キラキラ

ずっと好きだった子の結婚式に呼ばれた。

式中の記憶はほぼない。友達曰く、虚な目を似ていたそうだ。

 式が終わり、その子と旦那さんが僕たちのところに挨拶に回ってきてくれた。なぜだかわからないが、僕は涙を堪えていた。悔しいわけでも悲しいわけでもない涙だった。

挨拶をもらったのち、5分くらい雑談をしてた。僕は、軽い相槌以外には一言も言葉を発せられなかった。口を開くと、君のことが好きだと言う言葉が出てしまう気がしたからだ。その言葉がお茶を濁し、空気を壊すことをわかっているからこそ、言葉にするのが怖かった。現実にするのが怖かった。

 好きな子は、僕の変化には気づかなかった。その子の目には、僕はもう写っていないのだと、改めてわかった。そのことに気づいたら、僕の心の中は元日の渋谷くらいに静かに、閑散とした。無駄な思考が止まったのだ。


 談笑がひと段落つき、2人が僕たちのテーブルからさっていこうとした時、僕は立ち上がり、気づいたらその子を呼び止めていた。
言いたいことは、もう決まっていた。

「とても.......綺麗だったよ」

心の底からの言葉だった。ずっと伝えたい言葉だった。僕の本心だった。
堪えていた涙が、僕の理性の防波堤に押し寄せてくるのがわかった。まだ泣くまいという理性と、感情の昂りがぶつかり合ってる音がした。


その子は僕に、

「ありがとう」

  と輝かしい笑顔で言った。何よりも輝いて見えた。と同時に、この笑顔が一番好きだったことを思い出した。ただ、その笑顔は、他の人たちにむけていた笑顔と同じだった。

 僕は、ついにすこしの涙を流してしまった。僕は、少しこぼれ出してきていた涙を拭いて、バイバイと言ってその場を離れた。涙を流していたことに気づいた友達たちが肩を抱えてくれた。

僕の涙に気づいたその子は、不思議そうな心配そうな顔をしているように見えた。

僕はそれ以来、彼女と連絡を取ることをやめた。逃げているだけなのはわかっているが、その行動自体に後悔はない。
まだあるとするならば、当たり前にあの子の笑顔がみれていたあの時間を、もっと大切にすればよかったと言う後悔だけだ。

目から涙がこぼれ落ちて初めて、夕日に反射してキラキラ光っていたことがわかった。

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