図解!原価計算基準二【原価計算制度】
基準二「原価計算制度」を見る前に、基準一「原価計算の目的」のポイントを見ていきましょう。両基準の関係性が見えてくると思います。
1.基準一『原価計算の目的』のポイント
基準一では『原価計算の目的』を規定していますが、一般に原価計算は大きく「制度としての原価計算」と「特殊原価調査」に分かれます。そして主に原価計算基準で規定しているのは「制度としての原価計算」です。
「制度としての原価計算」・・・会計帳簿に反映
(ざ)財務諸表の適切な作成(一)
(げ)原価管理(三)
(よ)予算管理(四)
「特殊原価調査」・・・会計帳簿外
(か)価格計算(二)
(け)経営上の意思決定(五)
2.制度としての原価計算とは
基準二前半では「制度としての原価計算」の目的を想定しています。「財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行なわれる計算体系」といわれていますとおり、原価計算は財務会計のサブシステムといわれています。
下図①はそのイメージ図になりますが、橙色部分が「制度としての原価計算」です。
次に実際原価計算制度と標準原価計算制度について規定していますが「標準原価計算制度」の内容を中心に解説を入れてまいります。
まず実際原価計算制度と標準原価計算制度の基本的な流れについて、下図②は実際原価計算制度の計算の流れになりますが、標準原価計算制度もこれに対応しています。
そして下図③は、標準原価計算と実際原価計算をおこない、その原価差異を計算・分析して、経営管理者に報告する一連の流れになります。
実際に発生した原価(実際原価)をもとに製品の原価を計算する方法が実際原価計算です。これに対し標準原価計算は、あらかじめ目標となる原価(標準原価)を決め、標準原価をもとに製品の原価を計算する方法です。
標準原価計算では、予め目標となる原価(標準原価)を決めますが、この標準原価は無駄や非効率を省いた場合の原価です。ですから、標準原価と実際原価を比べ、その差異を比較することによって、無駄や非効率を改善することができるのです。
ちなみに標準原価計算のルーツは、20世紀初頭アメリカの能率技師F・W・テーラー(1856-1915年)の「科学的管理法」にあります。19世紀の工場では、作業は労働者に任されていました。当時は出来高制で、彼らが作業能率を上げると経営者は賃率を引き下げて労働者へ分配を減らそうとしました。このことが、賃金制度に対する労働者の不信を生み、慢性的な怠業を招きました。
そこで、テーラーは、労働者のやる気を引き出し、高能率、高賃率を実現するために、「公正な1日の作業量」である課業の設定、時間・動作研究による作業の効率化、職能別職長制度、指図票制度などの管理方法を考え出しました。
テーラーは「作業量」という原単位についての標準を提唱しましたが、「原価についての標準」を提唱したのは、価格的管理法の普及に努めた能率技師のH・エマーソン(1853-1931年)でした。これが、標準原価計算の始まりです。こうして、テーラーの科学的管理法は標準原価計算に取り組むことで世界中に広がりました。
3.特殊原価調査
最後に「制度としての原価計算」以外の「特殊原価調査」をご紹介します。価格計算や経営上の意思決定に加え、差額原価、機会原価、付加原価等にも「特殊原価調査」として原価計算が使用されます。
<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>