設備(ネスト)
産卵のための巣箱をネストと呼びます。
物陰などの狭い所・暗い所で産卵しようとする性質を利用して、卵を効率的に集めることが出来る設備です。
方式は2つ
産みため式と卵受け集卵式があります。
産みため式は、ただの「箱」でコンパネなどを利用した自作のものが多いです。作業性が悪く、卵が汚れやすい欠点があります。
卵受け集卵式は、金属製のものが市販されています。
卵が転がり出るので汚れにくく、廊下側から集卵作業ができるので、衛生面と作業性で優れます。
産卵室のトレイを外して、清掃や洗浄ができる点も優れています。
まさとうが使用するネストは、産卵スペースが10部屋に仕切られています。一群あたり4台のネストを設置しておりますので、合わせて40部屋。
どの部屋でいつ産卵するかは、鶏が選択します。
構造
ネストは亜鉛引き鉄板を、ネジとナットで組み立てる構造です。大まかになりますが、組立て工程を再現してみます。
飼育室側から見たところです。
ネストの上で産卵しないように傾斜をつけてあります。
産卵室であるネストの本体に仕切り板を付けて出入口とし、さらに止まり木を取り付ける構造です。
止まり木は、上段が一本で下段が二本。
産卵室への階段であり、夜の寝床でもあります。
これが産卵室の床になるトレーです。
亜鉛引き鉄板と被覆金網を組み合わせてあり、足に付いた鶏糞を隙間に落とす仕組みです。
こちらが ネストの内側。仕切り板の内側にロッドが通してあり、ここにトレイを引っ掛けて産卵室の床にします。
トレーをはめてゆく状況を再現してみました。
集卵作業をする廊下側です。
産卵室にあたるネスト本体と、卵出口を開けた仕切り板です。
仕切り板の上から卵受けを取り付けて、そこにロッドを通して上蓋(ウワブタ)を取り付けます。
このロッドは、上蓋の開け閉めによってズレて抜けるので、アルミテープの抜け留めをしています。
最後にこの鉄板を取り付けたら完成です。
名前はわかりませんが、卵受けと産卵室の間に距離をとる役割があります。鶏が卵を割って食べようとする習慣を、食卵癖(ショクランヘキ)と言っています。このクセが強く出た鶏は、産卵室から卵受けに首を伸ばして卵を割ろうとするので、これを防ぐための部品です。
トレーの掃除
トレーの掃除の様子を再現してみました。
しばらく使用して鶏糞がたまったら取り外します。
鉄板と金網を分解して、鉄板の鶏糞は飼育室に戻します。
トレー周りの鶏糞は、廊下に落とします。
トレーを取り外す際に、卵受けに散った鶏糞を刷毛で掃除します。卵受けには掃き出し用の長穴があります。
卵受けの清掃は一日の終わりの作業として、トレーの掃除に関わらず毎日行います。
この作業によって、卵の取り残しがないことを確認できます。
再度トレーを組み付けて、廊下を掃除して終了です。白っぽく見えるのは消毒用の消石灰です。まさとうでは、廊下の掃除の後に消石灰をまいているので、掃き集めるとこうなります。
放し飼いはもちろん、平飼い農家でもネストを利用しない農家はいらっしゃいます。卵がすべて地産みになるわけですが、全ての卵を集められるのかと伺うと「鶏は決まった所、同じ所に産むから大丈夫」とおっしゃいます。
しかし、人間はミスをするものではないでしょうか。
どうしても見落としはあると思うのでネストは必要だと考えます。
毎度、全ての卵を確実に集められる。
「目の届く管理」こそが、安全を担保するのではないでしょうか。
ネストがあっても地面に産み付けられた卵を「巣外卵(すがいらん)」と呼びます。
詳しくは別項に書きますが、巣外卵を減らす取り組みは、鶏を理解するうえで大きな示唆を含んでいます。
育種における就巣性(しゅうそうせい)の除去、成長と性成熟によるホルモンバランスの変化、鶏舎構造と光環境。すり込み効果。
いろいろな要素を考慮しつつ対応することが、鶏そのものや品種特性との対話になります。
巣外卵を見るたびいつも頭をよぎるのは、以前に関西地域で起きた黒玉の事例です。黒玉というのは腐敗して中身が黒変した卵で、どうやら土の中に埋まっていた卵を鶏が掘り出してしまい、間違って出荷してしまったのだろうという話でした。殻の中の状態は分からないので、こういった事故を起こさないようにといつも気をつけています。
まさとうのネストは国内企業のものですが、現在は制作されていません。自動搬送機付きのものは製造されているようですが、手作業用の「普及型」と呼ばれるものは製造中止になり、金型も廃棄されたそうです。
普及型の単価は、開業当初で4万円くらいでした。しかし生産量の関係で単価が上がり続け、製造中止時で8万円程度になりました。
普及型を購入しようとすれば、海外企業の製品で同程度の価格になります。まさとうも2号棟を増棟した際は、価格が高くて買えず、古い鶏舎のネストを流用しました。