介護職と死
死を目の当たりにしたとき、なぜ悲しくなるのか。
生と地続きであるはずの死は、生とは遠く、例えば月の裏側のように
暗く冷たく感じた。
介護の仕事を始めて半年以上過ぎており、よくよく覚悟していたつもりだった。その方はゆっくりと亡くなった。
その方がニカっと笑った顔や、こちらが何をいっているのかわからなくても
返事だけはしっかりとされるその律儀さに、これまでの人生の片鱗を感じていた。
その方がたった半年の間に”たいせつなひと”になっていたのだろうか。
”たいせつなひと”になっていたとして、その方の死はなぜ悲しいのか。
もう会えない、話せないから?ただ単に死を恐怖しているからか?
自分の一部が死んだような感覚。こころにアイスピックを深く刺されたような痛み。
こんなの辛すぎる、と何度も思う。私は人が最期を迎える場所で仕事をしているから、これからこの問いが繰り返されるんだ。
ご家族が、亡くなったその方の前で悲しんでいた。共有した時間と生まれた感情の多さに比例して、”たいせつなひと”の存在が大きくなるのではないだろうか。ご家族の苦痛は計り知れない。
自然なことであるはずなのに、死に恐怖を感じた一日だった。