然難易度が上がりますね。


Q. テクノロジーの進化などもありますが、これからサービスデザインがどう変わると考えてらっしゃいますか

安藤さん
テクノロジーという話ではないんですが、社会的な構造の変換という視点ですべての企業がメディア化していくという文脈の中にいると考えています。
従来のデザイン業務の責任範囲はプロダクトユーザーだったんですね。
ただ今の環境は、プロダクトを取り巻く全チャネルで触れている人をコントロールするというのが業務領域になっている。クラシルさんの例でいうと全SNSのフォロワー数数百万人いて、その全ユーザーが責任範囲になっている。
これからそういう仕事をする上では、メディアコントロールが業務として対象になってくると思います。


深津さん
個人的には会社の時間軸とテクノロジーの時間軸、エクスペリエンスの時間軸を意識する必要があるのかなと。
例えばテクノロジーが出た直後、マンネリ化したときにデザインの価値がでるんですね。逆に急成長の時期はデザインの価値が低い。
AIとか正にそうなんですが、日本語の言語対応できるか否か、マッチ精度が高いのか低いのか、というようなスペック戦争をしているときにデザインはそんなに力にはならない。
AIや自動運転は現状テクノロジーによる力技のところなので、まだデザインの重要度低そうかな。
まだその技術が何になるか分からないときや、テクノロジーとしてはマンネリ化したときにデザインは力を発揮します。例えばnoteのような書くプラットフォームはデザインの価値が生きる。


Q.「これから生きるデザイナーのスキルってどんなものがあるんでしょうか」

坪田さん
ここ1~2年で、ものづくりの仕方っていうのは変化しています。
それ以前はそこそこいいアプリ作ってマーケフィットしていれば売れるという時代でしたが、今はアルゴリズムやパーソナライズが重要視される、複合要因の争いになっている。
なので、縦軸のスキルを磨いた後に、横軸のマーケティングやデータサイエンスのちからを身に着けて、アウトプットする力というのが生きるんじゃないでしょうか。
あとは、強い人と話してデザインとしてアウトプットを出せる力が必要とされていますね。
各領域における勉強もそうだし、データサイエンスチームにオススメの本を3冊聞いて読むということをしています。そういったことで関係値づくりと相手の言葉で喋られるようになるということとか。

深津さん
デザインと経営の距離が近くなるほど、デザイナーはお金の話やマーケの話を理解して喋れるようになる必要がありますね。必須だと思います。
あとは脳みその仕組みを理解することですね。
結局、料理でも山でも文章でも、脳が情報をインプットして処理してアウトプットをする、という話は共通。どんなことをしたらどう感じるのか、という話。そういう意味で「脳内でどういう処理がされているのか」ということを知っておくことが一番普遍的だと思います。

安藤さん
そうですね、デザイナーとして認知工学が重要というのがそれで、正に脳みその話ですね。


Q.「残り時間もわずかとなりましたが、最後に2020年に個人的にチャレンジしたいと思われていることを教えてください」

安藤さん
現状、GUILDから2人のCXOが出ました。
今年はもう1人か2人、外部の事業会社のCXOを輩出したいですね。
CXOが立つというのはユーザー体験を重要視するという思想が広まっているということなので。

深津さん
デッサン教室で絵の描き方をもう一度勉強しようかな、と思っています。
単純に絵が描きたいと言うよりは、絵の書き方にサービスデザインのプロセスが全て入っているので復習しようかなと考えています。
正しく見て、配置を理解して、認知バイアスを理解し、配列をみて…PDCAやる、というようなのは絵を描くプロセスに全て入っているので。それらをもう一度復習したい。

坪田さん
安藤さんの話にもありましたが、世の中でCXOの価値を理解してもらうためにまずは自分がCXOとして実績を出すことをやりたい。
あとは料理が好きなので、料理もがっつりやりたいですね。

メモは以上です。


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