[読書メモ]『THIS IS SERVICE DESIGN DOING』の4章までをざっと読んで面白かったところ紹介!(後編)
※前編、中編からの続きとなります。前編、中編も合わせてご覧ください。
前編:https://note.mu/hiranotomoki/n/nd694ffeef016
中編:https://note.mu/hiranotomoki/n/n8fb7f52b40b3
面白かったこと4:サービスデザインの5つの視座
マインドセット・プロセス・ツールセット・共通言語・マネジメント
うすうすは感じていましたが、サービスデザインも色んな見え方があります。私はデザインリサーチャーなのですが、仮に取り扱っている対象が同じだったとしても、それに対してサービスデザイナーとしては参加しません。その代わりにサービスデザインの手法を使って取り組むことは多いです。そういった自分の仕事を通して、思い当たる節が5つの視座としてまとまっていました。
マインドセット
デザイナーマインドを持つと見える世界(顧客視点)がサービスデザインにはあるということ
プロセス
そのマインドセットを駆動しながら、デザインシンキングの反復サイクルの中で、高速プロトタイピングやユーザフィードバックを繰り返すこと
ツールセット
サービスデザインを実践する上で利用するメソッドやツールを扱いながらチーム内の共通言語をつくること
共通言語
チーム内でツールやメソッドを通して、様々なことを視覚化したり、目に見えるモノをつかって話し合うことで、つくられること。
マネジメント
社内のステークホルダーを含めて、顧客視点で見通すことは組織構造やシステムに変化をもたらことが可能であること
詳しくは以下のような内容です。
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マインドセット:Service design as a mindset
サービスデザインのマインドセットを持っているグループは、まずユーザーファーストで話し、サービスの個々の要素をアバターとして見て、リサーチによって示しされた仮定に反応し、プロトタイプテストの賛否を問う無駄な議論を拒否し、サービスが実装されるまで、プロジェクトが完了しないと考えます。マインドセットとしてのサービスデザインによって、テクノロジーと人間のニーズとビジネスの関係性をバランス良く探すことができます。
プロセス:Service design as a process
サービスデザインのプロセスは、反復サイクルを通して、革新的なソリューションを見つけようとすることと、そのデザインのマインドセットによって駆動します。デザインナーは、早期ユーザフィードバックや早期プロトタイピングなどによって、短いサイクルを目指します。プロセスを継続するにつれて、反復のスピードがゆっくりになるかもしれませんが、プロトタイプからパイロットへ、パイロットから実装へと反復するので、決して遠ざかっているのではありません。
ツールセット:Service design as a toolset
サービスデザインを想像する時、一般的にはツールセットを想像します。ツールセットは多くの人々が思い描くサービスデザインを総括しています。ツールボックスだけのサービスデザインは、かなり扱いやすく、ブランド、マーケティング、UXなどに応用しやすくなるほど魅力的です。しかし、これは、サービスデザイン全体の話ではありません。プロセス、マインドセット、共通言語がなければ、これらのツールセットは本質的な意味を失うでしょう。ツールセットは意味がある会話をつくることができます。すなわち、ツールセットによって、共通言語のつくることを働きかけるのです。
Service design as a cross-disciplinary language
ツールセットとそれに伴うビジュアライゼーションは、異なる専門家同士が、様々な手段で解釈することができ、お互いの世界をあまり分かっていなくても、効果的なコラボレーションを実現します。サービスデザインによって、共通言語をつくることで、様々な専門分野を越境するために、共有されやすく、取り扱いやすい、中立なチームと活動となるのです。
Service design as a management approach
サービスデザインが組織に持続可能的に埋め込まれた時、管理アプローチとして、役立つことができます。他の管理アプローチと似ていますが、サービスデザインは以下の点で異なります。それは、人間中心なKPIや定性的なリサーチ方法、顧客とビジネスの2つのエクスペリエンスのための迅速で反復なプロトタイピング方法、リーダーシップへの特定のアプローチ方法を通して、社内のステークホルダーを含めて、顧客視点で見通すことは組織構造やシステムに変化をもたらすことです。
面白かったこと5:サービスデザインの原則が進化
『THIS IS SERVICE DESIGN THINKING』の日本語版が出版された時、ネットでサービスデザインの原則の5つが飛び回ったような記憶があるのですが、それが、変更されていました。これが4章まで読んで一番面白かったことでした。原則を簡単に変更するあたりが西洋人っぽくて良いなと素直に思います。それと自分の頭で考えることの大切さを再確認できた気がします。サービスデザインを切り開いている人たちですら、常により良いものへと進化させようとしていることが伺えます。主な理由は以下でした。
・利用者だけでなく、従業員、サービス提供者、顧客、利害関係者含めた人間全般に焦点を当てた方が妥当だから。
・顧客がいて成り立つといった意味の共創よりも、様々なバックグラウンドを持つ人々がデザインに参加するプロセスの方に重点を置いたから
・「Sequential」の方が日常会話でつかうから
・今日の「holistic」と言う言葉はサービス全体を形作ることを念頭に置くために使用されることが多いから
・前回の原則には、デザインプロセスで大切な反復がなかったから。
以下が更新された原則となります
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Human-centered:
Consider the experience of all the people affected by the service.
人間中心であること:そのサービスによって影響を受けるすべての人々の経験をよく考える
Collaborative:
Stakeholders of various backgrounds and functions should be actively engaged in the service design process.
共同作業:様々な背景と機能をもった利害関係者が、サービスデザインのプロセスに積極的に参加する必要がある
Iterative:
Service design is an exploratory, adaptive, and experimental approach, iterating toward implementation.
反復的アプローチ:サービスデザインは、探索的で適応性があり、実験的なアプローチなので、サービスの実装に向けて何度も繰り返される。
Sequential:
The service should be visualized and orchestrated as a sequence of interrelated actions.
インタラクションの連続性:サービスは視覚化され、連続するインタラクションの行動群として取りまとめる必要がある
Real:
Needs should be researched in reality, ideas prototyped in reality, and intangible values evidenced as physical or digital reality.
リアルであること:現実の中でニーズは調査し、現実の中でアイデアは試作され、無形の価値はフィジカルまたはデジタルな現実として物証する必要がある
Holistic:
Services should sustainably address the needs of all stakeholders through the entire service and across the business.
全体的な視点:サービスとビジネスの全体を通して、サービスはすべての利害関係者のニーズを持続的に対応する必要がある
サービスデザインは、組織が提供するサービスを創出したり、改善するための実践的なアプローチです。サービスデザインは、デザインシンキング、エクスペリエンスデザイン、UXデザインのような他のアプローチと共通してところがあります。それは、デザインスタジオに由来し、サービス-ドミナント ロジックと上手に調和します。
ユーザリサーチ、プロトタイピング、誰でも理解できる視覚化ツールを使用して、ビジネスとユーザとすべての利害関係者のニーズを満たした利用体験を創出し、取り組むために、サービスデザインは、人間中心で、共同作業で、様々な専門分野の越境する反復的なアプローチなのです。
参考文献:
Stickdorn, M. Hormess, M. Lawrence, A. Schneider, A (2018). "This Is Service Design Doing: Applying Service Design Thinking in the Real World". O'Reilly Media, Canada.
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以上で、簡単ですが面白かったこと5つのシェアは終わりです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また、読み進めたらシェアしたいと思います。
※英語の翻訳箇所は意訳しているところも多いので、そのあたりはご愛嬌で!
追記(2018/4/9)
続編をかきました。