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『おいしいが聞こえる』は三刷で累計発行部数が1,000部になりました&寄付のお知らせ

​​こんにちは。今年の8月に刊行した『おいしいが聞こえる』が、おかげさまで三刷となりました。近ごろはライティングのお仕事もなぜか急にたくさんいただけるようになり、本の売れ行きについてもあまり実感が持てないまま、日々が過ぎていってしまったような気がします。

累計発行部数が三刷で1,000部になると気づいたとき、「発行部数」なのですべての本が売れたわけではないのですが、ようやくお手に取ってくださった方の多さを実感しました。改めて、購入してくださったみなさま、お取り扱いくださっている書店のみなさま、ありがとうございます。

この本(もともとはZINEとして制作していました)をつくる際、20歳の頃の自分と約束していたことについて考えていました。それは、「コンゴ民主共和国の紛争問題に対して、30歳までの10年間は何かしらの行動を続ける」という約束です。

大学一年生の夏休み、ふとSNSを眺めていたら、とある動画が流れてきました。わたしにとっても身近な存在であるスマートフォンがつくられる過程で、たくさんの人が犠牲になっている。そういった問題が、コンゴ民主共和国という国で起こっている、という内容でした。

20代は「メロンパンフェス」というイベントを開催することで、コンゴを支援する活動をしてきました。その中で、まずは自分自身の生活がままならない状態ではだめだと思い、自分に合った仕事と安定した収入の両立をかなえるため、転職を繰り返すことに。

さまざまな仕事を経験して、自分が唯一できることは、文章を書くことなのだと気づきました。その後、仕事として文章の執筆をするようになり、『shokuyokuマガジン』で食のエッセイの連載を持たせていただいたことをきっかけに「食をテーマにしたエッセイなら、いろんなことが書けそうだなあ」と思うようになりました。

「本をつくってみよう」と決めたとき、この本を最初の一歩として、いつか作家としてメジャーデビュー(作家にメジャーデビューという概念があるのかはわかりませんが……)して、わたしがかつてメロンパンフェスで収益の一部をコンゴに寄付していたように、本の売上の一部をまたコンゴに寄付できるようになったらいいな、と思ったのです。

でも、メジャーデビューは、しなくてもいいんじゃないだろうか。今だって、寄付できるんじゃないか。そう思うようになったのです。それは、ちょうど1,000部を発行する節目のタイミングだったからかもしれません。これまではできる限り大きな額の寄付ができる方がいい、と考えていました。でも、たとえば、一冊につき20円分でも寄付ができたらどうだろう。

お金に色はついていないし、たとえば本の売り上げの20円とわたしの財布の中の20円はきっと同じ意味を持つけれど、単純に自分が財布から同じ額のお金を寄付するのと、本の売り上げから寄付するのとでは、その重みは違ってくるはずです。

今回は、以前から支援している認定NPO法人テラ・ルネッサンスさんのコンゴ事業へ寄付することにしました。

ただ、決して「寄付することを目的に本を書き始めた」というわけではありません。寄付をすることは、あくまでも「たくさんの方に届けることができたら、実現したいこと」でした。おもしろがってもらえる、たのしんでもらえる本をつくりたい。そう思って作った本なので、支援のことをあれこれ書いた後で矛盾するようですが、本を購入してくださった方には、とにかくたのしんでいただけたらうれしいです。

三刷の在庫はこれから販売していくので、まだまだこれから頑張らなくてはなりません。引き続き、たくさんの方に届けられるように(そしておもしろがってもらえるように!)、頑張ります。


もうひとつのお知らせ 〈ちいさな傷のある本を、病院へ寄贈します〉

今回刊行した本のなかには、検品の段階で販売するのは難しいと判断した、ちいさな傷のあるものがいくつかありました。それらを定価より安い価格で販売することも検討したのですが、「せっかくならいい状態で手に取ってもらいたいな……」という気持ちがあり、そのままにしてしまっていました。

これらの本を、病院へ寄贈できないか、と思っています。病院である理由は、わたし自身が小さいころからよく持病の検査をしに病院へ通っていたことからです。長い長い待ち時間が退屈で、「本棚にもっと面白い本があったらいいのになあ」と感じたことが何度もありました。

毎回、なにかしらの漫画を買ってもらうことだけが検査に行く日のたのしみでした。ただ、それも必ず待ち時間の途中で読み終わってしまい、結局は病気に関する本や、小さい子向けの絵本などをぱらぱらめくりながら、読みたい本がないなと思っていたのを覚えています。

読んでくださった方のつながりに限りますが、もし病院で働かれていたり、病院に勤務されている知り合いの方がいらっしゃり、「うち(この病院)に置いても良さそうだな」と寄贈先に思い当たりがある場合は、下記のアドレスまでご連絡いただけたらうれしいです。(偶然にも先日、小豆島のTUG BOOKSさんで開催していただいた読書会で病院に勤務されている方がいらっしゃり、寄贈させていただくことが決まっています)

お問い合わせ先:hiramelonpan🥚gmail.com(たまごを@に変えてください)
※数に限りがあるため、在庫がなくなり次第、寄贈は終了とします。



以下では、コンゴ民主共和国の問題について、より詳しくまとめています。コンゴの紛争問題には要因やステークホルダーが複雑に絡み合っており、このわかりづらさが、メディアでも報道されづらいことに起因しているとも言われています。もしより詳しく知りたいと思ってくださった方は、下記をご覧ください。

コンゴ民主共和国で起こっている問題
アフリカには、「コンゴ民主共和国」と「コンゴ共和国」があります(もともとはひとつの国でしたが、植民地時代にコンゴ民主共和国はベルギー領、コンゴ共和国はフランス領になり、それぞれが独立しました)。今回「コンゴ」と言及するのは “コンゴ民主共和国” で起こっていることについてです。

コンゴでは長年紛争状態が続いており、その原因は、豊富な天然資源に由来しています。特に、わたしたちが普段使用するスマートフォンに使われる「タンタル」というレアメタルが紛争の軍資金となって、紛争状態を長引かせてきました。

紛争資源問題の起因
武装勢力がコンゴ東部に蔓延るようになった発端は、1994年のルワンダ虐殺です。終盤、200万人を超えるフツ族難民が国境を超えてコンゴ東部へ逃れましたが、その中には虐殺加害者が約10万人含まれていました。これらの虐殺加害者たちはのちに武装勢力となり、コンゴ東部の地元住民の土地や家畜を奪うなどの暴力行為を行います。これに対抗するため、地元住民も独自の民兵組織を形成し、自衛するようになりました。さらに反政府闘争を行っていた武装勢力までもが合流し、当時の政権を打倒する紛争に発展しました。

ここまでは天然資源が紛争の火種ではなかったと分かります。ところが1996年から二度のコンゴ紛争がはじまると、コンゴ東部の資源算出地域を支配した武装勢力や、周辺国軍によって、大規模な資源の略奪や違法採掘・取引が始まり、その利益が紛争資金として利用されはじめたのです。2003年にコンゴ紛争が終結しても、依然として東部では紛争状態にあります。また、紛争中に形成された違法な資源取引のネットワークが、地元のエスニック対立とも結びついて継続されるようになりました。

コンゴの紛争資源問題が長引く理由
では、天然資源が紛争を誘発しているのかというと、そうではありません。実際に、コンゴと同じ銅の産出国であるザンビアや、ダイヤモンドの産出国であるボツワナでは紛争は起きていないからです。
コンゴの紛争資源問題で特徴的なのは、利用される資源と紛争主体が多いことです。コンゴ紛争と同時期に起こっていたアンゴラ戦争やシエラレオネ戦争では主にダイヤモンドを巡り、おおむね政府対反政府勢力の二極対立として捉えることができました。一方でコンゴでは紛争資源と紛争主体が多く(2013年時点でコンゴ東部で活動する武装勢力は40集団とも)、紛争の構造が複雑化しています。

武装勢力の最大の武器は、女性に対する性暴力
コンゴに蔓延するもっとも残忍な武器が、女性に対する性暴力です。武装勢力の兵士たちは、自らの脅威を見せつけ、コミュニティを破壊するために、女性たちに性暴力をふるいます。殺害するのではなく、あえてレイプを行うのは、彼女の家族や村の人々を貶めることが目的だからです。
コンゴのパンジ病院の医師、デニ・ムクウェゲ氏が4万人以上の性暴力被害者の治療と支援を行ったことで2018年にノーベル平和賞を受賞しましたが、性暴力を武器とする負の連鎖は現在も続いています。

参考文献 - より詳しくコンゴの問題がわかる書籍・映画

映画『ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で戦う医師』(映画館での上映は終了してしまっていますが、下記のサイトでコンゴのことを知るための情報がわかりやすくまとまっています)

映画『魔女と呼ばれた少女』

映画『女を修理する男』

書籍『私は、走ろうと決めた。――「世界最悪の地」の女性たちとの挑戦』

書籍『すべては救済のために デニ・ムクウェゲ自伝』

書籍『資源問題の正義 コンゴの紛争資源問題と消費者の責任』https://www.toshindo-pub.com/book/91385/

コンゴの支援活動を行っている団体
認定NPO法人テラ・ルネッサンス

特定非営利活動法人 RITA-Congo


紛争鉱物を使わない、コンフリクトフリーなスマートフォンを作っている会社もあります。日本にはまだ進出していませんが、wiredをはじめ、さまざまな国内メディアでも近年取り上げられるようになりました。


ここまででコンゴのことをあれこれと書いていますが、わたしは現地で支援活動をしているわけでもなく、なにをしている身でもありません。偶然コンゴの紛争問題を知る機会があり、「スマホという身近なものにつながっているこの問題を解決するために、なにかできないか」と考えてきた、ひとりの市民です。

これを読んでくださった方には、それぞれが当事者意識を持っている社会問題があるかもしれません。コンゴだけでなく、日本もさまざまな問題を抱えています。そういった「それぞれが気に留めている問題」を、みんなで共有し合えたり、ちいさくでも支え合えたらいけたらいいなと思っています。

便利なもので誰かのしあわせが犠牲になってしまう社会ではなく、誰かのしあわせで、他の誰かのしあわせが生まれる社会になりますように。




編集協力:三浦希

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