新型コロナウイルス感染症の対策と対応で思ったこと。
新型コロナウイルス感染症 (以下、COVID-19)の影響が出てきた2月からこの1ヶ月余りは、プロジェクトの延期や中止、外出自粛や面前での打合せの自粛、進行中の案件や現場の対応などで目まぐるしく対応に追われました。
3つの異なる会社で、それぞれの事業の中でのプロジェクトの対応から、経営上の判断とその対応まで、デザイナーとして、また経営者として思ったことを書いていこうと思います。これだけ危機感を持った事は、リーマンショック以来(東日本大震災の時は、実経済の復旧が早かった)で、ましてウイルス感染症で確立した治療法やワクチンが現時点でない故に不安があるからです。
同時に、感染症や天災による社会不安といった事例は、過去にも起こっており、その中にヒントがある気がしてなりませんでした。専門家の見解を調べつつ、何が起きて行ったのか整理して書きたいと思います。
感染症でここまで実経済を脅かされた事は近年ない
まず大切なのは、ここまで世界中に広がり実経済を脅かしたウイルス性感染症に今世紀初めて遭遇すると言う事。重症急性呼吸器症候群(SARS)や新型インフルエンザ(2009年)が記憶に新しいですが、世界で1億人近い感染者を出した新型インフルエンザを超える、人的な被害を出す可能性が極めて大きいこと。
医療崩壊が各国で起き始め、初期対応の不備と医療崩壊で歴史上最悪の風邪と言われる”スペイン風邪”(1918年1月から1920年12月まで世界中で5億人が感染)彷彿とさせ、Infodemic "情報の感染" で不安が醸成されてしまっていることが、実社会にのしかかっています。
1月からのたった2ヶ月で世の中が変わってしまった。
発生源の武漢で確認されたのは昨年の11月。国内の初感染者が1/16で、春節(今年は2/12から)頃には既に感染者がクルーズ船や国内にも蔓延しだし、2月の中旬からは、展示会や各種イベントが中止や延期が目立ち始めます。そして2月の末には、人の多く集まるセミナーやライブなども自粛をし始めます。また、自動車メーカーが工場の休止や建材メーカーの納品の遅延、それに伴う納車やマンションの引き渡しの遅れが出始めます。
投資の観点で見ると、2/21からの日経平均の大暴落。不動産投資信託であるREIT指数も軒並み下がり、会社も不動産も時価を下げていきます。現時点(3/30)では持ち直していますが、それでも堅調だった1月末までと比べても日経平均で5000円以上下がっている事は尋常ではありません。つまりこの二ヶ月で、実経済が麻痺し出しており、市場関係者も抜け道が見えないと言う事です。
東京オリンピックの延期と感染者の増大
3/24のオリンピックの延期決定と3/30の延期するオリンピックの開催日の決定(開催日程が、2021年7月23日の金曜に開会式を行い、8月8日の日曜に閉幕)となるわけですが、延期から決定までたった4日間。当初は二週間程度とアナウンスされていたわけですが、この辺はオリンピックの中止を避けたい政府と東京都の思惑が見え隠れします。開催国で爆発的に羅漢者が増えれば印象が良くない上、最悪中止になってもおかしくないわけですから。
(あくまで私見ですが)スペイン風邪も第一次世界大戦中であり、敵国に知られたくない、情報統制下故に羅漢者の総数がはっきりしていないことも理由にあります。たった4日間でなぜ開催日程を決める必要があったのか? 逆を返すと、それだけ深刻な状況(爆発的に感染者が増え、医療崩壊が起こり得る)とも読めます。東京都のPCR検査も3/27以降検査数が公表されていないのも気になります。
ここ数日のCOVID-19の感染数の増大は、政府や東京都が言うように「“感染爆発・重大局面”」で、これ以上待てる状況ではなかったのでしょう。持ち堪えていると言う情報そのものが、真に受けられませんが、もう少し早く日本側から延期を持ち出す事はできなかったのか? 疑問も残ります。
ウイルスとしての特徴と専門家の見解
一番気になる事は、このCOVID-19と言うウイルス感染症が、どういう性質でどんなウイルスなのか? 殆ど見当がつかないという事です。最近は、臨床上のデーターが出始め、治験やワクチンの開発も急ピッチで進めていると報道されていますが、TVの性質上右へ倣えのような論評しかされておらず、不安が募ります。そんな中で、アメリカ在住の感染症の専門家の見解が非常に解りやすく、腑に落ちたのでご紹介します。
峰先生の見解は下記のような感じで、
SARSよりやや毒性が強く、インフルエンザのように拡散しやすい性質。
ウイルスの構造的にはSARSに近いが、流行の仕方は新型インフルに近い。
COVID-19のウイルスは、鼻水に出やすい。飛沫に飛びやすい。
再感染の可能性より再燃(偽陰性)の疑いがまずは考えられる。
インフルのような上気道ではなく下気道(肺など)に入り込みやすい。
故に肺が重篤化しやすい。
ピークアウトを抑える事は現状難しく、だらだらグダグダと続く。
ピークを抑える事で医療現場のキャパを保つことが重要
治療薬作成のために必要な情報読み込みスピードが上がっている。
中国での治験が進んでおり、結果は今月末から結果が出てくる。
ワクチンの完成は半年以降。
治験による治療法の効果が出始め、ワクチンが完成した頃に社会が許容する
(インフルエンザと同じような完全収束ではなく、社会が受け入れる)
季節性インフルエンザのようなイメージで社会の混乱が収束化するのでは
今回WHOは「Infodemic」"情報が感染している"という表現を使っている
気をつけるべき事は「人が集まる、飛沫を飛ばす環境、換気が悪い事」
印象に残った部分の纏めですが、治験が進み治療法に一定の効果が出始め亡くなる方を減らすこと、もしくはワクチンが完成し予防に目処が立つタイミングが、今回のCOVID-19の社会的な収束点(許容できるタイミング)となるのでしょう。ちなみに、2018年にインフルエンザで亡くなった国内の人は3325人。この数字も驚きですが、ワクチンがあるインフルエンザでも年度によっても犠牲になる方の数が変動します。これと同じイメージなのでしょうね。(個人的にインフルエンザの犠牲者の数を知った3年前から、インフルエンザの混合ワクチンを毎年11月に受けるようになりました)
分かってきたこと。
インフルエンザのような拡散性とSARSより毒性のある強いウイルス性の風邪で現時点では治療法とワクチンが確立されていないが、専門家の見解では、ダラダラと長引くので「人が集まる環境、飛沫を飛ばす環境、換気が悪い環境」はなるべく避け、マスクと消毒を徹底する。治験は今月から結果が出始めるが、ワクチンの完成は早くても半年以降。
臨床的な収束よりも「社会が許容できる範囲」がいつになるかが、今回のCOVID-19による社会の混乱が収まっていくポイントということが分かってきます。ワクチンの完成が早くても半年以降となると、2月からスタートしても秋以降。逆を返せば、スタッフやその家族の安全を担保した上で、最低でも秋以降(年内)までの資本的な体力を獲得していないと厳しいということになります。今ある仕事やこれから計画のある仕事が、今までと同じ様にできるとも限りませんから。
自分たちができる対策と対応
ここからは時系列ですが、ここまでやってきた対策と対応。
日経の展示会の中止と2/21以降の日経平均とREIT指数の暴落時
→ 建築開発系(建築デザイン)は、新規開発物件を見直し、絞り込む。
→ イベント系(空間デザイン)は、4月末までの案件は中止になる事を覚悟
→ 僕の関わっている仕事で、考えうるリスクを想定し始めたのはこの時。
3月初旬
→ 建築開発系(建築デザイン)は、新規開発物件を延期。
受注済物件にリソースを集中。延期物件も調達の可能性を模索。
→ 内部留保は確保しつつ、資金調達を検討。
→ 新入社員の入社日をリスケとリモートワークによる研修を模索。
3月中旬
→ オリンピック延期に伴う、来年までのロードマップの見直し。
→ テレワークを段階的実施(主に得意先との連携。制度を確定させる)
→ イベント系(空間デザイン)の4月末までの案件は全て中止が確定。
→ イベント系のリスケ案件の担保
→ 常設空間の案件受注の強化と社内で企画していた案件の強化。
3月下旬
→ テレワークを完全実施。
→ 新入社員の入社日をリスケし、リモートによる研修をアナウンス。
→ 中国生産分の建材の遅延が顕在化し、住宅や商業施設の引き渡しのリスケが目立ち出す。
上記の様な感じで、約一ヶ月をほぼ ”デザイン” する以外のことに費やしていた日々でした。多分、僕が独立してから一ヶ月間ここまで奔走したのは初めてでしたが、事態が事態だけに、割と冷静に淡々と対処する日々でした。
リーマンショックや東日本大震災直後の状況を経験していた事によるリスクヘッジも大きいですが、結局は日頃の準備で、僕が関わっている3つの会社共に会社としての人的、資本的なリソースをある程度確保していた事で、選択肢が生まれ、状況判断とその対応に集中できた様な気がします。
まずは慌てないこと。普段通りのことをしっかりやること。
WHOが ”Infodemic” という様に、このCOVID-19は警戒しないといけない感染症であることは間違い無いですが、SNSでの発信量が少なかった新型インフルエンザの時の様に社会が冷静に対応していれば、イタリアやスペインで起きている医療崩壊の様なことも、社会不安を煽らなくても済んだのでは無いか? そんな気がしてなりません。
ホリエモンのいう様にSNSの情報は、時として過敏な状況を生み出します。知ろうという欲が、自分の中で治っているうちは良いけど、不安に駆られて発信してしまう様なケースも散見し、個々の判断力が問われている様な気がします。過去の歴史から、もっと学ぶべきです。
そして、まずは慌てないことです。そして、大切な人たちを守るためにも、安全な行動を優先し、無理をしないこと。少なくてもこの一ヶ月は、特に冷静に行動し、ピークアウトを押さえることが、今もっとも大切だと考えています。経済活動は挽回できますが、失ってしまった人の命は戻ってきませんから。
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