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過去20年間のアメリカ人の世論の変化:ピュー・リサーチ・センターの調査

アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」のサイトに、同機関が2004年に設立されてから過去20年間でアメリカ人の世論がどう変化したかをまとめた記事が掲載されています。今回の投稿では、以下にその概要を紹介します。

2004年の設立当時、調査方法は固定電話による回答方式だったが、それから20年後の現在ではネットでの調査が主流になっている。また、世論そのものも大きく変化している。

インターネット、スマートフォン、SNSの台頭


2004年の成人のネット利用率は63%で、携帯電話の利用率は65%だったが、現在ではネット利用率は95%に、スマートフォン利用率は90%に達している。
 
2004年時点ではSNSはまだ立ち上がったばかりで、マーク・ザッカーバーグが「The Facebook」(当時の名称)を立ち上げたのがこの年だった。そこからSNSの使用が大きく広がっていき、アメリカ人にとって重要な情報源となっている。
 
一方で、2004年の日刊新聞の合計発行部数は5500万部だったが、2022年には2100万部以下まで落ち込んだ。新聞の広告費と従業員数も減少している。このような中で、特に共和党員の間で報道機関が報じる情報に対する信用度が低下している。ただ、全体として見た場合には、SNSよりも報道機関の情報を信頼している人の方が今でも多いのが現状だ。

国家機関への信頼度の低下

2004年当時、連邦政府への信頼度は36%だったが、2024年4月時点で、信頼度はわずか22%にとどまっている。議会と最高裁判所に対する支持率も低下しており、2006年の議会支持率が53%だったのに対して、2023年には26%にまで落ちている。最高裁判所の支持率も40年間でほぼ最低値にまで低下している。
 
新型コロナのパンデミックの発生期間およびパンデミック後についても、専門家に対する不信感が増している。公的保健機関から出されるコロナ情報に不満を抱いたアメリカ人は多く、初期のコロナ発生に対する準備を欠いていたと考えているアメリカ人が約50%に達している。

移民の多様化とアジア系、ヒスパニック系、黒人の人口増加

移民はアメリカの人口の13.8%に達しており、世界のほぼすべての国の出身者で占められている。民族的・人種的な多様性も増しており、2004年から2022年の間のアメリカの人口増加率は14%だ。その中でも、アジア系、ヒスパニック系、黒人の人口増加率(それぞれ74%、55%、22%)が特に顕著であるのに対して、白人の人口は、2004年の68%から2022年の59%と、減少率は低く、大きな変化は見られない。

民主・共和両党への不満が広がる

2000年代前半は、民主党と共和党のどちらも支持しないというアメリカ人はほとんどいなかったが、この20年間で不支持率が広がり、2023年には28%に達している。これは、アメリカ人の政治全体に対する不満を表わす一つの側面にすぎず、政治制度への信頼が低下している中で、政治制度が有効に機能していると考えるアメリカ人は現在ではほとんどいないのが現実だ。政治家が国民の意見に耳を傾けておらず、国民の議会の意思決定に対する影響力が小さすぎると考えている人が過半数を占めている。
 
そのため、多くのアメリカ人が政治に対して怒りや疲弊を感じており、政治に希望や興奮を覚える動きはほとんど見られない。現在の政治を一言で言い表すとしたら、「分断」、「腐敗」、「複雑」といった表現が挙げられる。

中国に対する脅威認識および敵対視


アメリカ人の中国観はこの20年間で大幅に悪化している。2005年に中国に対して否定的な感情を抱いていると答えた人は35%だったが、現在では80%に達しており、アメリカの敵だと答える人が40%を占めている。2023年の調査では、中国は米国にとって最大の脅威だという回答が50%に達しており、この数字は二位のロシアの約3倍に相当する。

気候変動、銃規制などに対する世論の二極化が進んでいる

2009年には、気候変動が米国にとって大きな脅威だと考える人の率を比べた場合、民主党が61%に対して共和党は25%と、その差が36ポイントだったが、2022年にはこの党派間の差がさらに広がり、民主党78%、共和党23%と、55ポイント差にまで達している。世界的には、多くの先進国で民主党と同じ考え方をする傾向が共通して見られ、2022年の19ヶ国を対象とした調査では、気候変動を大きな脅威とする回答が中央値で75%だった。
 
銃規制についても党派間の差が広がっている。2003年の調査では、銃規制よりも銃所有権を守る方が重要だという考え方について、共和党56%、民主党29%と、27ポイント差だったが、2022年には、この差が63ポイントにまで大幅に拡大している(共和党81%、民主党18%)。


2025年の第二次トランプ政権の発足を前にしてこのアメリカ人の世論の変化を見ると、今後4年間のアメリカの動向を読む上での判断材料になると思います。特に米中対立の中でのアメリカ人の中国観の変化が極めて顕著で、中国に対して否定的な感情を抱いている人が現在では80%、アメリカの敵だと答えた人が40%、中国は米国にとって最大の脅威だと答えた人が50%。

画像:pixabay

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