HDMIとDisplayPortの規格を網羅的に理解する


パソコンやテレビ、ゲーミング機器などで映像を出力するとき、「HDMI」と「DisplayPort」という2つの規格を耳にしたことがある方は多いと思います。それぞれにバージョンがあり、解像度やリフレッシュレート、オーディオ機能などが異なるため、正しく理解しておくことで機器選びや接続の失敗を防ぐことができます。
この記事では、HDMIとDisplayPortの各バージョンや特徴、選択時のポイントを表を交えながらわかりやすくまとめました。


1. HDMIとは

1-1. HDMIの概要

HDMI(High-Definition Multimedia Interface)は、主にテレビやレコーダー、ゲーム機といった家庭用AV機器で広く採用されているデジタル映像/音声のインターフェイス規格です。1本のケーブルで高品位な映像と多チャンネルオーディオを同時に転送できるため、配線をシンプルにできる利点があります。

1-2. HDMIのバージョン一覧

以下は代表的なHDMIバージョンとその特徴をまとめたものです。

バージョン 発表年 最大伝送レート※ 対応解像度・リフレッシュレート 主な特徴・追加機能 HDMI 1.0 2002年 4.95Gbps 1080p / 60Hz 初期仕様(Blu-rayやDVDなどHD映像の伝送を想定) HDMI 1.1 2004年 同上 同上 DVDオーディオのサポート HDMI 1.2 2005年 同上 同上 Super Audio CD(SACD)のOne Bit Audioなどをサポート HDMI 1.3 2006年 10.2Gbps 1440p / 60Hz (実質的には1080pメイン) Deep Color(最大48bit)やx.v.Colorなど、広色域への対応 HDMI 1.4 2009年 同上 4K(3840×2160) / 30Hz 3D映像、ARC(Audio Return Channel)、Ethernet over HDMI(オプション)など HDMI 2.0 2013年 18Gbps 4K / 60Hz (24bitカラー) 4K/60pにフル対応、32チャネルオーディオ、YCbCr 4:2:0など HDMI 2.0a 2015年 同上 同上 HDR10のメタデータ伝送に対応 HDMI 2.0b 2016年 同上 同上 HLG(Hybrid Log-Gamma) HDR方式に対応 HDMI 2.1 2017年 48Gbps 4K / 120Hz、8K / 60Hz (DSC非圧縮時) eARC、VRR(Variable Refresh Rate)、ALLM(自動低遅延モード)、Dynamic HDRなど

※最大伝送レートは理論値です。

HDMI 2.1になると一気に帯域幅が48Gbpsに増え、4K/120Hzや8K/60Hzといった高解像度・高フレームレートの映像伝送が可能となりました。また、eARCにより高音質オーディオの送受信もシンプルに行えます。


2. DisplayPortとは

2-1. DisplayPortの概要

DisplayPortは、VESA(Video Electronics Standards Association)によって策定された映像/音声のインターフェイス規格です。PC用ディスプレイやグラフィックカードで主に採用され、4Kや8Kなどの高解像度・高リフレッシュレート環境に強みがあります。ゲーミングPCや複数のディスプレイを扱う場面で重宝されることが多いです。

2-2. DisplayPortのバージョン一覧

以下に主なDisplayPortバージョンをまとめました。

バージョン 発表年 最大伝送レート※ 対応解像度・リフレッシュレート 主な特徴・追加機能 DP 1.0 2006年 10.8Gbps(実効約8.64Gbps) 2560×1600 / 60Hz程度 初期仕様。PC向けデジタル映像インターフェイスの立ち上げ DP 1.1 2007年 同上 同上 光ファイバーケーブルサポート追加など DP 1.2 2009年 21.6Gbps(実効約17.28Gbps) 4K / 60Hz マルチストリーム(MST)対応、DP 1.2aでAdaptive-Sync追加 DP 1.3 2014年 32.4Gbps(実効約25.92Gbps) 4K / 120Hz、5K / 60Hz、8K / 30Hz 高解像度・高リフレッシュ対応を強化 DP 1.4 2016年 同上 8K / 60Hz (DSC圧縮利用時) DSC 1.2、FEC(Forward Error Correction)などの拡張 DP 2.0 2019年 80Gbps(実効約77.37Gbps) 8K / 120Hz(非圧縮)、16K / 60Hz(DSC圧縮利用時) 超高帯域幅や複数ディスプレイ同時出力などを大幅に強化

※こちらも最大伝送レートは理論値となります。

DP 2.0では、最大80Gbpsという非常に高い帯域幅が特徴で、8K/120Hzといった次世代レベルの超高解像度や高リフレッシュレートに対応可能です。また、USB-Cコネクタを用いたDisplayPort Alt Modeを使うことで、映像とデータ通信、給電を1本のケーブルで済ませられる点も魅力です。


3. HDMIとDisplayPortの比較

HDMIとDisplayPortを用途や機能で比較すると、以下のような違いがあります。

| 比較項目 | HDMI | DisplayPort |
|-----------------------------|--------------------------------------|---------------------------------------------|
| 主な利用シーン | テレビ、AV機器、コンソールゲーム機など | PCディスプレイ、ゲーミング、高リフレッシュレート環境 |
| 最大帯域幅(最新規格) | 48Gbps (HDMI 2.1) | 80Gbps (DP 2.0) |
| 最大解像度 / リフレッシュレート | 8K/60Hz、4K/120Hz (HDMI 2.1) | 8K/120Hz、16K/60Hz (DP 2.0, DSC利用) |
| オーディオ機能 | eARC(HDMI 2.1)などAV関連機能が充実 | マルチチャネル音声対応(AV機器での利用はやや少なめ) |
| 可変リフレッシュレート | HDMI 2.1でVRRサポート | Adaptive-Sync(G-SYNC, FreeSync)など |
| ケーブル形状 / 規格 | HDMI(Type A, Mini, Micro) | DP(フルサイズ, Mini DP), USB-C Alt Modeなど |
| ライセンス料 | 機器メーカー側がライセンス費を負担する場合あり | VESAオープン規格でライセンス費不要 |
| 複数ディスプレイ (MST) | 非対応 | DP 1.2以降でデイジーチェーン接続が可能 |


4. 選択時のポイント

4-1. 接続する機器の用途

  • TVやゲーム機などAV機器での利用がメイン → HDMIがおすすめ

  • PC、ゲーミング用途、高いリフレッシュレートや高解像度が必要 → DisplayPortが強い

4-2. ケーブルや周辺機器の互換性

  • HDMI 2.1を活かすならUltra High Speed HDMIケーブルが必要です。

  • DisplayPort 2.0対応のモニターやケーブルはまだ普及が始まったばかりなので、対応状況をしっかり確認する必要があります。

4-3. オーディオ機能

  • AVアンプやサウンドバーを活用したい → eARCをサポートするHDMI機器が便利

  • PC向けの音声出力はDPでも可能ですが、AV機器での実装は少なめです。

4-4. マルチディスプレイ・拡張性

  • DisplayPortのMST機能を使えば、1つのポートから複数のディスプレイをデイジーチェーン接続できます。多画面作業やビデオウォール構築など、拡張性を重視する場合に便利です。


5. まとめ

  • HDMIは家庭用AV機器の標準インターフェイスで、最新の2.1では4K/120Hzや8K/60Hzに対応するまで進化しています。とくにeARCやVRR、ALLMなどテレビ視聴やゲーム体験を充実させる機能が充実。

  • DisplayPortは高い解像度やリフレッシュレートを重視するPCやゲーミング環境に強みがあります。DP 2.0による超高帯域幅やMST、Adaptive-Syncなど、複数ディスプレイを扱うユーザーやプロゲーマー、映像制作者などにとってメリットが大きいです。

  • 選ぶ際は、接続機器の対応バージョンや必要な解像度・リフレッシュレート、オーディオ要件、ケーブル形状などを総合的に考慮しましょう。

以上がHDMIとDisplayPortの規格を網羅的に理解するためのまとめです。今後も4Kや8K、あるいはそれ以上の高解像度ニーズが高まる中、それぞれの規格がどのように発展し、普及していくかに注目すると良いでしょう。新たな機器を導入する際の参考になれば幸いです。

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