時代の先取りしすぎたお姉さん
20代の頃、よくあるカルチャーセンターで習い事をしていました。
今日はそこで出会った少し年上のお姉さんのお話です。
その方はフワッとした雰囲気とおっとりとした話し方で、私の目から見ても可愛らしい方だなと思いました。
その習い事には私とそのお姉さんしか若い人がいなかったので、自然と話す機会が増えて行きました。
習い事の後にお茶をすることもあり、その時はお姉さんの恋愛話を聞くことが多かったです。
お姉さんから彼氏が二人いると告白された時、まだまだ彼氏いない歴=年齢だった私は多分ぽかんとしていたと思います。
「…二股?」
「違うよ〜。何でみんなすぐ二股って言うの?」
彼氏が二人いることを二股と呼ぶ以外言葉を知らなかった私はとりあえず謝りました。
「二人とも好きなんだもん。ちゃんと同じだけ愛情を持ってるよ」
「彼氏さんたちはそれ知ってるの?」
「…この間言ったの。でも二人とも納得してくれなくて…」
まぁそうだよね…と心で呟く私。
「俺が一番だろ?ってどっちにも言われてるんだけど、選ぶことなんて出来ないよ。何で分かってくれないのかな…」
おっとりとした喋り方はそのままだけど、ハッキリ言い切る言葉には存外芯が通っているように思えました。
習い事は3ヶ月が一区切りでした。
私は更新するつもりはなく、お姉さんも同じとのことだったので、最終日は飲みに行きました。
「彼氏さんたちとうまくいってる?」
私のうまくいってるは二人とも納得してくれたのかという意味。
お姉さんはしっかりその意味を汲み取った上でこう言いました。
「ううん…なんかもうその話すらさせてくれない」
「ああ…そっか」
「昨日ね、おばあちゃんとも喧嘩になってさ…」
「おばあちゃん?」
「そう!私が不誠実だとか何とかすごい言われて…。頭にきたからマックに行ってポテトのSサイズやけ食いしたの!!」
「Sサイズ?Mじゃなくて??」
「そうSサイズ!」
ツッコミどころの多い会話なのは重々承知しております。
でも、お姉さんは真剣にSサイズのポテトをやけ食いしたんだと言ってました。
その後、彼氏さんたちのプリクラを見せてもらった時、私には正直どっちも同じ人に見えました。
似てるねって言ったら、え〜?全然似てないよ〜って返されましたが。
趣味は一貫していたようです。
その後は私も実習が忙しかったりして、数回メールのやり取りしただけで終わってしまいました。
お姉さんさんは多分、同性の友達は少なかったと思います。
職場の話になった時、ちょっと微妙な顔をしながら「あまり仲良しがいないから…」って言ってましたし。
私は年下だったし、あまり深く付き合わなかったからかもしれませんが、でも何となく憎めない人で私は好きでした。
飲みに行った日も
「年下の子にお金出させちゃいけないんだよ」
って笑って奢ってくれました。
今はポリアモリー(複数恋愛)という考えが出てきているそうです。
お姉さんも今の時代だったらもう少しだけ生きやすかったかな(まだまだ理解は得られそうにないけれど)
ちょっと時代を先取りしすぎたお姉さんでしたが、どこかで幸せになっているといいなと思います。