見出し画像

図解!原価計算基準二四【総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準二一~基準二三で、単純総合原価計算・等級別総合原価計算・組別総合原価計算を規定しています。そして基準二四で、これら総合原価計算の「完成品総合原価」と「期末仕掛品原価の算出」について規定しているということです。

単純総合原価計算等級別総合原価計算および組別総合原価計算は、いずれも原価集計の単位が期間生産量であることを特質とする。すなわち、いずれも継続製造指図書に基づき、一期間における生産量について総製造費用を算定し、これを期間生産量に分割負担させることによって完成品総合原価を計算する点において共通する。したがって、これらの原価計算を総合原価計算の形態と総称する。
総合原価計算における完成品総合原価期末仕掛品原価は、次の手続により算定する。
(一)  まず、当期製造費用および期首仕掛品原価を、原則として直接材料費加工費とに分け、期末仕掛品の完成品換算量を直接材料費と加工費とについて算定する。
期末仕掛品の完成品換算量は、直接材料費については、期末仕掛品に含まれる直接材料消費量の完成品に含まれるそれに対する比率を算定し、これを期末仕掛品現在量に乗じて計算する。加工費については、期末仕掛品の仕上り程度の完成品に対する比率を算定し、これを期末仕掛品現在量に乗じて計算する。

二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価

 総合原価計算ですが、製造原価を直接材料費と加工費に分けて計算するのがポイントです。なぜ製造原価を直接材料費と加工費に分けるのでしょうか?理由は、原価の発生のしかたが異なるからです。
 下図①で見ていきます。まず直接材料費。主に製品の本体となる材料(素材)なので、通常は製品を作り始めるときに、完成までに必要な量が全て投入されます。したがって、加工が進んだからといって、製品1個分の直接材料費が増える訳ではありません。
 次に加工費。加工が進むにつれて発生する原価なので、上図①でいいますと、10個分の製品の場合、加工進捗度30%で3個、80%で8個と加工進捗度を掛けた完成品換算量で、月末仕掛品の数量を計算します。

図①:総合原価計算は大量生産形態に適用されます。

 ところで「総合原価計算」の特徴を知るには「個別原価計算」と比較することで、その違いが明確になるかもしれません。下図②をご覧ください。

図②:個別原価計算と総合原価計算の違いをイラスト図解してみました。

 「個別原価計算」は基準三一以降で詳しく説明しますが、仕事(オーダー)ごとに発行された製品オーダーに原価を集計する計算方式で、特定の製品を作るために用意したトロッコ(製品オーダー)に積まれた原価を計算するイメージになります。
 これに対し、「総合原価計算は会計的だ」と説明される場合があります。というのも、生産は一定期間継続して行われ、全ての生産が完了するまで生産数量は確定せず、一定期間(1ヶ月や1年間)で区切って、この期間を原価集計単位として、人為的に製品原価を計算するので「会計的」だと言われます。更には製品原価の後ろに生産物が存在しないのも特徴的です。

 総合原価計算の計算手続きの説明ですが、続きを見ていきましょう。

(二)  次いで、当期製造費用および期首仕掛品原価を、次のいずれかの方法により、完成品と期末仕掛品とに分割して、完成品総合原価期末仕掛品原価とを計算する。
1  当期の直接材料費総額(期首仕掛品および当期製造費用中に含まれる直接材料費の合計額)および当期の加工費総額(期首仕掛品および当期製造費用中に含まれる加工費の合計額)を、それぞれ完成品数量と期末仕掛品の完成品換算量との比により完成品と期末仕掛品とにあん分して、それぞれ両者に含まれる直接材料費と加工費とを算定し、これをそれぞれ合計して完成品総合原価および期末仕掛品原価を算定する(平均法)。
2  期首仕掛品原価は、すべてこれを完成品の原価に算入し、当期製造費用を、完成品数量から期首仕掛品の完成品換算量を差し引いた数量と期末仕掛品の完成品換算量との比により、完成品と期末仕掛品とにあん分して完成品総合原価および期末仕掛品原価を算定する(先入先出法)。
3  期末仕掛品の完成品換算量のうち、期首仕掛品の完成品換算量に相当する部分については、期首仕掛品原価をそのまま適用して評価し、これを超過する期末仕掛品の完成品換算量と完成品数量との比により、当期製造費用を期末仕掛品と完成品とにあん分し、期末仕掛品に対してあん分された額と期首仕掛品原価との合計額をもって、期末仕掛品原価とし、完成品にあん分された額を完成品総合原価とする(後入先出法)。

二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価

 期末仕掛品原価の決定は、基準一一(材料費計算)の消費単価の計算と同様、各種計算方法が定められています。平均法、先入先出法、そして後入先出法です。

図③:いずれかの方法によって、「完成品総合原価」と「期末仕掛品原価」とを計算します。

 基準二四は他にも、実務上の負担に鑑みて「4以降」も定めています。

4  前三号の方法において、加工費について期末仕掛品の完成品換算量を計算することが困難な場合には、当期の加工費総額は、すべてこれを完成品に負担させ、期末仕掛品は、直接材料費のみをもって計算することができる。
5  期末仕掛品は、必要ある場合には、予定原価又は正常原価をもって評価することができる。
6  期末仕掛品の数量が毎期ほぼ等しい場合には、総合原価の計算上これを無視し、当期製造費用をもってそのまま完成品総合原価とすることができる。

二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

いいなと思ったら応援しよう!