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資生堂とアクセンチュアのJV

アクセンチュアのビジネスモデルについてコンサル業界で語られることがある。確かに、戦略とIT部隊の融合もうまくいっているように見えるし、さらにBPOでもグローバル規模をもっていて、ブランディングもうまい。

さらにここ最近ではこのような事業会社とJVを作り、共同経営型で事業を行っていくというスタイルをとっている。

お互いの狙い

資生堂側のコメントとしてはこのようなところ

将来構想を議論するなかで、アクセンチュアと戦略的パートナーシップを締結したほうが、短い時間でより効果が得られるのではないか
資生堂がアクセンチュアを選んだ理由は、技術面ももちろんのこと、デザイン、クリエイティブ、テクノロジー、マーケティングの専門家を多数抱えるグローバルなケイパビリティだという。「メディアからデジタルマーケティングまで幅広くカバーしており、資生堂がやりたいことを考えたときに、JVとしてアクセンチュアにもコミットしてもらうことで、資生堂が目指すゴールに向かってスピーディに進めるのがよいのではないかと考えた」

一方のAC側はこちら。コンサルだけだと全般的な業務改革が難しいこともあると。

「デジタルは様々な課題が複雑に絡みあっており、今までアクセンチュアが行ってきた業務支援だけでは大きな改革は難しい部分があった」と振り返る。
「2022年に150周年を迎える資生堂は、伝統を持つメリットもあればデメリットもある。DXを実現するには、スピードが不可欠だ。会社全体をどう変え、スピーディに舵を切り、BX(※)を実現することを考えたときの1つの解がJVだった」

アクセンチュア側は戦略から実行まで結果にコミットして実行することで、化粧品業界の知見含めた実践的ナレッジが蓄積されることになる。

そのことによって、少なくとも似た消費財系の業態の、CX、データ戦略等の領域の提案・実行に深みが出るだろう。

さらに、JVによって蓄積した資産を、そのJVによって外販するという新名田ビジネスにもつなげていく可能性もある。

見えてきた実態

資生堂IBは、資生堂とアクセンチュアからの出向や新規採用などで250名ほどの社員・スタッフで構成されている。資生堂からは、資生堂や資生堂ジャパンのIT・デジタル担当者、そしてオムニエクスペリエンスを体現する美容部員(BC)たちが集った。

DX本部には、資生堂ジャパン株式会社のCDOを務めるスギモトトシロウ氏も、CDOを兼務しながら資生堂IBの取締役、DX本部本部長として出向した。スギモト氏が率いていたデジタル人材はほとんど資生堂IBに出向し、このDX本部では、リアルとデジタルを融合したオムニエクスペリエンスを通じて、新しい顧客体験を作り、新しい価値を生み出し、購買体験にいかにつなげていくかを担当する。そして、このチームに30名弱のBCが、顧客との新しいエンゲージメントスタイルを作っていく第一期生として出向してきた。

アクセンチュア側はこういったフォーメーションのようだ。コンサルタントにとっても通常のコンサルとは違って、事業会社の一員として腰を据えて取り組めることにメリットがありそうだ。

アクセンチュアからは、枩崎氏が属するアクセンチュア インタラクティブ本部のほかに、ストラテジー&コンサルティング、テクノロジーなどのさまざまな部門から多くのメンバーが参集している。「アクセンチュアの持つケイパビリティを総動員したBXプロジェクトとしては、かなり大がかりなチームである」(枩崎氏)

そこには枩崎氏のように資生堂IBに出向しているメンバーもいれば、通常のコンサルティングプロジェクト同様にアクセンチュアに在籍したまま、プロジェクトメンバーとして参画するケースもある。

そして、資生堂IBのミッション・ビジョン・コアバリューを以下のように定義したようだ。

・ミッション「すべての人生を健やかでリッチに。デジタルとテクノロジーを駆使して、一人ひとりの明日のビューティー体験を創造する。

・ビジョン「原点を大切にし、デジタルとテクノロジーのプロフェッショナル集団として革新的なビューティー体験を共創し続け、Global No.1 Data Driven Skin Beauty Companyへの変革をけん引する」

・コアバリュー
● Consumer value centric お客さまの価値を第一に
● Professional 専門性高く
● Flat society with ownership オーナーシップをもち、思ったことが言える関係を築く
● Be quick and learn まず動き、ラーニングを得る
● Empathy 共感し、理解し、称える
● FUN ワクワク感を基準にして働く

さらにこれを基にIT人材として16の人材像、デジタル人材として14の人材像を作りこんだとのこと。2021年7月中旬に全社員に対してスキルアセスメントを実施し、この結果にもとづいて、現状のレベルをあげていくような体系的な育成計画とプログラムを進めているようだ。

いやー、自身と領域は違うがなかなか参考になる。

変革にあたっては、どの単位であれ、まず以下のようなステップで進める必要がある。自身の取り組んでいるファイナンス・人事の領域でも大いに実践したい。

1.ビジョン、ミッション、行動基準を決める

2.それに必要な人材像を定義する

3.スキルを可視化し、育成計画を作る 

4.育成実施は外部コンテンツ(コンサル等)も有効に活用する

5.不足する部分は外部採用や外部コンサル活用などを行う

資生堂の方もコメントしているが、こういう活動を通じて最終的には社内に人材をもって、スピードを上げるということが企業の競争力につながるということなのだろう。JVもその内製化の一つの手段ということだろう。資生堂にとってはコンサル契約よりリスクをとった決断だったが、スピードを買ったということだろう。

「今の時代、内製力をあげていかなければいけない。外に行けば豊富に人材がいるかもしれないが、何かやろうとすると、提案をもらって評価して契約を締結し……と手順も時間もかかる。お客さまのニーズや変化に迅速に対応していくには、リスクを自社でとりながら、スピード感よく物事を進める必要がある。そのためにもある程度のことを内部でできるようにしておくことが必須だと考えている」(高野氏)

ローラ メルシエの成功は、企画、インフルエンサーの起用から、集客、当日の運営に至るまで、すべて社内制作したところにある。自分たちの想い、熱量がそのまま顧客に伝わるようにするためには、内製化が必要だといち早く見抜いて実行に移してきた。


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