FP&Aはイノベーションのガイド役
10XのFinance&Accounting部で働いている@mhiroです!
この記事は10X アドベントカレンダーの21日目の記事です。
昨日はRetail Strategy & OperationsのTottiさんによる「メトリックスを見るときは事業の全体感を把握するのって大事だよね、というお話し」という記事を公開しているので興味ある方はぜひご一読ください!
はじめに
前々回は入社エントリ、前回はパブリックセクター出身者へのメッセージを
ブログに書いたので、今回は10XにCorporate Strategyとして入社した私の具体的な業務内容を書くことにしました。
10XにはCorporate Strategyという職種があり、現在はCFO直下で3名在籍しています。ミッションは企業価値最大化で、経営管理に強みを持つ上村さん、DevOpsに強みを持つ谷口さん、そして私はFinanceの役割を担っています。
Financeといってもいろいろな仕事があり、私はCFOと会計メンバーとともに資金調達、予実管理、管理会計の運用などを担当しています。資金調達は今年3月に15億円の借入調達が落ち着いたので(詳細はこちら)、今回は10XのFP&Aという責務で何を意識し、どんなことに取り組んでいるのか紹介しようと思います!
FP&Aはイノベーションのガイド役
世界的にイノベーティブな会社で知られる3Mの日本元代表 昆氏は、「経営者にしか見えない勝ち筋を理解し、それを言語(数字)化して、経営者とともに組織全体を動かす」ことがFinanceの役割だと言っています。経営方針という抽象的なものを全ステークホルダーの共通言語である数字に落とし込み共通認識を作るのがFinance・FP&Aの役割ということです。
10Xの場合、経営は非連続な事業創出の指針を掲げ、社員メンバーは経営理念を具現化すべくより良いプロダクトを提供するために尽力します。小売企業は極力安くプロダクトを購入することを希望し、そして投資家や銀行は10Xを通じてより高いリターンを回収することを期待します(厳密には投資家と銀行でも期待値は異なる)。
こうした色んな期待値を価格・投資回収期間・ROIなどの定量的なものさしに落とし込むことでステークホルダー間の認識を合わせ、組織を動かし、経営理念を企業価値最大化に繋げる、つまりイノベーションへとガイドするのがFP&Aの役割だと考えます。
ここから少しだけ、10XでFP&Aをリードする立場として具体的に何を意識し、どんなことに取り組んでいるのかを紹介してみようと思います!
適切なリスクテイクを促す
FP&Aにとって最も重要な役割は、会社が取り得るリスクの限界値(リスクキャパシティ)と実際に取りたいと考えるリスク許容値(リスクアペタイト)に対して、実際のリスクテイクが適切かどうかを可視化し、必要に応じて行動変容を促すことだと思います。もちろんどのように行動変容を促すかはリスクキャパシティとリスクアペタイトによって変わるので、時にブレーキ役、時にアクセル役を担うことになります。
書籍「CFO思考」で三菱UFJグループ 元CFOの徳成氏は、日本企業のPBRが1倍を割っていることや「日本企業はアニマルスピリッツを失ったのか」というグローバル投資家の指摘とともに、日本企業のリスクアペタイトの余剰を課題提起しています。そしてFinance部門こそが事業のアクセル役としてリスクテイクを促すべきだと主張しています。
私も10XでFP&Aの役割を担う際にはこのアクセル役を強く意識しています。
たとえばプライシングを決定するとき。
10Xでは人件費・非人件費をプロジェクト別にモニタリングし、Stailerの提供にかかるコスト(原価)を詳細に把握しています。初期的にはこうしたコスト側の事情を踏まえて採算割れしないようにプライシングを設計することになります(ブレーキ役としてのFP&A)。
ですが、FP&Aのミッションは利益確保ではなくあくまでも企業価値最大化です。中長期で資本生産性を最大化させる事業機会がある場合は、戦略的にプライシングを設計しフロントにより強いリスクテイクを求めることもあります(アクセル役としてのFP&A)。
実際にStailerのプライシングを最終決定する際には事業開発メンバーと会議室にこもって「顧客である小売のエコノミクス・競合環境・市場全体の流れなどを踏まえると10Xとして取るべきリスクテイクの深さはどれくらいか」について何度も議論を重ねました (5時間ぶっ通しで議論した日も)。
月次の数字ばかり追っているといつの間にか短期目線・PL目線に陥りがちですが、中長期の視点も含めて適切なリスクテイクを促すべきというのが1つ目の気づきです。
意思決定の速度を上げる
資本の厚みでは大企業に劣るスタートアップが勝ち残るには意思決定の速度が重要です。特に不確実性の高い事業では試行錯誤の回数(と質)が成功確率を高めます。10Xが挑戦しているネットスーパー業界も例外ではなく事業の成功にはまだ道半ばです。こうした中では経営・本部が可能な限り速く意思決定を下せるようにFP&Aとしてサポートすることを意識しています。
上で紹介した通り10Xでは人件費・非人件費、売上の分解となる事業KPIを定常的にモニタリングしていますが、時には定常のモニタリングでは把握できないことも出てきます。そういった場合は自分自身でサーバー代の料金明細のアイテム別利用量を見にいったり、JIRAの開発アイテムごとのエピックの情報を見にいったり、BigQueryで事業KPIの先行指標データを見にいったりして、その場で最善の定量解(best guess)を提示するようにしています。
もちろん数値の精度は高ければ高いほどよく、時間をかければ一定の解像度は得られると思いますが、意思決定内容との対比で「時間というリソースを投資するトレードオフ」を考えるようにしています。
今後挑戦したいこと
ここまで、競争力の源泉は意思決定の質と速度で、それらをFP&Aは財務的な側面から支えるロールだと書いてきましたが、正直まだまだ進化の余地があると感じています。
1つがFP&A Dataの民主化です。
意思決定の質と速度を最大化するには、究極、社内の各メンバーがFP&A的なマインドセットを持って自律的に判断を下せるようになることだと思っています。これまでもアドホックで社内メンバー向けの勉強会などを実施してきましたが、今後はFP&AのDataをより理解しやすい形(ローコンテクスト)でよりアクセスしやすい形で社内に開放できるようデータ整備を進めていこうと思います。
おわりに
そんな10Xでは日本の小売業界に非連続な改革を一緒に起こしてくれるメンバーを募集しています!採用ページもぜひご覧ください。
明日はデータプロダクト部(Stailerの核である商品マスタを作っているチーム!)の𠮷田(ysdyt)さんが記事を公開する予定です!お楽しみに👋