グルテンフリーで小麦粉の代わりになる「テフ」について調べた
みなさん、こんにちは。
突然ですが、テフ（Teff）という穀物をご存じですか。アフリカの東部に位置するエチオピアで主食として食べられている穀物で、鉄分、カルシウム、食物繊維を多く含むことから、スーパーフードとして注目されているそうです。テフとは、現地の言葉で「見失う」という意味なんだそうです。テフの大きさは、なんと小麦粉の100分の1。こぼしたら、見失ってしまいますよね。小麦、大麦、ライ麦とは違う種類なので、もちろんグルテンフリーです。グルテンフリーの代替食材としても注目されているテフについて、詳しく見ていきましょう。
テフはエチオピアのパンの材料
エチオピアはアフリカ東部の、赤道より少し北に位置する国です。このエチオピアでは、インジェラといパンを主食にしているそうです。日本でいうごはんみたいなものでしょうか。このインジェラの原料が、いまから説明するテフなのです。
テフは、イネ科スズメガヤ属の植物です。スズメガヤの仲間は、日本でも雑草として普通に見られますが、テフはエチオピア原産で、エチオピア以外ではほとんど栽培されてきませんでした。テフの種子はとても小さく、長さ1mm、幅0.8mmで、小麦粉の100分の1といわれており、ほとんど粉みたいなものです。ちなみにテフの種子は、イネ科で最小らしいてす。
この種子を皮ごと石臼ですりつぶしたのが、テフ粉といわれるものです。このテフ粉に水と塩を加えてねって作った生地を、3日間寝かせます。するとテフの種子に付着していた酵母が乳酸発酵を起こし、酸味のある生地ができ上ります。これをパンケーキ状にして焼いたのが、インジェラです。
テフ粉は味にクセがなく、ナッツのような風味があるそうです。テフ粉を使ったパン、おいしそうですね。日本でもエチオピア料理店で食べられるそうです。新型コロナウイルス感染症が終息したら、一度食べてみたいと思います。
テフの栄養成分は全粒粉に似ている
テフは欧米で、グルテンフリー食材として注目されたようです。現在は、南アフリカ、ヨーロッパ、アメリカでも栽培されています。グルテンフリーの食生活が普及していない日本では、スーパーフードとしても紹介されています。スーパーフードはイメージが先行しており、何がスーパーフードなのかよくわからないのですが、一般社団法人日本スーパーフード協会によれば、
・栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品であること。あるいは、ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品であること。
・一般的な食品とサプリメントの中間にくるような存在で、料理の食材としての用途と健康食品としての用途をあわせもつ。
ものを、スーパーフードと定義しているそうです。
テフがグルテンフリーであることはわかっているので、テフの栄養価と栄養・健康成分について調べてみることにしました。日本ではテフ粉はほとんど流通していないので、日本食品成分表には掲載されていませんが、アメリカ農務省のデータベース FoodData Centralには栄養成分値が掲載されててます。なお比較のために、日本の食品成分標準表に掲載されている薄力粉と全粒粉（強力粉）のデータもあわせて載せました。
テフ粉は小麦粉に比べて、カルシウムと鉄分を多く含んでいます。特にカルシウムは全粒粉の6倍、鉄は全粒粉の2倍もあります。テフ粉も種皮ごと製粉しているため、食物繊維の量は、全粒粉と同じくらいです。このほかにも、銅、マグネシウム、カリウム、リン、マンガン、亜鉛、セレンなどのミネラルを多く含んでいるそうです²⁾。
さらにテフ粉は低GI食品であるといわれています。GIとはグリセミック指数といって、食べた後、血糖値が上昇する早さを表す数値です。GIの値が高いほど、血糖値が急激に高くなるため、肥満や糖尿病になる危険性が高まります。ただGIはその食べ物単独で食べた場合のデータで、血糖値の変化は、調理方法や一緒に食べる食品によっても違ってきますので、GI値だけを指標にして、食べ物を選ぶのは、意味がないと思います。
グルテンフリー食材としてのテフの魅力
テフ粉はミネラルを多く含み、低GIということで、穀物粉としてはひじょうに魅力的です。またパンケーキ、クッキー、ケーキ、マフィン、パン、麺など、さまざまな料理で小麦粉の代わり使えるそうです。グルテンフリー生活をしている人にとっては、便利な穀物粉です。また、ミネラル、特に鉄分を多く含んでいるので、鉄分が不足しがちな女性にとっては、うれしい食品かもしれません。
ただ、問題はテフ粉の値段です。日本ではネット通販で購入できますが、その価格は何と、100gあたり1,000円～3,000円です。これは小麦粉の100倍の値段ということになります。小麦粉を代用するためには、かなりの勇気がいりますね。これはおそらく流通量が少ないことが原因ではないかと考えます。現地ではこんな値段であるはずがありません。小麦粉と同等か、それより安いはずです。
グルテンフリーの粉なら、片栗粉、コーンスターチ、米粉、そば粉など、リーゾナブルな粉がいくらでもあり、小麦粉を代替するレシピもたくさん出回ってます。また、テフ粉にしか含まれていない栄養成分があるわけではないので、ミネラルが多い、食物繊維が多い、低GIだというだけでは、スーパーフードとして使うモチベーションにはなりません。ミネラルや食物繊維なら、安価なサプリメントで簡単に補うことができます。
参考文献
1) FoodData Central、米国農務省
2) Eva Koubová et.al., Dietary Intakes of Minerals, Essential and Toxic Trace Elements for Adults from Eragrostis tef L.: A Nutritional Assessment, Nutrients 10(4) 479 (2018)
まとめ
・テフはイネ科スズメガヤ属の植物で、エチオピアで栽培されてきた。大きさが小麦の100分の1しかない種子を、皮ごと製粉したのがテフ粉で、エチオピアで主食とされるパンの材料になる。
・テフは鉄分をはじめとしたミネラルが豊富で、食物繊維も多い。日本ではスーパーフードとしても紹介されている。
・テフ粉は日本で買うと、小麦粉の100倍と高価なので、グルテンフリーのための小麦粉代替食材としても、スーパーフードとしても、魅力的とは言えない。