世界食料デー特別企画 サルベージ・パーティ 〜食の課題をたのしく考えるための場づくり〜
8月23日(水)、honshokuは食の学び舎フードスコーレのプログラムとして、「世界食料デー」の呼びかけ団体である認定NPO「ハンガー・フリー・ワールド(以下HFW)」と サルベージ・パーティ(以下サルパ)を開催しました。
食品ロス問題を中心に、サステナブル領域における食の在り方を社会に提案することや、食卓に小さな喜びを提供するためのコンテンツ開発を推進するhonshokuは、「世界食料デー」のパートナーとしてその想いを形にしていくサポートを行なっています。
今回のサルパは、2023年の「世界食料デー」月間プレイベント第1弾として企画。活動に共感いただいた「無印良品 港南台バーズ」のシェアキッチンを会場としてお借りしました。
家で食材を持て余しているワケを知る
まず、この会場となった無印良品 港南台バーズが、とてもすばらしかったのです。
僕らのよく知っている商品を販売するほか、店内のシェアキッチンでのイベントや、フードドライブの回収場所としての役割、地域の生産者の紹介などさまざまな取り組みを通して、地域の「コミュニティセンター」として機能していました。この店舗内を見て回るだけでも、「これからの地域での生き方」に想いを馳せることができ、暮らしの持続性を感じました。
イベントの開始15分前から参加されるみなさんが、持て余している食材を持って会場に集まってきました。魚の缶詰1品を持って来られる方もいれば、ピーマン、椎茸、オクラなどたくさんの野菜を持って来られた方もいました。
イベント開始時間になり、まずはわたしとHFW田中梨佳さんで、スライドを使ってサルパのこと、「世界食料デー」月間のことをご紹介しました。
その後は、持ってきてもらった食材のエピソードについて、みなさんに話していただきました。
野菜をたくさん持って来られた方は、直前まで長野にいて、この日横浜に来られたそうです。明日から家族で海外旅行に行く予定で、このままだとたくさんの野菜を使い切れないからサルパに持って来てくれました。
乾燥の糸こんにゃくを持って来られた方からの要望に高田さんは、「任せてください」とさすがの心強い返し。
普段家ではやらないような食材の組み合わせや、味付けや調理法を、サルパではいつも教えてくれる高田さん。それはそのまま、家で料理をたのしむヒントにもなりそうです。
この高田さんからのメッセージ。深いなと思いました。昔から食べもので遊んじゃダメと注意されてきた方も多いと思いますが、高田さんの言う「遊ぶ」は、「学ぶ」とか「考える」に近いニュアンスではないでしょうか。食材を目の前に、あまり深く考えずにいつもの料理をつくることも大切。一方で、いつもと違う調理方法にチャレンジしたり、冷蔵庫に余っている食材を組み合わせてみる。ときにはそんな遊びの時間もあると、料理がもっと楽しくなっていいかもしれないですね。
食は世代を超えた共通の話題
さて高田さんが料理をつくる約1時間の間で、ワークショップを行いました。「いま思う食の課題について」みんなで網羅的に捉えてみよう、というのがワークショップの目的です。
まずは5分間、「食の課題」について自分で思うことを付箋に書いていきます。たとえば「食品ロス」の問題について思考を広げている人は、そこから「賞味期限や消費期限」「供給過多」「規格外の販路」などのキーワードを挙げていました。
その後、同じグループになった人の話も聞きながら、付箋を見せ合って、似ている内容で仕分けをしていきました。
「人によって食べられるか捨てるかの捉え方が違う」とか、「食料自給率30%台はまずいと思うけど、具体的にどうまずいのか実はよくわからない」とか、「物価高騰のいま、消費者がより安いものを求めるようになっているのは問題だと思う」など、いろんな話が出ました。
最後にグループごとに出た意見を発表しながら、付箋を模造紙に貼っていきました。みんなで付箋それぞれを正のループ、負のループの因果関係でつなぎ、レバレッジポイントを探る時間になると、みんなから意見が出る出る!
じぶんが会場内を周りながらグループワークを覗かせてもらい思ったことなのですが、食のことって、グローバルで広くて大きな話題から、自分の半径5メートルほどの身近な話題まで、まるでGoogleマップのズームインとズームアウトを繰り返すように思考を切り替えられるのが、やっぱり面白いなと。
それと、集まった人たちで年齢も暮らし方もバラバラなのに、共通の話題にしやすいのも、食の良いところですよね。私はよく高校生と話す機会がありますが、食を話題にすると世代を超えて話が弾みますし、高校生から気付かされる視点がたくさんあります。
対話型のワークショップは正解がないからこそ、人の発言を肯定的に受け止められます。またその場に貢献するために自らも考えを発言していく。その思考の好循環が、たくさんの小さな閃きを生んでいきます。もしかしたら次の日には忘れているかもしれないけど、それはそれで良いのだと思います。ここで考えたことが、いつか役に立つ日が来るはずです。
料理をクリエイティブする
ワークショップ中にも料理を続けていてくれた高田さん。
この日は、全部で5品の料理ができました。時間の都合で、残念ながらすべての食材を使うことはできませんでしたが、使わなかった食材についても、高田さんは使い方のヒントを教えてくれました。
例えば、高田さんはこんな話をしてくれました。
ただこれらは料理を考えるときの発想(思いつき)であって、この発想すべてがうまくいく(美味しくなる)とは限らないとのこと。高田さんも料理をつくるときに味見は何回もすると話していました。
高田さんのアイデアに、みなさん驚きを隠せない様子。食材の意外な組み合わせや、味の固定観念を捨てる考え方には興味津々で、具体的なレシピを知りたい!という声をたくさんいただきました。これまでのサルパに参加された方からも、「レシピは公開されないんですか?」という質問を多くいただいてきました。
それに対して僕らは「レシピから卒業しよう」と言ってきました。
レシピは料理の基本を身につけるためにはとても大事だと思う一方で、「この材料がないとこの写真の通りのものがつくれない」というように、料理をするときに人を思考停止にしてしまうのもレシピだと。
レシピ通りにつくるだけじゃなくて、いまあるものでつくるとか、その材料がなくても別の食材で代用したり、なんなら写真の通りにできないかもしれないけど、レシピに書いてある全部の材料を揃えずにつくっちゃえ!でもいいと思うんです。料理の面白さってクリエイティブさにあると思います。
だから、サルパの中で生まれた料理のレシピを書き起こして発表することは、ご要望が多かったけれどやってきませんでした。
ただ最近思うのは、材料や手順を細かく書いたレシピではなく、「クロワッサンの味噌汁」のような料理アイデアを抽出してアーカイブしていくのは良いかな、とも思うようになりました。アイデアさえ知っていれば、いまあるもので料理することに役立ちそうですし、それが家で生まれるロスを減らすことにつながりそうです。もう少しプロの料理人のみなさんとも会話を増やして考えていきたいと思います。
サルパの想い
2013年にスタートしたサルパを、今年から再始動した話は以前noteにも書きました。
そこでも書きましたが、「食品ロス」や「フードロス」について、何かしたいけど何をして良いのかわからない。自分ひとりでモヤモヤ考えるだけじゃなく、誰かに話したい / 話を聞いてみたい。それを解決する場を社会のさまざまなシーンで創り出すことに、サルパを開く目的はあります。
「食材の使い方をプロに教えてもらう」や「余った食材をみんなで食べる」というのは、サルパではオマケのようなものです(もちろん、このオマケもたのしいですし大切にしています)。
それよりもサルパのたのしい雑談の中で、食にまつわる課題への見方を揺さぶって、当たり前と思っていた考えを違う角度から深堀りするような、新たな価値観を醸成してもらえたらと思っています。
サルパは今後も積極的に開いていきます。SNSで発信していきますので、チェックください。企業や自治体とのコラボもこれまで同様にやっていくことで輪を広げていきたいと思っていますので、ご興味ある企業・団体のみなさん、ぜひ気軽にご連絡ください。
そして honshokuでは、「世界食料デー」月間である10月までに、様々な関連イベントをサポートしていきます。今回とはスタイルを変えたサルパも企画していますので、ぜひ遊びにお越しください。お待ちしています!