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くろねこフランツ よもやま話①

ネタバレがあるので、本編未読の方は注意です。

今回は、お礼と歌詞と「理想」の話です。

第23回のラストで、港町のヒトたちが歌う
「勇気の歌」は、ぼくの考えた歌ではありません。

『You'll Never Walk Alone』
by Richard Rodgers and Oscar Hammerstein II

When you walk through a storm
Hold your head up high
And don't be afraid of the dark

At the end of the storm
There's a golden sky
And the sweet silver song of a lark

Walk on
Through the wind
Walk on
Through the rain
Though your dreams be tossed and blown

Walk on (walk on)
Oh, walk on (walk on, hold you head up)

Walk on (walk on)
Walk on (walk on up)
With hope (walk on)
Hope in your heart (walk on up)
And you'll never walk alone
You'll never walk alone (walk through the wind, walk through the wind)
You'll never walk alone

※musical number from Broadway musical "Carousel"

もともとは、1945年に公開されたイギリスの
ミュージカル映画『回転木馬』のために作られた歌で
その後、多くのアーティストがカバーして世界中に
広まったものです。

サッカーでは、イングランドのリヴァプールFCの
サポーターが試合前に歌うことで有名です。
(他の国のクラブのサポーターも歌ってます)

歌詞の日本語訳は、YouTubeやブログなどで
色々な人が書かれていますが、
ぼくがいちばん好きな訳詞は、
ぼくがいちばん好きな歌手の The Endさんが
ライブで歌っていたバージョンです。

The Endさんは、長野を拠点に世界制覇を目論む
シンガーソングライターで、歌だけではなく
人間的にも魅力的なヒトなのです。

今回、訳詞をお借りしたいと相談したところ
快くOKをくださいました。
その際、ぼくが迷っていたのは、歌詞の一節。

Walk on Walk on With hope

直訳すれば
歩き続けよう 歩き続けよう 希望を胸に
となりますが、The Endさんは
行こう 歩こう 理想を胸に
とライブで歌っていたのです。

希望ではなく、理想。

フランツたちのあの場面では
「希望」のほうが良いのではないかと
ぼくは最初は思いました。

変更を相談すると、
「ヒトそれぞれの受け取り方がある」と
The Endさんは快く承諾してくれました。

The Endさんも最初は「希望」と訳して
歌っていたそうですが、
「歌としての表現」を模索する中で
「理想」と変えたと教えてくれました。

その上で、
「文字表現と音楽表現には違いがある。
 たとえば手紙で伝えるなら選ぶ言葉も
 変わってくる」
と言ってくれたのです。

そこで、ぼくは一度は「希望」にしました。
字面が明るいような感じがしたのです。

でも、希望という言葉を分解すると
「希な(まれな)」「望み」です。
極端に言えば――奇跡。

でも、フランツは奇跡を待つのではなく
自分で「切り開こう」としている場面です。
そのための武器は強い信念のほうがいい。
だったら「理想」のほうが合うのではないかと
思えたのです。

「希望」は、ふわっと暖かい「光」
「理想」は、硬くて強い「武器」
そんな風なイメージだったので、
嵐に「知恵と勇気」だけで戦いを挑むフランツに
「理想」を持たせたのでした。

あらためて、The Endさんにお礼を申し上げます。
素敵な訳詞をありがとうございました。

The Endさんは、CDもほとんど発売することなく
基本的にライブでしか聴けないシンガーです。
動画のSNSでの投稿もNGな方なのですが、
ライブの公式映像がほんの少しだけ
YouTubeにもあります。
興味がある方は、「The End 引き潮」で
ググってみてください。

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また、唯一の公式音源
「The End ライブ&トリビュート
 だってあの娘が好きって言ったんだもの」は
amazonにもあります。

ちなみに、あの場面で出てくる
赤いハットに赤いギターの「しろねこ」は
The Endさんへのオマージュです。

長くなりましたが、
最後にThe Endさんバージョンの歌詞を
全文載せておきます。

嵐の中でも 顔を上げていよう
暗い闇夜も 恐れるな
やがて空から 光がさせば
小鳥たちの歌も ひびくはずさ
雨の中で 風の中で
キミの思いがおびやかされても
行こう 歩こう 理想を胸に
キミをひとりぼっちにさせたりはしないさ
You'll never walk alone

次回は、もんじさんのあとがきです。
明日、3/29(月)公開予定です。

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