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2050年の平塚の姿は?

皆さん、厚生労働省が毎年出している、「生命表」というのをご存知でしょうか。

これ、各年齢での翌年まで生きている確率、死亡率などを統計的に算出している表なのです。

これを使うと、未来の人口推計ができます。

というわけで、今回は2050年の平塚の姿を見てみたいと思います。

1.2050年までの人口推計

こちらが、私が試算した2050年までの人口推計です。なお、社会増減は一切考慮していないことに留意してください。また、出生数は2022年の15~49歳女性人口と出生数の比率が今後も変わらないという仮定で算出しています。

社会増減が無いと、一貫して人口は減少していくという予想になりました。2045年あたりで20万人を切り、2050年時点では18.7万人程度になっているという計算です。

現在が26万人弱なので、約3割ほど人口が減るということになります。

2.老年人口

65歳以上の老年人口を見てみると、以下のようになります。なお、生命表の都合上、106歳以上は生存しないという仮定での算出になっています。

分かりやすくするため、6万人を最低値としているのに注意

意外なことに2030年代半ばまで老年人口は減っていく推計になりました。これは新型コロナウイルスの影響で、高齢者の死亡率が上昇したためだと思われます。今後もこの傾向が続くかは不透明です。

しかし、それでも2040年代にかけて第2次ベビーブーム世代(いわゆる団塊ジュニア世代)が老年人口に加算されていくために数は上昇に転じ、2041年にピークを迎えると考えられます。

以降は減少に転じて、2050年時点では7.2万人程度になると見込まれます。現在が7.5万人程度なので、現在よりはやや減るだろうという予測です。

一方で、老年人口が全人口に占める老年人口割合は以下のようになります。

ほとんどの期間で上昇を続けて、2050年には38.7%程度になっていると思われます。現在が29.1%なのでだいぶ増えます。

3.従属年齢人口と生産年齢人口の比

従属年齢人口とは、一般的には15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口の合計です。つまり、現役世代ではない人たちの人口です。生産年齢人口はその逆で、15歳~64歳までの人口のことです。

しかし、現在中卒で就職する子はあまりいないので、より実態に近い値を見るため、ここでは18歳~64歳までを生産年齢人口とします。したがって、年少人口は17歳未満です。

この従属年齢人口と生産年齢人口の比を見ると、従属年齢人口1人を生産年齢人口何人で支えているかが分かります。

2022年には1.3人で従属年齢人口1人を支えているのが、2050年にはほぼ1人で従属年齢人口1人を支える必要があるという状態になります。

4.税収と社会保障

税収の予測は難しいですが、ここでは単純に生産年齢人口(ここでも18歳以上)1人あたりの税収を出して、それが変わらないと仮定して、計算してみます。

すると、

  • 2022年 427億円(R4予算)

  • 2050年 277億円(推計)

になるという計算になりました。150億円の減収です。

社会保障の問題を考えると、前回の記事でも書きましたが、日本は社会保険に強く依存しています。この社会保険は「多くの生産年齢人口で、少ない従属年齢人口を支える」というのが仕組みの根幹なわけですが、上記のようにその比率が「1:1」になれば保険としてはほとんど機能しません。

かといって、社会保障を減らすわけにもいかないので、おそらく代替として税金でカバーしようとするはずですが、今回の試算のように税収も減少する可能性が高いです(これは平塚だけでなく、全国でも同様)。もちろん、何らかの増税を行うことで税収を増やすことは可能ですが、そうすれば経済の悪化は避けられず、長期的には税収減のトレンドは変えられないと思われます。

あるいは国債に頼るという手もありますが、日本国民の持つ預貯金総額を国債残高が超えれば、国債を国内消化できなくなるため、国債の不安定性が急激に増大する恐れがあります。

それでも、短期的には国債に頼るほかないと思います。抜本的な解決策ではありませんが、抜本的な解決策をすでにほぼとれなくなっているので、延命措置ですが、国債や市であれば市債などでやり繰りするしかないという状態に追い込まれています。

このため、社会保障は今の状態を維持することは不可能と言わざるを得ません。破綻はしないかもしれませんが、今よりもずっと給付は少なくなり、社会保障機能を実質的に失ったようなかたちになるのではないでしょうか。

5.2050年の社会

社会保障がその機能を失った場合、所得の再分配が上手くいかなくなる可能性が高いです。

日本の所得の再分配は社会保険に大きく依存しています。令和2年版 厚生労働省白書(P108)によると、2017年時点で税による再分配への貢献度が4.8%、社会保険による再分配への貢献度が30.1%です。

しかし、先述のように2050年には社会保険を運営するのはかなり厳しくなっており、給付の大幅な削減などが図られている可能性が高いです。

所得の再分配度を示す指標にジニ係数がありますが、日本は所得再分配後でも0.37ほどで先進国では高い(=格差がある)部類にあります。0.4以上になると格差による社会不安から治安の悪化などが見られると言われますが、社会保険が機能低下すれば、所得再分配も機能低下するため、この0.4付近をうかがう状態になるかもしれません。

おそらく2050年ごろには、今よりも長く働く必要があるでしょうし、年金などの受給年齢も引き下げられると思われます。

加えて、医療保険や介護保険の限界により、給付水準は低下し、その負担は現役世代が負うことになります。

一方で、高齢者が長く働くため、若年層の働き口はなかなか増えず、税金や社会保険料の負担はますます高まり、治安悪化も懸念されます。

若い人にとっては希望がまったく感じられず、少子化は今以上に進む可能性が高いです。なお、一人あたりGDPが低下し、おおよそ1万ドル(米ドルPPP換算)を割り込むと統計的には貧乏人の子沢山状態になるため少子化は解消するかもしれないのですが、現在3万ドルなので、そこまでは2050年でも割り込まないように思います。

そして、一部の権力者やそれに紐づくことができている人たちと、そうでない人たちの間の格差は今以上に広がり、衣食住が十分に満たせなくなる人が増えるでしょう。ですが、困った人たちが政治を変えようと立ち上がる可能性も低いように思います。「権威に従う能力」はすこぶる高いですが、「自律」した人材が少ないため、「じゃあどんな社会にしたいの?」に答えられないためです。

そうこうしているうちに、そのような人たちの不満を代弁し、色々な意味で暴力的に支持を集めるポピュリストが出てきて、対外戦争でもするか、経済的に破綻するかは分かりませんが、平和で安全な社会は壊れてしまうでしょう。

まあ、これは悲観的に過ぎるかもしれませんが、そう無理な想定でもないと思います。

いずれにせよ、2050年はそう遠い未来ではありませんが、今よりもっと険しい社会になっているでしょう。

そして、これを変える手段はほとんどありません。人口推計は大きく外れることはありませんので、これはおおよそ「確定した未来」です。私の粗い推計と政府がやる推計に大きな乖離があるわけではありません。

唯一変える方法があるとすれば、移民の解禁ですが、この国では困難でしょうし、移民希望者に来るのをおすすめしません。排外主義がはびこる社会で、経済規模も縮小していくわけですから、あまりいいことがありません。そんなこと言わなくても、「選ばれない国」になっていっているのは間違いないので、移民政策も困難です。

技能実習生は事実上の移民政策ですが、数々の問題を抱えており、実際には過度な低賃金労働力となっているのが実態で、今後国際的な労働力獲得競争が高まれば、減少していく可能性が高いです。現行の技能実習生制度は廃止の方向ですが、新制度がこれらの問題を払拭できるものになるかと言われると、今の政府や社会の認識では難しいと考えざるを得ません。

少なくとも「今の社会システム」は2050年には維持不可能になっており、我々が現在享受している社会からの恩恵は途絶し、むしろ負担となっているでしょう。日本からの出稼ぎ労働者が出現していも、何ら不思議ではありません。

「どうやったら社会を変えられるか」よりも「どうやって生き抜いていくか」を考えなければならないフェーズにこの国は突入しているのではないでしょうか。

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