シリアの首都ダマスカスが反体制派の「シャーム解放機構(HTS)」の支配下に入り、アサドはロシアに逃亡しましたが、イギリスのニュースサイト「The i Paper」 は12月13日付掲載記事で、HSBCの口座にアサドが保有する1億6300万ポンドの資産を没収して、シリアの再建資金に充てるように求める声が上がっている、と報じています。
以下にその概要をまとめました。
シリアのバシャール・アル・アサド前大統領はロンドンのHSBC(香港上海銀行)の口座に5500万ポンドを超える個人資産を持っている。この口座はアサド本人、家族、および残忍な前アサド政権の同盟国がイギリスの口座に隠し持っていた1億6300万ポンドの一部だ。 この口座情報が明らかにされたことを受けて、政界の大物や人権団体からイギリス政府に対して、数千万ポンドに及ぶアサドの資産を差し押さえ、それをアサドの犠牲となったシリア国民のために人道的に使うように要求する声が上がっている。 2011年に当時のアサド政権が反政府抗議活動を暴力で鎮圧した時、アサドとその仲間は全ヨーロッパ規模の制裁を科され、資産を凍結された。2011年の裁判所の記録文書によると、アサドはロンドンのHSBC口座に4000万ポンドの資産を保有しているとされている。 イギリスの対アサド政権制裁によってこの資産は凍結され、アサド自身がこの預金に手を出すことができないにもかかわらず、利息が発生し続けており、その価値は現在5500万ポンドを超えている。1億6300万ポンドの資産凍結に加えて、政府はさらに対アサド制裁の違反企業に対する罰則金として15万ポンドを科してもいる。 アサドの叔父であるリファート・アル・アサドの資産も凍結されており、その額は少なく見積もっても2600万ポンドに上る。リファート・アル・アサドは1982年のハマへの無差別砲撃を命令したため、「ハマの虐殺者」の名で知られている。当時の大統領だったアサドの父ハフェズ・アル・アサド(リファートの弟)に対する反乱の鎮圧を目的としたこの攻撃によって、数千万人が死亡した。 アサドの預金は、5万人を虐殺した統治時代に蓄財した莫大な富のごく一部にすぎない。アサドは125億ポンドの資産を保有していると見られており、その中には、金200トン、世界中に保有している家、中東をはじめとして世界中に展開された企業ネットワークが含まれている。 しかし、政府に対して措置を講じるように求める圧力が強まっている中でも、シリアの犠牲者のためにアサドの凍結資産を割り当てる法的な枠組みがないのが現状だ。英国金融制裁推進局(Ofsi)は財務省の代理としてイギリスの金融制裁の推進と執行を担当する機関で、英国政府による制裁が発動されると、資金や経済的なリソースは、それを保有または管理する人や組織によって直ちに凍結される。 ところが、資産が凍結されたからといって凍結資金や経済的なリソースの所有権には変化はなく、財務省やOfsiに没収または移動されることもない。
ロシアの凍結資産をウクライナの復興資金に充てるという議論を思い出しますが、アサドの凍結資産をシリア再建に充てるという議論の今後の行方も注目点です。 画像:pixabay