短歌についてのメモ2
前回、「短歌についての雑感」というタイトルで書いたのですが、雑感という言葉がなんとなく引っかかっていたので、「短歌についてのメモ」にしました。
Xに書き留めたものを、読みやすくして残しています。元の投稿から、読みにくい箇所や文章がおかしいところはちょこっと手直ししています。
「塔」11月号 特集「歌と色彩」
「塔」11月号 特集「歌と色彩」で森山緋紗さんが茶色から「いまわれはうつくしきところをよぎるべし星の斑のある鰈を下げて/葛原妙子」を紹介されていた。
森山さんは「うつくしきところ」とは、場所というよりも今この一瞬のことのように感じたという。この一文が印象に残った。
角川「短歌」12月号 特別企画「うたの宇宙」で河野美砂子さんも同じく鰈の歌を取り上げていた。
河野さんは〈或る場所と或る時間が、或る人と交わる。奇跡的な一点〉と表現して、この歌から大きな力に促されての、運命のようなものを読んでいる。
ご自身の歌の中からその「一点」を書いたものとして 部屋の暗さが空とつりあふ時刻ならながしつぱなしの水あふれたり/河野美砂子 を引いている。
空と部屋の暗さの加減に訪れる均衡は、一日のうちにたった一点のみの奇跡の瞬間。注がれる水はその一点にとどまることができない。なんとなくだけどThe Beatlesの「Across the Universe」冒頭を思い出した。自分自身もまた宇宙の或る一点だということに気づく/気付かされる一瞬、あるいはそうであるという感覚を持つ人の詠んだ歌がもっとないだろうかと探してみたくなる。
そして自分はもしかしたら奇跡の一点を見逃し続けているのではないか、うつくしきところをよぎっているのではないか、と日々の中に浸している感覚器官たちをもう少し鋭敏にしたいと思った。どうすればよいという正解もないし心がけの積み重ねでしかないけれど、いつかどこかにたどり着くように、純粋な心でいたい。