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図解!原価計算基準一二【労務費計算】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準一一以降は、費目別計算を形態別分類に基づき「基準一一材料費計算」「基準一二労務費計算」「基準一三経費計算」と規定されています。

図①:経営資源の原単位からスタートする「形態別分類」を基礎とします。

 今回「基準一二労務費計算」を見ていくことにします。基準に入る前に「基準八製造原価要素の分類基準」で見てきました「(三)  製品との関連における分類」で労務費を分けると以下の通りになります。
〇 直接労務費:ある製品にいくらかかったかが直接的に把握できる労務費。直接工の直接作業賃金は直接労務費になります。
〇 間接労務費:ある製品にいくらかかったかが直接的に把握できない労務費。直接工の直接作業賃金以外の労務費はすべて間接労務費になります。

図②:費目別計算から部門別計算を直接費=赤、間接費=青にビジュアル化しています。
図③:ある製品にいくらかかったかが直接的に把握できる直接工の直接作業賃金=直接労務費。

 そして、直接労務費は製造オーダーに集計した直接作業時間に賃率を乗じて計算します。一般的に、直接労務費の現場管理は(賃率は経理部門で計算するので)下図④のとおり要員数と残業時間で行いますが、理論上は、以下の計算式によって算出します。

 直接作業時間×賃率=直接労務費

図④:理論上は「直接作業時間×賃率=直接労務費」で計算します。

 改めて「基準一二労務費計算」を途中まで見ていきましょう。

(一) 直接賃金等であって、作業時間又は作業量の測定を行なう労務費は、実際の作業時間又は作業量に賃率を乗じて計算する。賃率は、実際の個別賃率又は、職場もしくは作業区分ごとの平均賃率による。平均賃率は、必要ある場合には、予定平均賃率をもって計算することができる。

一二 労務費計算

 ところで、原価計算期間は毎月1日から月末までの1ヶ月ですが、給与対象期間は「毎月20日締めの25日払い」や「毎月15日締めの20日払い」というように、必ずしも毎月1日から月末までの1ヶ月ではありません。
 このように、原価計算期間と給与対象期間にズレが生じる場合には、ズレを調整し、原価計算期間に対応する金額を賃金や給料の消費額として計上します。

図⑤:給与対象期間→原価計算期間に調整します。

 上図⑤の例で説明しますと「毎月20日締めの25日払い」を採用している企業で5月20日締めの5月25日払いで1,000円の支払いがあった場合、給与対象期間では1,000円の支払いになります。そこで原価計算期間である5月1日~5月31日に調整するために以下の計算を行います。

1,000円(5月度給与対象期間)+200円(5月未払)ー100円(4月未払)
=1,100円(5月度原価計算期間)

 改めて「基準一二労務費計算」の残りを見ていきましょう。

(一) 直接賃金等は、必要ある場合には、当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算することができる。
(二) 間接労務費であって、間接工賃金、給料、賞与手当等は、原則として当該原価計算期間の負担に属する要支払額をもって計算する。

一二 労務費計算

 そこで最後に注意が必要なのは、基準でいう「要支払額」とは、実際に当月に従業員に支払った金額(当月支払額。上図⑤でいう1,000円)ではなく、原価計算期間に対して支払われるべき金額(当月”要”支払額。上図⑤でいう1,100円)という意味です。原価計算期間に対応する金額を賃金や給料の消費額として計上します。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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