【連載】龍城ケ丘問題 何が問題なのか 第2回「令和6年度花水地区住民説明会 ずさんな案内」篇
令和6(2024)年6月1日に、平塚市立花水公民館で「湘南海岸公園龍城ケ丘ゾーン整備・管理運営事業」に関する「花水地区にお住まいの方を対象」にした住民説明会が開催された。今回は、その前月(5月)に発行・回覧された住民説明会の告知ビラの問題点について、詳しく説明する。
実際に回覧されたチラシ
用語解説
・湘南海岸公園龍城ケ丘ゾーン整備・管理運営事業
2013年頃から平塚市が提唱・実施の為に活動してきた事業。平塚市龍城ケ丘の龍城ケ丘プール跡地とその東側の樹林帯地域を開発場所とする。2017年に東側の樹林帯(通称:龍城ケ丘樹林帯)の伐採が計画に盛り込まれてから、市民による樹林帯保護活動・伐採反対運動が展開され続けている。Park-PFI制度により、積水ハウスが龍城ケ丘ゾーン整備後の公園管理者となる。市役所の担当課は「みどり公園・水辺課」。
・みどり公園・水辺課
市立公園などを管轄する平塚市の担当課。「湘南海岸公園龍城ヶ丘ゾーン整備・管理運営事業」の実施担当課でもある。
・花水地区
JR平塚駅・東海道本線の海側(南側)で、平塚市立花水小学校の学区のこと。町としては八重咲町、桃浜町、松風町、袖ケ浜、龍城ケ丘、菫平、黒部丘1番地から9番地、虹ケ浜1番地から12番地を指す。「湘南海岸公園龍城ケ丘ゾーン整備・管理運営事業」の問題では、主に開発における利害関係地域の事を示す。
・江口ともこ
平塚市議会議員。湘南地域の地域政党「無党派党」代表で、会派「しらさぎ無所属クラブ」の代表でもある。
・松本敏子
平塚市議会議員。政党「日本共産党」党員で、会派「日本共産党平塚市議会議員団」代表でもある。
・佐藤ゆみこ
平塚市議会議員。無所属で会派にも所属していない。令和5(2023)年に市議会議員に初当選。
・野崎審也
平塚市議会議員。自由民主党所属で会派「清風クラブ」に所属している。花水地区(菫平)出身の議員で、龍城ケ丘問題において賛成(=開発賛成・伐採賛成)の立場をとっている。
(敬称略)
チラシの問題点
問題1 申し込みはインターネットだけ
この説明会への参加申し込み方法は「インターネットを利用してのみ」であった。なぜネットでの申し込みだけしか認められないのか。この点について、筆者は同年5月15日にみどり公園・水辺課に見解を伺った。回答は、「先着順であるから、申し込み時間が分かる方法としてインターネットを利用している」とのこと。これでは、インターネットを利用していない、または利用できない人に対して、とても不誠実であるとしか思えない。反対運動に参加する地域住民はお世辞にも若い人が多いと言い難く、インターネットを使いこなせない人も多い。特に、反対する地域住民の参加阻止を狙ったような意図を感じた。地域住民全員に、平等に参加申し込みが出来る機会を与えるならば、その申請者が直接みどり公園・水辺課に申し込みに行って、担当者がその人の来庁した時間を申込み時間として、確認すれば良いだけの話であると考えられる。これが、誰も取り残さない社会の実現を目指す、そして市民の為の行政としての責務なのではないか。
問題2 「申し込みは1人1回」の曖昧さ
注意事項に「申し込みは1人1回までとします。1回で複数人の申し込みはできません。」との記載があります。これは、多くの人に誤解を与える、極めて曖昧で危険な文章です。問題1でさらに提起した、「インターネットを使用できない人への対応・対策」についても、同日中に「インターネットを利用できない人は、どうすれば申し込みができるか」と担当者に確認した。担当者の回答は、「そういう方は、申し込みが出来るご家族・ご友人の方に申し込みを依頼して欲しい」というもの。
しかし、よく考えていただきたい。依頼した家族・友人も説明会参加を応募した時、「申し込みは1人1回」の原則に反してしまう。これについて、更に質問を重ねると、担当者は「この文章は2通りの読み取り方が出来ます」「自分の名前で何回も登録されることをやめていただくために記載した。他の方の応募の代行はこの注意事項で禁止されていない」と回答した。これはどういうことなのか。
まず、「2通りの読み取り方が出来る」ことが最初から分かっていたのであれば、市役所側が想定している意図を市民が読み取れるよう、「誤解」が起きないよう、それについての注釈などの文章を記載するべきではないだろうか。公的な文章の中に「曖昧さ」「誤解の恐れ」があるものを、それを認知しながら訂正もせず発表することにとても違和感を覚える。
問題3 「ご家族・ご友人」がいない人は申し込みができない
担当者の回答した「そういう方は、申し込みが出来るご家族・ご友人の方に申し込みを依頼して欲しい」は、更なる問題を孕んでいる。インターネットが使える「ご家族・ご友人」がいない人は、完全に申し込みが出来ない状況に陥るというものだ。例えば、全国的に自治会への加入率も落ちており、すぐ隣の人の家族の名前や顔を知らないという人も増えてきている。そして、かつ家族全員がインターネットを上手く使えなかった場合、本来は享受出来る住民としての権利を、ある意味奪われたような状態に陥る。これは、あくまで住民としての権利の問題であるので、このような想定される層に対する対応方法も記載されているべきであったと考える。これは、住民自治に任せすぎた結果の悪い点だと思われる。
問題4 花水地区以外の人は入れない
そもそも、龍城ケ丘再開発について、その開発に使われるのは「市民の血税」であるはず。なのに、説明会は「花水地区(8自治会)の人のみ」しか入れない。これについても、みどり公園・水辺課の見解を伺った。回答は、「工事の実施方法など、花水地区に直接関係する内容であるから」花水地区の人だけである、というもの。平塚市は、「市民の税金」をこの事業に投入するから、花水地区以外の意見も受け入れていくというようなニュアンスで話を進めていた面がある。これは、所謂「ダブルスタンダード」であり、同時にその主張に沿うならば不適切な住民説明会であったと考えられる。
問題5 個人情報の取り扱いについての記載がない
この文章には、驚くことに「個人情報の取り扱い(プライバシーポリシー)」に関する記載がない。確かに、平塚市の公的な文書であれば、平塚市のプライバシーポリシーが適用されると思う方もいると思う。しかし、このような文書には、「ここで集めた個人情報は説明会以外の用途には・・・」といった、たった一文でもプライバシーポリシーを載せるものではないのでしょうか。市民から集めた情報を、平塚市はどのように扱うのか。疑問が深まるばかりであった。同年5月22日に、筆者がみどり公園・水辺課に、この件について抗議しました。その結果、同日中に申し込みホームページに「提供いただいた個人情報は、平塚市が本事業の説明会のみに使用し、それ以外の目的では使用しません。」の文言が追加された。
まとめ
令和6(2024)年6月1日に行われた住民説明会は、
・申込方法の不備(インターネットのみ)
・本文の曖昧さによる誤解の誘発(また、それの放置)
・申し込みできない人の発生が確実
・市役所側のダブルスタンダード
・個人情報に対する市当局側の扱いの甘さ
の5つの点で、明らかに問題を孕んでいたものであるといえる。
今後とも、筆者は龍城ケ丘問題について厳しく追求していく。
(本記事は、筆者が別名義で記載していた以下の記事を再構成・修正し直したものです)
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