![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/149306194/rectangle_large_type_2_9ba0a93081c7f8590a1d51d9a525bbf6.png?width=1200)
Photo by
daidai1008
詩小説『引越物語』㉗ブルーのタータンチェック
前回のお話です。
よろしかったら、こちらからお読みください。
この線から向こうは、詩小説『引越物語』の第27話です。
傘をお持ちのかたはさして、濡れても構わないかたはそのまま、お入りください。
雨だ。
ちょうどいい。
もっともっと降ってくれ。
そうすれば、あの子を見つけられるかもしれん。
小さい頃から、濡れるのが苦手だった。
雨が、きっと麻美を何処かへ留めてくれるだろう。
まだ小学校へあがったばかりの麻美を置いてけぼりにしたのは、オンナにのぼせきった俺だ。
探す資格なんてないと分かっているよ。
親らしいことなんて、殆どしてあげられなかったよな。
絵本と、水族館と、傘くらいかな。
記憶のカケラしか手元に残ってないんだよ。
今日も着ているタータンチェックのシャツ。
これは、麻美と母さんからのプレゼントだ。
何年も大事にしまってた。
麻美と会えそうな日に着ている。
そうすると、本当に会えたからね。
お守りみたいなもんだ。
麻美がレストランで頑張って働いている間、何度も話しかけてすまなかったね。
12年ぶりに、麻美の声を聴くのが嬉しくて嬉しくて。
レストランのみなさんに大事にしてもらってるのを見るのは、とても幸せだったよ。
赤の他人がここまでしてくれているのに、俺は無力だ。情けないよ。
母さんが心臓を悪くして倒れたんだ。
だから、頼む。
俺を一生無視して生きても構わないから、母さんのそばにいてほしい。
今、何処にいるんだ!!!
次のお話です。
こちらは1話から最終話をおさめたマガジンです。
いいなと思ったら応援しよう!
![上湯かおり](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152819321/profile_b8b11df42604e9b529d60875ee4ab78e.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)