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弱小出版社にいたたった半年間

会社のオフィスは、三田にあったマンションの一室だった。
たしか3階くらい。
入社前に顔合わせか何かの目的で、1日数時間、バイト的に
働いたことがあった。
そしてその数日後か数週間後に勤務開始だったのだが、
同期でいっしょに働くはずだった女子は、すでに入社を取りやめていた。

オフィスにあるトイレはユニットバスのトイレだった。
内勤のときで、トイレに行くときは、2階にあった集合トイレを利用した。
ここでは個室でタバコを吸った。

内勤のとき、あまりにも眠くなって、昼休みに近所の公園のブランコで眠ったりした。

思えば、週末に飲みに行く友達もいなかったな。

大学の同級生の女子を誘って断られたりしていた。

社長にはけっこう頻繁に飲みに連れて行ってもらった。
私の入社の歓迎会は、田町にあったすえひろファイブ。
鉄板焼きだった。

社長と田町で飲むときには、社長を個人的に慕っていた
元社員の男性が呼ばれてくることが多かった。
この方は退職していたのに(笑)。
浜松町にある印刷会社に転職していた。
また、教育新聞社に転職していた先輩もいた。
この方にはお会いすることはなかったが、エピソードは
よく話題にのぼった。

私が半年間お世話になった弱小出版社の名前をAmazonで検索すると、
びっくりするほど多くの書籍が検索にひっかかってびっくりした。

それらの書籍のタイトルを一通り追いかけてみると、
あながち悪くはない。
現代に通ずる、学問的に深いと思われる書籍も少なからずあった。

しかもそのほとんどは自費出版である。
著者は医師が多い。

医師はお金があるから、自費出版で200万円とかかかっても
お金が出せる、と踏んだのはなかなか目の付け所が鋭い、と
いま初めて気づいた。
あんな出版社でも存在意義はあったのかもしれない、と
初めて考えた。

社長はもう他界しているはずだ。
離婚歴があり、私が出会った当時は独り暮らしだったと記憶している。
お子さんについての話しは聞いたことがないから、おそらくいなかったのだろう。
ネットで検索してみると、晩年は詐欺で訴えられたり、あまりよい最期は
迎えていないようだ。
それもまた人生だ。
私がこの出版社に、たった半年間籍を置いたこともおそらく
意味がある。


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