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素敵な靴は、素敵な場所へ連れていってくれる。 20
もともと、夏休みで少ない人数しか出社していない大津のセクションでは、「新参者」の有美も好奇の目で見られることなく、皆気軽に有美に声をかけて帰っていく、その人流に逆らって、紗季がやってくるのが見えた。
「どう?新しい職場は?」と、
「快適だよ」
「もう帰れるの?」
「うん、もう終わるよ」
そう言い終わると、有美は帰る支度して、二人してオフィスを出た。
地下鉄の駅へ向かう途中、西日がひどく二人を照らした、紗季が手で顔に当たる日差しを避けるようにして前を見ながら、
「しばらくは、あそこにいるんだって?」と聞いてきた、
有美は、驚いたように、何で知ってるの、と聞き返すと、
「さっき、大津さんに聞いたんだ・・・・」と答えた、有美が上に行ったあと、大津が別件で、紗季のいるフロアに来た時に、直接聞いたらしい。
爾来、依田は、大津に言われたことが、少しは効いたのか、有美だけはなく他の社員たちへの、愚痴や注意も今日は、ほとんどなかったと、紗季はそう言った。
「けど、よっかたよ,ほんと,今日だけはどうなることかと、心配したよ」
さすがの、紗季でも、今日の依田の剣幕には、すこし驚きを感じたようだ。
「部長って、前から私と課長が、折り合いが悪いこと知っていたのかなぁ・・・・」
と、有美が不思議そうに話すと、
「さぁ、どうだろうねぇ、けど大津さんって仕事でもなんでも、凄く気配りが効く人だからね、ひょっとしたら、そうかもしれないね・・・・」
社外では、社長以下誰一人として敬称なんてつけて呼ばないくせに、紗季は大津にだけは、「さん」付けで呼ぶ、よほど以前の彼の仕事ぶりが、紗季には印象的だったらしい。
地下鉄の入口まできて、やっと二人は、夏の日の西日から解放された。
「一度、部長にきいてみようかなぁ・・・」
階段を下りながら、有美がそう呟くと、
「何も聞かなくてもいいじゃない、大津さんは全部分かった上での、今日の判断なんだし、ある程度先も見越しているじゃないかなぁ、どんなこと依田と話したかは知らないけど、今は、部長の好意に甘えとけば、いいんじゃない」
そういうと紗季は、いつもと違う路線の方と向かう、
「あれっ、今日はどっか行くの?」と有美が尋ねると
「うん、週末だし、彼と待ち合わせ、なんだ・・・・」と笑顔で答える、そうか今日は金曜日だったんだと有美は思い出した。
「じゃあね、お疲れ」と互いに言って、二人は別れた。
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