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詩小説『引越物語』㉘待ちぼうけ

前回のお話です。良かったら、こちらもどうぞ。
       
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「いらっしゃいませ。」

窓際の席が空いていて良かった。


「店長オススメのコーヒーを。」

建物のつくりこそ違うが、麻美が働いていたレストランに雰囲気の似たカフェ。

最近は、ここで時間を潰すことが増えている。


あれから一ヶ月。
麻美の行方はまだわからない。


俺のせいで離婚したツケだ。
娘の交友関係を全く知らない。

かつての親戚に片っ端から電話をかけた。みな話をろくに聞かず、俺だとわかると早々に話を切り上げてしまう。つながらない電話も多かった。

あの土地から離れて12年も経った今、アイツと麻美がどんな風に生きてきたのか、俺はなんにも知らない。



大家からメールが来ている。
もしや麻美が帰って来たのか!
俺の連絡先を伝えておいて正解だったな。


お世話になっております。

ご家族の遺品の整理に来て頂きたくご連絡しております。
ご存知かと存じますが、奥様がお亡くなりになりました。

御子息や御親戚と連絡がつかない為、失礼ながらメールにてお知らせした次第です。

当方の連絡先をお伝えいたします。

連絡先
電話 078-362-△△△△
メール ◯◯◯@gmail.com



店内には、青春の影が静かに流れていた。




#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

一話から最終話まで、こちらのマガジンで読むことができます。各話はとても短い物語です。隙間時間に少しずつどうぞ。     
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28話の参考文書 及び 参考サイト
⚫︎国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
⚫︎第八行政書士事務所「孤独死•自殺が起きた場合に家主や管理会社が取るべき手順」

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上湯かおり
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