基準七より『第二章 実際原価の計算』に入っていきました。そして『第一節 製造原価要素の分類基準』。第一節イコール『八 製造原価要素の分類基準』になってきますので、ちょっと長めの基準になります。
ご覧のとおり、基準八から実際の計算の内容を規定しています。『第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準』までで規定していますように、原価要素を「製造原価要素」と「販売費および一般管理費」の要素に分類します。そのうち「製造原価要素」に当てはまってくると、下図①の3ステップを踏むことになります。
上図①に沿って、製造原価要素の分類をしていきましょう。
Step.1:費目別計算
・原価要素に科目を設定して分類する
・操業度に関係させて変動費と固定費に分ける
・管理可能費と管理不能費に分ける
・直接費と間接費に分ける
Step.2:部門別計算
・部門別に集計する
Step.3:製品別計算
・製品別、仕掛品別に集計する
以下、改めて基準八に沿って、ポイント解説していきます。
(一) 形態別分類
形態別分類とは、原価を見た目や種類によって分類する基準の事です。原価要素は大きく材料費、労務費および経費の3つのグループに分類します。
ちなみに原価計算では、一定の生産物をつくるために消費する材料や時間などの量を「原単位」といいます。原単位は原価管理上最も重要な情報ですが、モノによって測定単位が異なりますから、原単位同士を比較することはできません。そこで「貨幣価値」の登場。物量を貨幣価値に置き換えて会計帳簿に反映させることで、会社の状態と成果が可視化されます。
貨幣価値で測定された「原単位」。費目と財務会計上の勘定科目を一致させ、原価計算の結果を会計帳簿に反映させることで、原価計算と財務会計は完全に連動することになります。
(二) 機能別分類
機能別分類とは、原価が経営上のどのような機能(働き)のために消費されたか、あるいは原価が経営上どのような役割で消費されたのか、という観点による分類です。ちなみに機能とは、ある物が本来備えている働き、全体を構成する個々の部分が果たしている固有の役割のことです。ざっくり説明しますといわば「会社上の部門や組織」ということになります。
(三) 製品との関連における分類
製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを直接費と間接費とに分類します。下図⑤では、費目別計算から部門別計算を直接費=赤、間接費=青にビジュアル化しています。
(四) 操業度との関連における分類
操業度との関連における分類とは、原価要素を操業度との関係で変動費と固定費に分類する方法です。操業度とは、生産設備、従業員数、販売体制など経営をおこなう能力を一定としたとき、その利用度のことです。操業度の基準として、機械時間、生産量、直接作業時間、販売数量、売上高などが用いられます。
ここで、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素のことで、また固定費とは、操業度の増減にかかわらず大きく変化しない原価要素のことです。下図⑥では設備部門を具体例に「操業度との関連における分類」をイラスト図解してみました。
(五) 原価の管理可能性に基づく分類
原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生を管理者が管理しうるかどうかにより、管理可能費と管理不能費に分類することで、この分類は予算管理や価格交渉と密接に関係します。
部長や課長といった原価部門責任者には、与えられた仕事を行ううえでの責任と権限が与えられますが、仕事を達成するにはお金がかかります。この支出金額につき科目別に使える上限が予算によって決められているということです。社外にも、価格交渉の点で同様のことが言えます。意外にも下図⑦のように設備費が価格交渉されるケースが多いので、原価の管理可能性に基づく分類が重要になってきたりします。
特に上図⑦は、近年の「値上げ価格交渉」にも大きく関わってきますので、関係者の方は「原価計算基準なんて古臭い!」と吐き捨てずに、きちんと向き合っていただきたいなぁ~と感じています。
<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>