ぼくらがカレーを食べる理由 〜第二話〜
ぼくらがカレーを食べる理由 目次
第一話 プロローグ
第二話 バンド会議
第三話(最終回) ひとりじゃない
第一回バンド会議
2017年9月某日、ぼくらは新宿に集結した。第一回バンド会議を行うためだ。
タイショウは遅れてくるとの事で、ぼくとフジイくんとで先に始めることにした。
確か二人の時は、アヴィシャイ・コーエンというイスラエルジャズの重要人物の話をしていたと思う。ぼくらはいつも通り意気投合していた。この時、ぼくとフジイくんはバンドをやるつもりで来ていたのだから、音楽の話に花を咲かせて当然だった。
アヴィシャイ・コーエンのおすすめ動画(8:00以降が特におすすめ)
そんなアヴィシャイの話をしていると、タイショウが到着した。
3人が揃って、すぐにわかった事がある。
タイショウはおそらくバンド活動にそれほどノリ気でない事だ。
どういうバンドにしようか?という話が始まると、彼はすぐに遮った。
無名の人達がバンドを組んだ所で誰も喜ばないと。
ぼくとフジイくんは、ただ趣味でバンドをやりたかっただけなのだが、タイショウは少しでも注目を集めるバンド活動を視野に入れているようだった。そうでなければ活動する意味がないと。
(意識高いなぁ..)
彼は語りだす。
タイショウ(以下タ)「1人1人が何かで知名度を持っていないと、誰も喜びません」
タ「まず個々で活動をして有名になりましょう」
タ「お二人は何がやりたいですか?今日はそれを一緒に考えましょう!」
(ん?やりたい事?どういう事だ..?)
タイショウは真っ直ぐな目をして、疑いのない言葉で語りかけてくる。その姿はまるでメンタリストDaiGoのようだった(実際に顔が少し似てる)。ぼくもフジイくんも彼の圧に押され、意見を聞き入れることにした。
やりたいこと会議
というのも、フジイくんには元々やってみたい事があったようだ。それは「場をつくる」事らしい。
(場をつくるってなんだ..?)
たしか、ネットワーク理論?だっけな?そんな感じの事にハマっているようで、10人友達がいて、さらにその10人にも友達がいれば、1人で100人に影響を与えられる。その中には必ず影響力を持っている?..ハブになるような人..?スゴいやつがいて?..みたいな?話だったような気がする(全然違かったらごめんね、フジイくん)
文章にしてみるとヤバい臭いがプンプンしてくるが、要は人とつながりって楽しくやりたいって事なんだと思う。フジイくんはコミュ力は抜群なんだが、創作活動においては人と共同作業するのが苦手だった。それを色んな人を巻き込んでやりたくなったんだと思う。なのでフジイくんはサークル活動や誰かに会いに行ったりの活動に力を入れていきたいとの事。それが「場をつくる」という言葉の意味らしい。その宣言通り、数ヶ月後フジイくんは会社の仲間と共にサークルを立ち上げたし、初見のジャズ好き青年とジャズ喫茶に行ったらしい。すごい!
タイショウのやりたい事は「LINEスタンプをリリース」する事らしい。彼はいくつかキャラクターを考えていて、それが世の中にウケると信じていた。
実際にその後、彼はLINEスタンプをリリースしたのだ。偉い!タイショウが作ったLINEスタンプ「もくもくま」。良かったら使ってあげてください。
んで、最後にぼく。やりたいことなんて一つもない。何にもない。
カワカミ(以下、カ)「何をやればいいかなぁ..?もう誰か決めてよぉ。その通りに従うからさぁ..」人任せな発言を繰り返していた。
すると、フジイくんが
フジイくん(以下、フ)「川上さん。昔カレンダー作りたいとか言ってたよね?カレンダーは?」
そう。ぼくは昔、グラフィックデザイナーの植原亮輔さんや葛西薫さんに憧れていて、彼らが作るセンスの良いカレンダーに興味を持っていた時期があったのだ。
カ「いやぁ、あの時の自分はどうかしてた。もうその気持ちはどこにもないんだ」
するとフジイくんは続けてこう言った。
フ「実は前々から思ってたんだけど..川上さんの強みってさ..料理が得意な事だと思うんだよね」
フ「これはさ、とんでもなく強い事だと思うよ!」
そう、過去にぼくはイタリア料理店で5年ほど修行していた時期があったのだ。タイショウもこの意見には賛同していた。
カ「料理?じゃあライブ中に、1曲の中で1つの料理を作りあげるパフォーマンスをするとか良さそうじゃない?」
まだ「バンドをやる」という本筋は失っていないのだ。
しばし皆、頭を捻る..
ぼくの天職
カ「そう言えば俺さ。この前、会社でcakes note Nightっていうイベントをやったんだけど、そこに水野仁輔さんっていうカレー界のスーパースターが来てさ。その人のカレーを販売する役をやったんだよね」
カ「お客さん、めちゃくちゃ笑顔でさ。お金もらいながら、ありがとうって直接感謝されるんだよ」
カ「カレーをよそって渡してるだけで最高の気分になれるんだ。これが俺にとってのライブなんじゃないかって思ったね」
カ「カレーをよそって提供する。これが俺の天職で間違いないと思うんだ」
タ「良いですね!カレー!!それでいきましょう!」
タ「ぼくは前から、川上さんの綺麗なデザイン好きでした」
(え?照れるわね///)
タ「カレーとカレンダー。合わせてカレーンダーでどうですか?」
タ「毎月違うスパイスやカレーのグラフィックでカレンダーを作るんです!」
タ「いやぁ、カレーンダー..キャッチーだなぁ!我ながら良い名前考えたなぁ!」
タ「これでいきましょう!!決まりですね!次回までにラフをA3でプリントアウトして見たいなぁ」
(おいおい、なにか違くないか?しかもプリントアウトって..)
26才の青年は無邪気にアイデアを広げる。その様はどこか暴力的でさえあった..。その時点で、カレーのグラフィック付きカレンダーを作る意志はなかったが、否定するのも面倒なので話はなんとなく合わせておいた(すまん)。
夜の空と本当の気持ち
気持ちを整理しよう。ぼくはカレーのカレンダーが作りたいんじゃない。カレーを作りたわけでもない。ただカレーをよそってお客さんを笑顔にしたいだけなのだ。そのための手段としてカレーは、そのうち作らなくてはならないだろう。
今でもイベントの時を思い出すと、気持ちがエキサイティングになってくる。さっきも言った通り、カレーをよそう事がぼくにとってのライブなんだと思う。帰り道そんな事を考えながら帰った。
↓写真はイベントの様子。カレーをついでいるのが川上
出典:note
イベントの帰り道につぶやいたツイート↓
バンド会議の帰り道につぶやいたツイート↓
明日の朝にカレーをよそいたい気持ちが変わっていなければ、とりあえずお昼にカレーを食べに行こう。それが今の自分にできる事だ。そんな事を考えながら眠りにつく。
こうして、第一回バンド会議は幕を閉じ、ぼくは「カレーに凝る」事になった
次回、真のカレーンダー誕生とカレーに対する苦難と葛藤を綴ろうと思う。12月25日月曜更新予定です!お楽しみに!
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第一話 プロローグ
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第三話(最終回) ひとりじゃない