『7袋のポテトチップス』(晶文社)などの著者で歴史地理学者の湯澤規子さんと、『分解の哲学』(青土社)などの著者で食と農の歴史学者の藤原辰史さんと「ロスが生まれる世界」をテーマに話しました。
フードロスをきっかけに、こんなにも話題は広げられるし、フードロスに抱く閉塞感を打ち破れるかもしれない。そんな期待が生まれていく当日の様子をお届けしたいと思います。
「フードロス」は重要な問題だけど、向き合うことに気持ちが疲れちゃっている人も多いのかなと。僕が思うのは、フードロスだけを話題にするのではなく、食を超えて話を広げて行く方が断然におもしろいということ。
これはずっと考えてきたことで、湯澤さんと藤原さんにぶつけて見解を聴いてみたい。そのことをおふたりにご相談すると、快く引き受けていただけました。「これは絶対におもしろい話になるぞ」ということで、いろんな人に聴いてもらうのが良いなと思って、フードスコーレの中でやることにしました。
フードスコーレの「FOODLOSS & WASTEの存在論」は、「そもそもフードロスってなんだっけ?」を探求するゼミ。今年1年かけて、その道のプロの話を聴いたり、地域や生産現場を訪ねることでヒントを重ねて、フードロスを再定義することに挑戦中。おふたりをゲストに呼ぶのはここしかない。
会場には、東京浅草の仲見世通りすぐ隣にある「梅と星」の2階をお借りしました。ここでは靴を脱いで畳敷きにあがるんですが、目線を揃えてリラックスできるからか、なごやかな雰囲気でスタート。
湯澤さん、藤原さんから提供された話題の柱は3つ。これをもとにみなさんと対話していきます。
ロスとは何か 〜規格と世界
「規格」があるから、そこから外れる「規格外(=ロス)」もある。藤原さんは次のように話す。
「規格」が生まれたのは、それがあることで良いことがあるから。西洋史を専門に研究する藤原さんは…
規格や、線引きもそうだけど、あらゆることを整理することで、効率よく産業は発展していく。だけどそこにロスは生まれる。これは必然。「ロスは生まれる」このことを前提に、話を進めた方が良さそう。
屑とは何か 〜価値と世界
「規格」があるから屑がある。じゃあ屑ってなんなのか。藤原さんの書かれた『分解の哲学』の中でも出てくる屑。並べてみると、ナントカ屑ってたくさんあるんです。
屑ってこんなにあるんですね。どこかに「屑ないかな」という視点を持って過ごすと面白そう。本の中では、屑についてさらにこう書いています。
この真意を藤原さんに聞いてみました。
循環とは何か 〜分解と世界
最後は循環について考えてみます。湯澤さんの「女工の研究」が循環の話につながる、と藤原さん。
物質循環について、ちょっと視線を外して考えてみると…
参加されたみなさんとの対話で出た意見を、一部紹介。
一旦まとめてみる
答えを出しづらいことにも、「いまはこう考えることにした」と整理することはやっておきたいので、ここまでの話を自分なりにまとめてみます。乱文なのはご容赦ください。
とりあえず、いま整理できるのはこんなところかな。
こうしてみると、フードロスの話は、フードに限らず社会全体の仕組みの話に、やっぱりつながっていますね。一時期の流行で「フードロス」や「食品ロス」という言葉が一人歩きして、「なんでもかんでも、とにかく食べ物を捨ててはならない」という苦しみを消費者の中に生むことになりました。その苦しみを無くすためにも、だれもが楽しく考えられる場を作っていきたいなと思います。
このnoteで、当日のダイナミックさをどこまで表現できたか、むずかしいところです。当日はもっと色んな意見がみなさんからも出ていましたし、文字にできないコミュニケーションがありました。それでも。こうした「知」が誰かのお役に立てればうれしいです。
さいごに。
今回、「梅と星」を運営するバンブーカットさんにたくさん協力いただきました。浅草というかつて分解の中心にあった場所で、ロスについて話せたことは、偶然か必然か。
会の途中、羽釜で炊いたごはんのおむすび+豚汁セットを出してもらって。これがもう、本当おいしかったです。みんなで「うまいうまい」言いながら、トークセッションを続けました笑 学びと遊びが混ざったような場に、食べ物があるといいですよね。和みます。みんなで共通の食体験をすることの大切さよ。
フードロスのこと、フードスコーレのこと、また進捗あれば書きますね。また読んでください。そして、ご興味ある方はぜひフードスコーレに遊びにきてくださーい。