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#1.自己紹介と全体の流れ【地域ボードゲームをつくろう!】

こんにちは! 2023年3月末にスタートしたプロジェクト「地域ボードゲームをつくろう」でガイドを務める松本です。このプロジェクトでは、愛知県名古屋市の大学生たちが、10か月くらいで、地元に根差した「地域ボードゲーム」の開発に挑戦していきます。

実際のオンラインガイダンスのようす(学生の顔と名前にはボカシを入れてます)

プロジェクトは、愛知県の「愛知建築士会名古屋名南支部」が主催となり、名古屋大学博物館の学生団体「Musaforum」の協力の下で学生が自主参加しています。そして、ゲーム制作のガイドとして私たち東京都の「いたばしの地域ボードゲーム会」が加わっています。

主催:愛知建築士会 名古屋名南支部
協力:MusaForum(名古屋大学博物館 学生スタッフ団体
協力:いたばしの地域ボードゲーム会

ゼロスタートである第1回目のガイダンスは、参加者たちの自己紹介とプロジェクトの進行計画、さらに、あまり耳にしない「地域ボードゲーム」という言葉について説明します。

ここではスライドの一部を抜粋しつつ、実施したガイダンス内容をまとめていきます。

1. 松本さんって何の人ですか?

まずは名古屋の学生の皆さんにとって、ガイドの松本っていうのが完全に謎の人物なので、自己紹介させてもらいます。

地域ネタのボードゲームを作っているというだけでなく、さまざまな地域活動をしている「地域大好きおじさん」としても、ガイドとしてその体験を届けたいと思います。

そもそも今回のガイドとしてお呼びいただいた、その直接の理由は「いたばしの地域ボードゲーム会」という東京都板橋区での地域活動です。
地元ネタのボードゲームを自作したり、市販品もオリジナルも遊べるボードゲーム会を(ほぼ)定期開催しています

ぼくらの活動は、地元の人とボードゲームを通じた交流がメインです。でも近年は外部の方から声をかけていただき、男性の育児参画をテーマとしたゲームの開発を手伝ったり、シリアスボードゲームをテーマとした講座をコーディネートしたりといった活動も広がっています。うれしい!

ゲーム作りはデジタルが先で、ちゃんとしたボードゲーム制作は地域活動を始めてから。そのノウハウはかなり違うけれど、一部には共通しそうなこともあり、とても興味深い。

これまで作成した地域ボードゲームは7個。

この数が多いか少ないかは分かりませんが、社会人として無理なく負担なく続けるのがモットー。ゲーム内容はもちろん、イラストやビジュアルデザインも9割は自分で、レーザーカッター、3Dプリンター、ラミネートを駆使してコマやカードも自作。お金がほとんどかかっていないのは特徴だと思います。販売するわけじゃなく、地域で開催するゲーム会で盛り上がることが主目的ですから、作品1点でいいって点もコスト低に関係していますね。

少し具体的に紹介させてもらいます。

ゲーム中に、高島平や常磐台といった板橋区のまちが侵略者に破壊されると、遊んでいる区民からは歓声だか悲鳴だか分からない声が上がって大変もりあがります。
家事・育児・仕事の分担を話し合うことがゲームの中心。その中核アイデアは青年会議所の方が出し、自分はゲームとして成り立たせる調整や、イラストとデザインなどをカバーしました。
ボドゲ会メンバーの大木さんがゲームデザインの中心に。松本はカードイラストとビジュアルデザインを担当。パッケージのメインイラストは地元のアーティストに描いてもらいました。
初期2作は既存の傑作ゲームをベースに一部改変&板橋要素を追加して制作。こうした場合はさまざまな配慮が必要で「影響」されても「安易な真似」は避ける工夫など今後、検討します。

また、2023年は板橋区で虐待防止を訴える「虐待サバイバーBANK」と協力して虐待防止をテーマとしたゲームも制作予定です。学生たちの制作と併走して、ガイドもいっしょにゲーム制作に四苦八苦していきます。


2. プロジェクト全体の流れを教えて

参加してもらう大学生にとって、このプロジェクトは単位でも義務でもないので、試験期間などは避ける形で計画を立てました。試験は7月以外に、年度末1月〜2月にあるため、まずは12月内に制作を終わらせ、地元で体験会などを実施することをめざします。

基本的には月2回で、試験前後は月1回とし、ガイダンスは合計14回くらいのイメージです。

単位でも義務でもないと言ったのですが、そうは言っても、学生たちがゲームを作るには、学生たち自身がどんどん頭と手を動かしてもらわないとどうにもなりません。ガイドとして学業の妨げになるような課題は避けますが、最低限のアクションを導くために必要なタイミングでは課題を出し、実行を促す形をとっていきます。

課題の量と内容は最低限に抑えたいので、「それだけやっていれば十分!」というより「最低ライン」になる感覚です。余力があればぜひ課題以上の取り組みをしてみてください。


3. 参加者も自己紹介をお願いします

参加者の学生にも1人ひとりに自己紹介をしてもらいます。

ゲーム制作に限らないのですが。アイデア出しや探究などを伴う「完全な正解がない」タイプの仕事や活動って、やる気があればいくらでも際限なく時間をかけることができてしまいます。

そういう活動を個人じゃなく、チームで運用するときは互いの価値観のちがい・事情のちがいを受け止め、寛容になることが大切です。自分には「10時間かける価値がある」と感じる作業も、人によっては10分ですませたい作業だったりするんです。ここの理解が抜けると「あいつ、作業が遅いな」とか「カンタンに済ませやがった」といったすれ違いを起こします。

それぞれに興味関心のばらつきがあり、その事実に寛容になることはとても大切。他人の自己紹介を聞いて「自分とちがうところがあるな」って点をしっかり感じとりましょう。

実際に「互いに寛容になろう!」ってこと以上に、そうした違いは有益な場合がほとんどです。同じゴールを見つめながら、こだわるポイントや得意不得意が重ならない仲間は、これ以上なく頼りになる存在となってくれます。

事前に回答いただいた簡易アンケートでも、参加者たちの興味の方向性が、ゲーム好きの人、デザイン寄りの人、地域寄りの人、さまざまな違いを認めることができます。

学生たちの自己紹介では、今回のプロジェクトに対する興味や関心がどこにあるのか、地域への愛着と課題感などについて共有してもらいました。そして、互いの違いによく耳を傾けてもらうようお願いしました。


4. そもそも「ゲームで学ぶ」って?

ボードゲームを通じて「地域について学ぼう」ってのは一見しても素敵なアイデアです。が、そもそもゲームで遊ぶのではなく、学ぶってのどういうことでしょうか。ここでホントは「学ぶと遊ぶはちがうのか?」「ゲームってなんだ?」とか「今の時代にボードゲームで学ぶ意味」とか、考えたい脇道がいっぱいあるのですが、時間がかかりすぎるので省略します。

今回は次の観点だけ問いかけます。誰かが誰かに、学んでほしいテーマが存在している状況で、その学習したいテーマをボードゲームにするのと座学で伝えるのと、どんなちがいがあるでしょうか?

何かを学ぶ「手段」としてボードゲームを捉えた場合、どんな特徴があるでしょうか?
それぞれの特徴の比較結果はもちろん、座学の先生やゲームの品質でも変わります。ここに挙げた他にも、さまざまな違いを想定することができるはずですが、コストが高いのはほぼ確実です。

いろんな違いを挙げることができますが、実務的に避けられないのはコストです。何かの学習テーマをゲーム化するのって、座学の準備よりもはるかに手間もお金もかかる。
ならば「いったい何のために、わざわざゲーム化するのか」「ゲーム化することで、どんな学びや体験を実現しようとしているのか」を考えることはとても重要です。

くわしい検討は第3回や第4回のガイダンスになる予定ですが、1つのテーマをゲームで伝える意味ってなんだ?という部分は常に心にとめておきたいところです。参考として「カジークジー」での例をスライドで紹介します。

ゲーム体験したある2人が現実の困難に対し「トラブルカード」というキーワードで話し合えました。ゲーム内での対話経験を拡張したこの学びは、座学では難しい一例かもしれません。

これはあくまで一例で、こうした「仮想体験こそがゲームの特性」って主張ではありません。ほかにも複数の特性を想定することはでき、先々の回でそこにふれていきます。

みなさんも今後、ボードゲームを遊んだときに「自分はこのゲームの体験で何を感じたかな?」という問いかけを抱くようにすると、ボードゲーム制作にとても役立つだろうと思います。

話のついでにスライド内で紹介している「超教育協会」の動画URLも貼っておきます。研究では、どうしても実験などを制御しやすいデジタルゲームが中心になるそうで、今回のプロジェクトにかぶらない話題が多いのですが、「教育の世界にゲームが持っている良さをしっかり取り込んでいこう」という観点はとても刺激的だと思います。おすすめ!

5. 「地域ボードゲーム」って何ですか?

さあ、ようやく「地域ボードゲーム」の話題です。

Googleで「地域ボードゲーム」と検索してみると、我々「いたばしの地域ボードゲーム会」がやたらヒットします。これはぼくらの活動が他より活発なのではなく、地域ボードゲームって単語がほぼ使われていない事実を示しています。

でも、地域カルタとかたまに見かけますよね。商店街スゴロクとかも。それじゃあ、あの作品らは何と呼ぶのか? 使われている言葉を調べてみると「地域振興」「地域活性化」のボードゲームと呼ばれるようです。

また、地域に限らず社会課題を扱ったボードゲーム全般は「シリアスボードゲーム」と呼ばれることもあります。

地域ボードゲームでは、地域ネタが純粋なエンタメである領域もあれば、シリアスボードゲームとも言える学びを持っている領域があります。

つまり、振興とか活性化とか、シリアスな目的をまったく持たず、エンタメとして地域ネタに夢中な我々がレアケースであったみたいですね。
実際にぼくらの会の主要メンバーには、そうした地域貢献の前提はなく、地域ネタ=楽しい、地元民同士で超もりあがるって考え方が前提です(だから不謹慎ネタもしばしば)。

話のポイントは、地域ボードゲームを作る=課題を見つけて解決を提案する「必要」がある!とまで思い込まなくてもいいですってことです。まずは楽しみましょう。
地域への愛着や敬意がベースにある限り、シリアスに寄せても地域情報は生きてくるし、エンタメに寄せても地域に対する理解増進といった価値は自然とにじみ出てくるはずです。

どちらが良い悪いではありません。地域ネタにはシリアス面とエンタメ面、いずれにも高いポテンシャルがあるというのが事実なのでしょう。

地域は人の暮らしそのもの。課題はたくさんあるし、楽しさだってたくさんある。ゲームの需要って意味では規模が小さいかもしれませんが、ボードゲームの遊び手を地域の人にしぼったことで、シリアスにもエンタメにもガッチリ取り組める、とても興味深い素材なんです。

学生らは、ぼくが想像していた以上に「名古屋への愛着は薄いけど課題解決としてのボードゲームに関心がある」という方が多くてちょっと意外でした。言われてみれば、名古屋大学の学生は全国から来ていて、名古屋出身の人がメンバーに少ないという実態もあって。それはそれで、ゲーム制作を通じて、地域にどうふれていけるのか、楽しみです。

6. 今日の話題で大切なことは?

第1回目として、何を中心メッセージをまとめようか、迷いました。スライドを準備している段階では、参加者の皆さんの思いや期待も把握できてないって難しさもあります。

でも、地域ネタのボードゲームを作ろう!というちょっと変わったプロジェクトに関心を持ってくれた皆さんへ。まずはその関心をより掘り下げていくための「問い」を出したいと思います。

あなたはどんなモチベーションで地域と向き合いますか?

今回は、なんだかモチベーションの話ばかりしてますね。自分の喜びを探す・気づくってことは一生役立つ経験になると思うので、どんどん掘り下げていってください。

学校の単位にもならず、成績にも反映されず、儲かるわけでも、モテるわけでもない。そのくせ、ものすごく手間がかかる地域ボードゲームづくり。
このプロジェクトをきっかけに、地域との向き合い方が変容すると何が起こるのか。自分なりの答えを探して、楽しんでもらいたいと思います。

地域を知れば知るほどほど、日常はいっそう面白くなります!

問いに対する、松本自身の答えはどうかって話も共有。どういうモチベで地域活動するのか、人それぞれ異なるはずなので、あくまでも自分の場合は…という一例で紹介しました。少しでも参考になればと思います。

次回は、具体的にゲームを作っていく流れと確認しつつ、最初にめざすべきゴール設計について考えます。

また、地域を知る、地域にふれるってどういうことなのか。自分の例を紹介し、学生のみなさんが地域をリサーチするための足がかりを届けることができればと思っています。

次回もどうぞよろしくお願いします。


(参考)使用したスライドなど

ガイダンス当日に使用したスライド全体です。

▼前半パート

▼後半パート


▼音声リハーサル
ガイダンスを実施する1週間くらい前に、スライド未完成の状態で、仲間内での音声リハーサルを実施&収録しています。ガイダンス当日とは話した内容がちょいちょい変わっていたりしますが、ご興味があれば、こちらも合わせてどうぞ。

※音声の冒頭で「名古屋の博物館」と言っているのは名古屋大学博物館の言い間違いです。失礼いたしました。

02:35 松本さんって何の人ですか?
10:30 プロジェクト全体の流れを教えて
18:40 参加者も自己紹介をお願いします
21:55 そもそも「ゲームで学ぶ」って?
27:25 「地域ボードゲーム」って何ですか?
38:30 今日の話題で大切なことは?


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ひらめきドア
板橋区内に、レーザーカッターや3Dプリンターを使って何かを作ったり届けたりしています。また、そうした道具を使える人を増やしたいという思いで、講座などもちょいちょい開催しています。サポートいただけた場合は、こうした機材費や会場費などに利用させていただきます。

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