P2P保険
P2P保険とは、SNS等により形成された会員(保険契約者)同士のコミュニティが、事前、あるいは事後に、一定の事由が生じた会員のためにお金を出し合う(事前にお金を集めていれば保険金を支払う)、相互扶助のシステムである。よく「無尽」や「頼母子講」と似ているとの話を聞くが、「保険」と比較した場合と同様、似ている部分もあればそうでない部分もあるのだろう。
このコミュニティ内において、少額の保険金支払の場合、プールの中でその損害がシェアされ、コミュニティのプールでカバーできない保険金支払については、外部の保険会社を利用するのが一般的である。このような仕組の採用により、各会員のコミュニティへの参加意識や責任意識がさらに高まり、不当、あるいは少額の保険金請求を抑制できると考えられている。
また、多くの P2P 保険では、革新的技術(フィンテック)を活用して、コスト削減や顧客体験の向上を図っている。(保険にかかわる技術を特にインシュアテックとも呼ぶ。某先輩の「保険はハイテクでもローテクでもねぇ!
ノーテクだ!」との言に妙に納得してしまい、それ以来インシュアテックという言葉が使いづらい)
私がこの「P2P保険」の存在を知って衝撃を受けたのは、以下の2点の特徴である。
1.契約者と相対する形での保険会社的存在がない
2.大数の法則によらず保険的なシステムが成立する可能性がある
私が目の当たりにしてきた保険業務上の問題のおおむねは1.に端を発している。この対立から生じる「契約者」と「保険会社」間の「相互不信」を解消することは、これまで損保業界で働いてきた自分の使命ではないかと勝手に思っている。
そして2.「大数の法則」とは、サイコロをず~っとふっていると、個々の目の出る確率が1/6に近づいてくるという法則である。この法則があればこそ個々人としては偶発的な事故であっても、事故の当事者の特定はできないが全体の中の金額・件数を予測することができ、保険料の算出が可能になる。「とにかくたくさん保険売ってこい!」はこのリスク(振れ幅)を小さくするうえで意味がある。問題はどこまで契約を取ってくれば意味があるのか計算することなく、「多ければ多いほどいい」と商品の供給者側で考えてしまっていることである。P2P保険はこの呪縛からも保険供給者(保険会社の社員)を解き放ってくれるのなら、まさに既存の「保険制度」にとって代わるべき存在なのではないか?