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素敵な靴は、素敵な場所へ連れていってくれる。  14

どのくらい時間が経ったのだろうか、ドアが開く音がして、有美は、はっとして目が覚めた。 

「ただいま・・・・あっ、ごめん、寝ていたんだね、おこしっちゃた?」
 そういって、拓海が部屋に入ってきた。有美はびっくりするように、起き上がると、
「今何時?」寝ぼけたような声で聞くと、 
「もう、十一時半だよ・・・・」と、彼が答えた。
疲れていたのか、あのまま眠ってしまったらしい。
「遅かったね・・・・・飲んできたの?」
「ああ、小谷たちと、飲んできた・・・・」
小谷というのは、同じ劇団の人間である、有美も数回会ったことがある。
 拓海は、そう言うと有美のすぐ横で着替えだした、暑かったのかシャワーを浴びるらしい。
「遅くなるなら、ちゃんと、連絡くらいいれてほしい・・・・」そう有美が言うと、拓海は気のない声で、ああ、とだけで返事をした。
 有美は、ベッドから降りると、少し空腹を覚えた、着替えている拓海に向かって、なんか食べると聞いてみると、拓海は、無造作に、いらないとだけ答えた。


「前にも言ったじゃないか、このデータは必要ないって・・・同じことをあまり言わせないでくれ、互いに忙しいんだからね・・・」
 依田はそういうと、それだけ有美にいうと、視線をパソコンの方むけて、書類の束を投げるように突き返した。
 有美は、立ったまま、すみません気を付けますと一言だけ言うと、ゆっくりと自席へと戻った、向こう側の席に座っている紗季が、じっと自分を心配そうに見ているのが、わかった。
 有美は、突き返された書類を再度、自分のパソコンでチェックしていく。
 もう何回目だろうか、依田にこのように注意されるのは。
 初めの指示通りデータを持っていくと、違うといわれる、有美してみれば、依田が言ったとおりに仕事をしているだけなのに、なぜかしら途中から指示内容が違ってきている、それでいての変更された内容には、有美には知らされてはいなかった。
再度有美は依田の方を見る、細い目に銀縁の目が目をかけて、その意地悪そうな薄い唇をゆがめるようにして、パソコンに向かっている。
 他の社員たちも、有美が依田に注意を受けている間は、みんな「またか」みたいな顔をして二人を見ていた。
 有美は、さっさと修正したデータを作成すると、軽くチェックすると、まるで、さっき投げ返された書類を、依田に投げ返すようなつもりで、依田のパソコンへデータ転送する。
 それが終わると有美は、席を立ってパウダールームへ向かった。
 トイレへ入ると、有美はまっすぐに、大きな洗面台の鏡の前に立った。
 自分の上半身を鏡に映す、今朝メイクしたときに少し、ファウンデーションの、のりが悪かったのか、眼の下に少し隈が出てきている、いつも疲れたときに出てくるやつだ。
 少しだけ、メイクを直すと、大きく深呼吸して、鏡の中の自分に、「がんばれ!」と声をかける。有美は、鏡の中の自分に少し元気をもらえたような気がした。


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今宵も、最後までお読みいただきありがとうございました。



現業を離れて、管理職になると職場の小さな問題まで、目が行き届か

なくなります。自身の反省もこめて・・

働いている、彼女たちが気持ちよく、過ごせるよう、細かとこまで

常に配慮が必要ですね・・・

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