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【エッセイ】レターセット

レターセットを買ったことはたぶん数年前にもあった。

目的があって。
誰かに書くために。
なんとなく。

そうゆうこととは別の。
全く別の気持ち、感覚。

今日のように買うのは久しぶりだった。

吟味して。自分が心から好きというものを時間をかけて。比較しながら厳選して。

何年ぶりだろうと考えてゾッとした。
23年ぶりだ。

どうしてこんなに明確に年数を把握しているかというと、新入社員の時だったから。

社会人になって意欲に燃えていた。
わたしを売る仕事だと思って飛び込んだ場所は思っていたところとは違ったけど、
ありのままのわたしを認めてくれる上司や同僚がいた。

なにをしてもキュートなYちゃん
キュートさでは右に出る者がいない
Yちゃんはそのままでいいんだ!

見た目は変わっていてちょっと気持ち悪いかもしれない、猫の匂いのする、手にアタッチメントという名前をつけた豆をこしらえた上司の言葉は、当時のわたしには理解できていなかった。

自分で全くわかっていなかったわたしの個性、良さを上司は言葉できちんと伝えてくれていた。
そして本当にそのままのわたしを認めて育ててくれていた。

理解するのに23年もかかってしまった。

自分のためにレターセットを買った。

誰に書くのか決まってない、もしかして自分に手紙を出すかもしれないと思いながら。

誰かの好みに合うとか、季節的にはこれだとか考えなかった。
自分が心からいいなと思うもの。
便箋の柄に、シールの一つ一つに、じんわりと幸せを感じられるものを手に取った。

簡単だった。
自分が心から好きと思うものは、一度出てきてしまえばすぐに判断してくれる。
でも出てくるのに時間がかかるのだ。

普段わたしが目を向けてないから。
わたしのために過ごしてなかったから。
23年もかかった。
でも出てきた。
わたしの好きな気持ち。
レターセットを選ぶちから。

誰にもわからなくても構わない。
誰かと分かち合えたらすごくすごく嬉しいだろうけど、このレターセットのチョイスはわたしの好みなんだ。
このレターセットとシールに感じる気持ちはわたしのもの。わたしが生きてきて身につけたもの達のかたち。

いまのありのままの自分が感じる好きのきもち。

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