SIerと大企業のJV/パートナリング
SIer×大企業のDX推進目的のJV、あるいは戦略的パートナーシップの構築が最近増えてきた。目立つのはアクセンチュアだが。
21/9:AC×クボタ(戦略的パートナーシップ)
21/8:AC×中部電力(協業)
21/4:日本IBM×JTB(出資比率(65/35%))
21/4:AC×住友化学(20/80)
21/2:AC×資生堂(-)
20/10:富士通×ファナック×Nコム(40/30/30)
20/6:日本IBM×みずほFG(65/35)
19/11:AC×味の素(33/67)
18/8:AC×関西電力(20/80)
17/2:AC×KDDI(15/85)
企業側にとっての視点
企業側にとって、昨今のテーマはDX、とりわけデジタルで自社の既存資産を活用しながら新たなビジネスを作っていくというところだろう。
これが自社リソースだけでできればいいが、自社に染み付いた人間だけではそういう発想も出てこないし、発想したとしても内部の文化のしがらみなどで実行に至らない/仮説検証の仕方もわからないなどだろう。
かといって、コンサルを数か月雇っただけでは、コンサル側にもDXビジネスのネタを立案できるとも限らないし、何より実行は任せた、とされても実行できない。
なので、ある程度の期間をかけて、不足する人材を採用するような形で一定期間コンサルに常駐してもらい、人材育成も併せてやってもらうというスタイルをとる企業が多いのであろう。
コンサル側にとっての視点
これは、JVと戦略的パートナーシップでは少し異なりそうだ。
JVの場合、投資を伴うため、その業界の知見を獲得して横展開するなどの個別プロジェクト採算以外の観点でのメリットを考えてのことになるだろう。あるいは、共同運営型で収益を得た部分を自社の収益とするといういわゆる投資型のビジネスとしてのとらえ方もある。(コンサルティングは売り切りビジネスなので、こういった別のビジネスモデルにうまみはある)
戦略的パートナーシップは、一見通常の長期プロジェクトをやるのと変わらないようにも思える。ただ、会社側の全体像を見ながら改革に伴走できるというお互いのコミットがある点は異なるのだろう。
このクボタの例でも以下3点がパートナーシップの狙いとして挙げられていた。うち、①や③はDXコンサルやSIerでもできなくはなさそう。②の人材育成にもコミットというところが中長期で検討が必要なのだろう。
まあこれを1社でできるアクセンチュアはさすがだね。
あと、アクセンチュアが提供するDX人財育成プログラム、という人材育成系のプログラムを持っているところは一つ強みだな。
①DXとサステナビリティを掛け合わせた新たなソリューションの協創
クボタは、1890年の創業以来、食料・水・環境に関わる社会課題の解決に取り組んできました。今後、これらのクボタの事業領域に、アクセンチュアが培ってきたDXにおける知見と実績を組み合わせることで、社会のサステナビリティ向上に資する新たなソリューションを創出していきます。
②クボタ全社で取り組むDX施策の企画、およびその実行基盤の整備と人財育成
世界約120か国以上でビジネスを展開するクボタグループ全体で取り組むべきDX施策の企画立案を行います。またこれらDX施策の迅速な運用を支えるサービスプラットフォームとして、クボタグループが持つさまざまなデータを一元管理、活用が可能な基盤を整備します。 さらに、アクセンチュアが提供するDX人財育成プログラムを活用し、クボタの将来を担うDX人財も育成していきます。
③クボタのグローバルビジネスを支えるセキュアかつ柔軟な運用体制の構築
クボタグループが持つ200を超えるレガシーシステムの刷新ならびにMicrosoft Azureのクラウド環境への移行を加速させます。また、セキュリティリスクに対して迅速かつ適切な対応を可能とするCSIRT(Computer Security Incident Response Team)をグローバルでさらに強化し、ビジネスの成長に対して攻めと守りを両立させる環境を構築します。
まとめ
DXの時代に企業側ではそれを企画・立案・実行する人材が不足している。
それを調達しようと思うと、外部採用か育成しかないが、外部採用はなかなか難しい(セブン&アイなどは外部から数百人単位で採用しようとしているが)
となると育成だが、自分たちに育成ノウハウもない。コンサルをポイントで使うというよりは、不足するスキルを埋めてもらいつつ、中期的目線で人材育成を期待するという形に企業側も変わりつつあるのかもしれない。
DXといってデジタルをいれるだけではだめ、ITであればそれを保守・アップグレードしていく人材も必要だし、そもそもDXで中の人の気持ち・文化が変わらないと変革は成功しない。その点では”人”を変えないと変革は継続しない。
外部から支援する立場として、こういった形で中期的に人材育成を含めてコミットしていくというのが新しい形になっていくのだろう。
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