三菱電機の検査不正問題-報告書を読んで-

報告書の中に以下の原因、真因の指摘がされている。

まずもって、工場という閉鎖的な組織の中で「正しいことを正しい」と言えない環境があったこと。

そして、それを支援し、かつモニターするコーポレート組織がなかったこと。

なにより、上記を仕組みとして作り、経営者(CEOやCFO、事業責任者)がその役割をはたしていなかったこと、ということだろう。

「原因背景等(直接的な原因)」
• 従業員の間に、規定された手続(規格への準拠であれば、規格に忠実に従った適正な検査)により品質を証明するという姿勢が徹底されておらず、「品質に実質的に問題がなければよい」との正当化が行われていたこと
• 本来牽制機能を果たすべき品質部門が製造部門の傘下にあるなど独立性が確保されず、質の点でも量の点でも脆弱であったこと
• ミドル・マネジメント(特に現場に近い課長クラス)が日々多忙を極め、現場と経営層との結節点としての役割を果たせない状態に追い込まれていたこと
• 本部・コーポレートと現場との間に距離・断絶(コーポレートは現場を支援し、一緒になって考え、解決してくれるという実感を持てていなかったという事情)があったこと

「直接的な原因を生み出した真因」
• 工場・製作所といった拠点単位の内向きで閉鎖的な組織風土が存在
• 独立性の高い事業本部制における水平展開の難しさ、コスト増となる施策へのディスインセンティブ
• 品質を第一にするとの経営陣の決意があったにもかかわらず、そのための環境整備不足や従業員に対してその決意を伝える施策不足、品質点検施策のルーティン化など、経営陣の「本気度」に課題があったこと

特に仕事柄、「本部・コーポレートと現場との間に距離・断絶」というのは非常に気になる。

日本企業は全体的にコーポレートの機能が弱いといわれる。それは事業の自主独立を重んじるという一見聞こえはいいが、逆に言うと放任的な管理の仕方によるものだろう。

よく遠心力(自由にやらせるところはやらせる)と求心力(管理するところはしっかり管理する)のバランスをとることが重要と言われるが、遠心力ばかりで経営者を含め本社としての機能をはたしていなかったことが最大の要因ではないかと思う。

最近地政学を勉強していて、日本は歴史的にも組織として別組織をマネジメントする際には、
・自分と同化させるか (直接投資の海外工場)
・全く放任するか (戦時中の陸軍、買収先の海外企業)
のどちらかで、英国のような同化を求めず現地人を登用しつつも最低限の仕組みで管理する、というやり方が苦手だったといわれる。

日本的マネジメントの特徴について考察していきたい。

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