ラーメン山岡家未体験者のためのガイドライン
はじめに
ラーメン山岡家。主に東日本から北海道にかけてFC展開をする、名前の知れたラーメン専門店だ。都市部にも存在するが、その多くはロードサイド型として主要国道沿いなどに出店している。大半は24時間営業だ。深夜の運送ドライバーや、飲み帰りの酔客などの支持を集め、コンスタントに店舗を増やし続けている。赤バックに白文字のインパクトある看板を見かけたことの有る方も多いだろう。
私が住んでいるのはそんな山岡家の本社が存在する北海道は札幌市、いわば本拠地だ。しかし、人と話してみると意外にも山岡家を経験したことがない、という方が多い。根本的にラーメンが嫌いだと言うなら話はわかるが、ここはラーメン激戦区の札幌である。選択肢は数多く有るが、ぜひ今後はその一つに山岡家を加えて頂きたい。
山岡家の特徴
そもそも山岡家とはいったいどのようなラーメンを提供している店なのか。これは基本コンセプトとして公式HPにこのようにまとめられている。
・豚骨と水だけを4日間かけて煮込んだスープ
・特製の極太ストレート麺
・スープ、チャーシューなどは各店舗で仕込み
麺の硬さ、油の量、味の濃さはカスタマイズ可能。そして基本トッピングはチャーシュー・ほうれん草・のり3枚、小口ネギといった具合だ。実際にご覧いただいたほうが早い。
醤油ラーメン(のり5枚増し)
こう聞くと、これは家系ラーメンと何が違うのか?と感じる方も居るだろう。確かに要素は似ているが、スープには鶏油(チーユ)ではなくラード(豚脂)を使用している点、発祥も横浜ではなく茨城県牛久市だ。吉村家系列との関わりもない。また、私の記憶では数年前までは山岡家でも麺の湯上げに平ザルを使用していたはずだが、近年は「テボ」に切り替わっている。
家系ラーメンの定義、詳細に関してはこちらの動画を観ていただければ完璧に理解できる。
(出典: IKKO'S FILMS)
以上の点から、山岡家は家系ラーメンの基本フォーマットを取り入れつつも、独自の進化を遂げたラーメンであるということが解る。
山岡家のシステム
ここからは、山岡家を経験したことがない方が、どうすれば楽しく美味しく味わえるかを伝えていこうと思う。まず、山岡家は知っているが入ったことがないという人に理由を聞くと高確率で返ってくる答えがこれだ。
「店が臭い」
私のようなヘヴィーユーザーともなれば、あの匂いで食欲が湧いてくるほどのものであるが、もちろん一番初めは私もそう感じていた。前述の通り豚骨を4日間炊き込み続けているのだ。大丈夫、こればかりは慣れていくしかない。問題ない。我慢してください。全国でも最強レベルと言われる札幌南2条店をクリアできたのなら、何も恐れることはない。
なお、よく「外は臭いけど、店の中は普通だよ!」と誘う人がいるが関心できない。それはあなたが麻痺しているだけで、店の中で炊き込んでいるのだから店の中も当然に臭い。
店内には券売機が有り、そこで食券を購入する。コミュ障にも非常に優しいシステムだ。ここで何を注文するかであるが、断言する。はじめは醤油 or 特製味噌 一択である。限定メニューなどもあるが今はおいておこう。ただ一つおすすめするのが「のり増し」だ。海苔が5枚増える。これがどのように良いかというのは後ほど説明しよう。
ここであなたはひとつの新たな邂逅を果たす。食券と共に現れる、それこそが山岡家最大の特徴「サービス券」である。
これはラーメン1回の注文ごとに1枚発行され、集めた枚数によってメニューと無料で引き換えてくれるというもので、定期的に訪れている人にとっては嬉しいシステムだ。ちなみにこちら、50枚集めると山岡家オリジナルTシャツと引き換えることができ、一部ファンは熱心にTシャツを集めている。
だが私は過去に何百枚というサービス券を手にしたが、Tシャツに引き換えたことは一度もない。確かにノベルティ的な価値としては特別なのだろうが、Tシャツのためにラーメンを食べているのではない。この味を一度たりとも余すこと無く、己の体に取り込み、血肉とする喜びこそが私のポリシーだ。私の体の脂肪の1%くらいは山岡家のラードで出来ている。なのでサービス券は溜まったらラーメンに引き換えている。私にTシャツのような気ぐるみは必要ない。真のフリークであれば黙って敬愛と忠誠の深さで示せ。
カスタマイズ
話を元に戻そう。案内された席に座り、店員に食券を渡すとこのような質問をされる。
「お好みございますか?」
券売機でコミュ障に優しいかと思いきや、急にアナログなコミュニケーションを求められる。これは、麺の硬さ・油(ラード)の多さ・スープの味の濃さをそれぞれ調整できるシステムで、例えば「麺かため、油すくなめ、味ふつう」と伝えれば、その通りにカスタマイズされたラーメンが提供される。また、LINE登録済み(※)の場合、このタイミングでWeb限定クーポンを提示することで、限定トッピングを追加してもらうことが可能だ。
(※ 2021/8現在、メール会員システムは終了し、店舗ごとにLINE登録をするシステムになっている。LINEで送られてくるクーポンを提示し、店員さんの指示通りに「使用済みにする」の動作を行えばOKである。なお、登録した店舗ごとにクーポンは別で発行されるので注意。)
卓上にはニンニク・豆板醤・胡椒といった調味料が並ぶ。先程カスタマイズしたラーメンを、これを用いてさらにチューンナップしていく。これも山岡家の醍醐味だ。チューンナップには様々な好みがあるが、先述の通り、山岡家は家系ラーメンとの共通点も多いことから、家系のチューンナップも応用することが可能だ。家系ラーメンといえば知らない人はいないであろう、RED中村氏による名チューニング「RED喰い」の提案は、ひとつの教科書として永遠に輝き続けるバイブルだ。ぜひ以下を参考にして頂きたい。
硬め・濃いめ・多め、ニンニク大量投入
先ほど、のり増しをおすすめしたのはこの様な理由である。山岡家に無い調味料もあるが、このニンニクのライブ感はぜひとも体感して頂きたいところである。ちなみにRED氏は「油多め」で注文していたが、山岡家初心者の方は避けておいたほうが無難だろう。山岡家はデフォルトでの油の量がとても多い。初回は「普通」で様子を見ていただくほうが良い。油が苦手な方は、「油抜き」や「背脂に変更(店舗によって可・不可がある)」という裏技も覚えておくとよいだろう。ぜひ、あなただけのお好みの味を見つけ出してほしい。
おわりに
山岡家はハッキリと好みが分かれるラーメンだとは思う。中には「もう二度と食うか!」という感想を抱く人もいるかも知れない。だが、機会があったらまた山岡家の前を通りかかってみてほしい。するとどうだろう。あの強烈な匂い、嫌悪感
、二度と食うかという思い出、それらが何故か歯車のように噛み合い、回りだす。次の瞬間、あなたは券売機の前に居ることだろう。冷静な判断力、平常心。この豚骨スープはそんな物を全て破壊していく。もしも、未体験の方がいるのであれば、これを機に新しい扉を開いてみるのはいかがだろうか。