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国連がデータガバナンスの取り組みを強化

昨日、データガバナンスに関する状況を書きましたたが、その続編です。国際データガバナンスに関する提言に関する解説です。

国連は、2024年9月にグローバル・デジタル・コンパクトでデータガバナンスを推進することを強く打ち出しましたが、それに加え、昨年来検討してきた国際データガバナンスに関する方針を、11月4日に「国際データガバナンスのための規範的基盤の提案: 目標と原則」として公開しました。今後、この提案のブラッシュアップや関連取り組みが進められていきます。

考え方

国際データガバナンス実現に向けて、以下の考えのもとで、ゴールと原則を検討してています。

●国際的なアクターや国を超えて、データガバナンスの一貫性を育みつつ、先進的で適応可能であること;
●データの種類、使用方法、多様な環境における関連性と有効性の確保など、状況に適したものであること;
●持続可能な開発のためのデータへの公平なアクセスを促進し、データがすべての人に利益をもたらすようにする;
●国際的な人権や持続可能な開発目標(SDGs)のような、世界的に認知された枠組みや目標を支援、促進、整合させる;
●価値、信頼、公平性など、共有された目標に合致し、それを支援する;
●多様なステークホルダーを結集し、複雑な政策改革や介入への支援を動員するマルチステークホルダー・アプローチを採用する。

Proposed Normative Foundations for International Data Governance: Goals and Principles

このドキュメントは、単にデータガバナンスに影響するだけでなく、グローバル・デジタル・コンパクトにあるように、AI活用やAIガバナンスの基盤となるものです。

ゴール

国際データガバナンスのゴールは、価値、信頼、公平性により構成され、このゴールは、データのライフサイクルを通じ、国際、国、地域、組織レベルのすべてに適用されます。

価値

責任あるデータの使用と再利用の拡大を通じて、すべてのデータ領域(持続可能で包括的な開発、平和と安全保障、人権、人道支援など)においてデータの価値を最大化する。
これは、データの質とその価値を評価する文化を育むとともに、データの流れと技術的な相互運用性を国内および国境を越えて促進することによって行うことができる。
また、データの利益を最大化し、リスクを最小化する必要性に留意しながら、データの作成と普及に内在するリスクを回避するのではなく、リスクを特定し、評価し、管理することも含まれる。相互運用性を実現し、データの効果的な(再)利用を可能にするためには、利害関係者やデータ資産間で定義、分類、標準(例えばテーマ別分類法)を整合させることが不可欠である。

Proposed Normative Foundations for International Data Governance: Goals and Principles

信頼

 データのライフサイクル全体にわたってデータの安全な環境を確保し、データの誤用から生じるリスクや危害から個人と集団を保護することにより、信頼を確立する。
信頼を確立するためには、データガバナンスに人権に基づくアプローチを採用し、保護と個人データの保護とプライバシーを優先し、透明性、説明責任、データの質、データとそのインフラのセキュリティを強化する責任あるデータ実務を確保することが必要である。

Proposed Normative Foundations for International Data Governance: Goals and Principles

公平

データへのアクセス、利用、再利用の拡大から得られる利益の公平な配分を確保する。
個人データの場合、データ利用の利益を、そのデータが由来する人々やそのデータに関する人々に還元する取り組みに従事する。
公平性の促進には、社会的弱者や社会から疎外されたグループを含む個人とコミュニティの代表と参加、データの収集、分析、使用における偏見と差別の防止、データのライフサイクル全体を通しての個人とコミュニティの主体性、権利、利益、嗜好の尊重が含まれる。
適切な場合には、データ主体が自己の個人データとその利用にアクセスし、管理できるようにすることで、個人と集団のニーズのバランスをとる。
公平性という目標は、公共の利益のための倫理的なデータの使用と再利用、およびエビデンスに基づいた意思決定を含む、責任あるデータ・スチュワードシップを含む。

Proposed Normative Foundations for International Data Governance: Goals and Principles

原則

ゴールを実現するために、各ゴールに対して原則が設けられています。

価値

  • データに要求される価値の最大化

  • 相互運用性

  • 相互利益と連帯

信頼

  • データへの人権ベースのアプローチ

  • アカウンタビリティ

  • データ品質

  • データセキュリティとインフラ防護

公平

  • デジタルの自己決定権

  • 公正と無差別

  • 人間中心

  • データスチュワードシップの奨励

今後の進め方

今回公表されたドキュメントは提言であり、今後は以下のステップで国際データガバナンスの推進が行われていく。

  • 参加型コンサルプロセス:幅広い関係者が参加する協議

  • コミュニティ・オブ・プラクティス:関係者間の協調と学習

  • 目に見えるリーダーシップ:国連からの目に見える支援とリーダーシップ

  • 意味の調和:用語や定義の統一

  • 実践的ガイダンスの提供

  • データとデータシステムへの投資:人材への投資を含む

  • 段階的、多層的アプローチ

以上が国連の国際データガバナンスの取り組みです。データやAIが世界で急速に広がる中で、このような価値の増大と規律の確保の両立が求められています。

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