2024夏一首評13

冷水のうすめ濃いめの選択ができないようにできないみたい
/山本まとも「わかる」

「nakanzukus」vol.02

 このひとが「冷水のうすめ濃いめの選択ができない」と思ってるの、じっくり面白い。「冷水にうすめ濃いめがない」じゃないんですよね。
 たしかに、あるかないかで言えばありますよね、冷水に「濃さ」って。濃い冷水、は、ある。その感覚を前提にして比喩にしてきているところが、この歌は面白い。

 なにが「できない」んでしょうね。なんか不思議な感じがするのは、比喩の内容に対して、そうは言っても「選択ができない」ではなく「そもそも、ない(とされている)」だろうという、いわば常識というものの膜が一枚挟まるからだと思う。それを踏まえて、の比喩の対象の想像はもちろん可能なうえで、そもそもこのひとの比喩が的確なのかっていう疑問が残る。

「みたい」っていう語尾が、そこに効いてくる、気がします。可愛さ、親しみ、的な感触がある。語りかけてきている、ようにも思えるし、独り言を聞いているようにも思える。
 ひと……ひと、が居るって思える。比喩から、言ってることから。そういう方向性の成功、があると思った。「できない」という話がそこに繋がるのが、なんだろう、痛快、でした。

閉まりはじめたとこだったから閉まってたときよりさらに時間がかかった

防犯が、とかとは別にこういうライトがいきなりつくのはうれしいですね
/山本まとも「わかる」

「nakanzukus」vol.02


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