20240914 親の心、
二十歳をすこし過ぎた頃、東京へ出てすこし大人になった気持ちであらためて家族と話していた。私と姉たちとはすこし歳が離れているので、実感としてはほぼ一人っ子みたいな気持ちで育った部分があって、家族の歴史について実はあまり詳しく知らないという引け目があった。
▼あらためて聞いてみると人間生きていればいろいろあるもので、どうやら父があまり家に寄りつかなかったり、それがもとで家庭内が揉めたり、というようなことがあったらしいのだけれども、私が生まれた頃にはすっかり落ち着いてしまっていて、いくらか穏やかな日々のなかで私は育ててもらったのだった。
▼今思えば後悔しかないけれども、子供の頃は今みたいな分別がなかったのでばあちゃんの大切にしている花壇を踏みにじったり、畑の芽を踏んづけたり、飼っている亀をいじめたりとかそういうクソガキムーブしかしていなかった。それで怒られたら「なんだババアこのやろう!」と、逆上するくらいにはクソガキだった。
▼家族のことを大切に思えるようになったのは一人暮らしをするようになってからだった。距離を取ってみないことには、少なくとも私は家族のありがたみなんかぜんぜんわからなかった。東京に出てくるとき、私は母に「俺はもう戻ってこないからね」と言ったそうである。いま思うとなんて寂しいことを、と思うけれども実際ほとんど帰れていないし、親の心子知らずとは本当なんだなと思う。
▼家族のこと(といっていいと思う)について、私がどうしても聞いておきたいことが一つだけあった。それはいつ頃から父親の頭が薄くなりかけたのか、ということだった。こうしたことはもうだいたい遺伝だし、いつか自分も禿げるのだろうという覚悟はありつつも、その心の準備がしたくて私はおおよその目安を知りたがった。
▼「で、いつごろハゲかけたのか?」と、私は何度となく父に尋ねたけれどもついに彼は答えなかった。笑ったまま、誤魔化されてしまった。まあ明確にいつ頃、というのが知りたかったわけではないし、ストレスや生活習慣といった要因もあるからまあ自分には自分の時があるのだと思いながら、ちょっと生え際を気にしてみるのだった。
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