密やかな果物
夕食の準備に、
にんじんの皮を剥きながら
こそりと、ひと口
柿を食べた
溢れる甘さに
鼻歌を
家族の知らない
蜜の味
食後のデザートに
もったいぶって皿に盛る
柿は
気取って黙っている
役割を終えた
空の、
皿を片付ける
流しの種と
目配せをする
背中に聞き慣れた声が
話しかける
わたしはすまして
それに応える
柿の亡き骸を
手に含むと
甘さが頬の内側に
蘇った
あの
密やかな時を
にじませながら
夕食の準備に、
にんじんの皮を剥きながら
こそりと、ひと口
柿を食べた
溢れる甘さに
鼻歌を
家族の知らない
蜜の味
食後のデザートに
もったいぶって皿に盛る
柿は
気取って黙っている
役割を終えた
空の、
皿を片付ける
流しの種と
目配せをする
背中に聞き慣れた声が
話しかける
わたしはすまして
それに応える
柿の亡き骸を
手に含むと
甘さが頬の内側に
蘇った
あの
密やかな時を
にじませながら