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図解!原価計算基準四一【標準原価の算定】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準四一は標準原価の算定です。イラストでは標準原価に加えて、実際原価と差異分析を合わせて示すことで、標準原価のイメージがつきやすいように説明してまいります。

(一)  標準直接材料費

標準原価は、直接材料費、直接労務費等の直接費および製造間接費について、さらに製品原価について算定する。
原価要素の標準は、原則として物量標準と価格標準との両面を考慮して算定する。
(一)  標準直接材料費
1  標準直接材料費は、直接材料の種類ごとに、製品単位当たりの標準消費量と標準価格とを定め、両者を乗じて算定する。
2  標準消費量については、製品の生産に必要な各種素材、部品等の種類、品質、加工の方法および順序等を定め、科学的、統計的調査により製品単位当たりの各種材料の標準消費量を定める。標準消費量は、通常生ずると認められる程度の減損、仕損等の消費余裕を含む。
3  標準価格は、予定価格又は正常価格とする。

四一 標準原価の算定
図①:直接材料費差異の分析図

 基準の「物量標準と価格標準との両面を考慮して算定」とあります通り、上図①では「標準消費量×@標準単価=標準直接材料費」で算出します。
 なお他の実際原価と差異分析につきましては、後述の標準直接材料費と製造間接費も同様、別途、基準『四六 標準原価計算制度における原価差額』にて詳細説明をしてまいります。

(二)  標準直接労務費

(二)  標準直接労務費
1  標準直接労務費は、直接作業の区分ごとに、製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め、両者を乗じて算定する。
2  標準直接作業時間については、製品の生産に必要な作業の種類別、使用機械工具、作業の方法および順序、各作業に従事する労働の等級等を定め、作業研究、時間研究その他経営の実情に応ずる科学的、統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は、通常生ずると認められる程度の疲労、身体的必要、手待等の時間的余裕を含む。
3  標準賃率は、予定賃率又は正常賃率とする。

四一 標準原価の算定
図②:直接労務費差異の分析図

 ・・・上図の①と②は殆ど同じですよね。というのも基準「物量標準と価格標準との両面を考慮して算定」とあります通り、直接労務費は直接労務費と同様の考えで差異分析をしているからです。上図②では「標準作業時間×@標準賃率=標準直接労務費」で算出します。

(三)  製造間接費の標準

(三)  製造間接費の標準
製造間接費の標準は、これを部門別(又はこれを細分した作業単位別、以下これを「部門」という。)に算定する。部門別製造間接費の標準とは、一定期間において各部門に発生すべき製造間接費の予定額をいい、これを部門間接費予算として算定する。その算定方法は、第二章第四節三三の(四)に定める実際原価の計算における部門別計算の手続に準ずる。部門間接費予算は、固定予算又は変動予算として設定する。
1  固定予算
製造間接費予算を、予算期間において予期される一定の操業度に基づいて算定する場合に、これを固定予算となづける。各部門別の固定予算は、一定の限度内において原価管理に役立つのみでなく、製品に対する標準間接費配賦率の算定の基礎となる。
2  変動予算
製造間接費の管理をさらに有効にするために、変動予算を設定する。変動予算とは、製造間接費予算を、予算期間に予期される範囲内における種々の操業度に対応して算定した予算をいい、実際間接費額を当該操業度の予算と比較して、部門の業績を管理することを可能にする。
変動予算の算定は、実査法、公式法等による。
(1)  実査法による場合には、一定の基準となる操業度(以下これを「基準操業度」という。)を中心として、予期される範囲内の種々の操業度を、一定間隔に設け、各操業度に応ずる複数の製造間接費予算をあらかじめ算定列記する。この場合、各操業度に応ずる間接費予算額は、個々の間接費項目につき、各操業度における額を個別的に実査して算定する。この変動予算における基準操業度は、固定予算算定の基礎となる操業度である。
(2)  公式法による場合には、製造間接費要素を第二章第四節三三の(四)に定める方法により固定費と変動費とに分け、固定費は、操業度の増減にかかわりなく一定とし、変動費は、操業度の増減との関連における各変動費要素又は変動費要素群の変動費率をあらかじめ測定しておき、これにそのつどの関係操業度を乗じて算定する。

四一 標準原価の算定

 製造間接費の標準配賦率は、1年間の製造間接費の予算額を見積り、これを1年間の基準操業度(直接作業時間などの標準配賦基準値)で割って求めます。1年間の製造間接費の予算額の設定方法には「固定予算」と「変動予算」があります。下図③の左側の説明になります。
 固定予算とは、基準操業度における製造間接費の予算額を設定したら、たとえ実際操業度が基準操業度と違っていたとしても、基準操業度における予算額を製造間接費の予算額とする方法をいいます。
 変動予算とは、さまざまな操業度に対して設定した予算額を製造間接費の予算額とする方法をいいます。

 次に下図③の右側の説明に入ります。基準四一では「実査法」と「公式法」を具体例に挙げていますが、公式法に沿って説明します。
 変動予算の中でも、製造間接費を変動費(操業度に比例して発生する原価)と固定費(操業度に比例せず、固定的に発生する原価)に分け、比例の公式を用いて製造間接費の予算を設定する方法を公式法変動予算といいます。公式法変動予算では、変動費について変動費率(操業度1時間あたりの変動費)を計算し、これに実際操業度を掛けた金額を変動費の予算額とし、変動費予算額と固定費予算額を合計して実際操業度に対する予算額(予算許容額)を決定します。

図③:製造間接費の差異分析図

(四)  標準製品原価

(四)  標準製品原価
標準製品原価は、製品の一定単位につき標準直接材料費、標準直接労務費等を集計し、これに標準間接費配賦率に基づいて算定した標準間接費配賦額を加えて算定する。標準間接費配賦率は固定予算算定の基礎となる操業度ならびにこの操業度における標準間接費を基礎として算定する。
標準原価計算において加工費の配賦計算を行なう場合には、部門加工費の標準を定める。その算定は、製造間接費の標準の算定に準ずる。

四一 標準原価の算定

 以上(一)~(三)を集計することになりますが、標準製品原価の計算の流れは、実際製品原価の流れに対応しています(下図④)。また下図⑤のように標準原価の流れで、最後の「原価報告」につなげるという訳です。

図④:標準製品原価の計算の流れは、実際製品原価の流れに対応しています。
図⑤:標準原価の流れ

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>


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